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社長が、
「とりあえず先方に挨拶して、運べる状況、確認してくるわ!」と言えば、
「わかりやした!」と、また元気な声がして、男は車を降り、もう日が暮れたと分かる、立体駐車場を、そのオフィスビルの出入り口まで走り出した。
車からオフィスビルの出入りまで、かなりの距離があることを考えながら、小走りで、そこに向かう男は、ふと、会社を立ち上げた時の苦労を思い出していた。
うまくいかず、時には荒ぶる自分に二人がついてきてくれ、紆余曲折を経て今、何とか様になっている自分の会社にあった今までのことがフラッシュバックしていた。
ついてきてくれた…。
今日も、二人とも十二分に、よくやってくれている。
男は、ビルディングに連結する出入り口前で引き返して、またイソイソと車に戻った。