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俺はダチに本を貸していて、それを仕事帰りに返しに来るという。
ダチとはダチで、そいつとは、何かを競い合うという概念が全くなく、つまるところライバル的な関係になることは皆無なのだ。
彼は仕事帰りに予定通り、俺が貸した本を片手にやってきて、まぁ、上がれよ、と家に入れた。
たわいもないことを話していて、ふいに俺から、こんなことが出た。
「今、俺が勤めている会社は、けっこう大きい会社で自分の持ち場のフロアとかは基本、自分で掃除するんだよ。一昨日だったかな…俺が掃除当番で、掃除した後、出たゴミを会社の全てのゴミを持ち寄るゴミ捨て場に持っていくと、そこに打ち上げられた大量のゴミの中に、誰かの給与明細書が、ぐちゃぐちゃになって、そこにあってさ、名前部分が俺には見えて、その人、けっこう知ってる人だったんだよ。
で、俺は、その明細書の上に、自分の抱えていたゴミをガバッと開けて、それを見えないようにして、去って行ったんだけど、まぁ、お前も、そうそうのを破棄するときは重々、気をつけろよ、って話さ」