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僕はじゃんけんで勝てない  作者: みのり ナッシング
1/4

part.1

 

 僕は生まれてこの方、じゃんけんで勝ったことがない。

 鬼ごっこのとき、僕はじゃんけんで負けていつも鬼になった。クラス委員を決めるじゃんけんでも負けて、第一希望の委員についたことはない。とにかくじゃんけんに弱い。

 いや、どうも弱いとかいうレベルではなく、必ず負ける。あいこにもめったにならない。それだって、3人以上でじゃんけんをした時だけで、結局は僕が負けた。二人だけなら必ず一手目で負けた。あいこにすらならない。おかげで、じゃんけんで負けて損をすることが多々あった。もはやある種の「現象」であると、僕は思った。

 だから僕は、いかにじゃんけんを避けるか、じゃんけんで負けてもいかに立ち回るかに腐心した。鬼ごっこで最初の鬼をやるくらいなら仕方ない。鍛えて、からかわれないために足を速くした。

 クラス委員は、誰も選ばないような無難な役職を真っ先に選び、委員長などの大役、面倒くさそうな係は回避した。なにかのレクリエーションで景品をじゃんけんで争うことになれば、たいてい譲った。負けるのは必然だったし。おかげでいい奴とか、譲った相手の女の子に気があるんじゃないかとか言われ、たいそうむずがゆい思いをしたものだ。

 この世の中、じゃんけんであふれかえっている。特に学校の中で行事があると、たいていじゃんけんをする羽目になる。昔こそ、じゃんけんに必ず負けるというこの「現象」を恨んだりもしたものだが、しだいに僕はしたたかさを身に着けた。じゃんけんには勝てないが、それ以外で負けなければよい。

 なんて言っても、かっこよくはないけど、高校に入った僕は比較的穏やかに、最初の一年を終えることができたのだった。もしも「現象」を起こしている誰かさんがいるのだとすれば(悪い神様に違いない)、ざまあみろと言いたい。


 二年生になってから最初のロングホームルームが訪れた。

 一日の始まりや終わりに連絡事項などを伝える、ホームルームとは違い、週に一時間だけクラスの時間が設けられている。それがロングホームルーム。何をするかは各クラスにゆだねられている。クラス会議でもいいし、レクリエーションをしたって良い。つまらないが自習でも構わんだろうし、文化祭や体育祭など行事ごとの準備に充てても良い、そんな時間である。

 まあ、初めてのロングホームルームはたいていクラス委員でも決めるのが相場と決まっている。そして、ここが大事だが、その際にはじゃんけんをしなければならないのは明白だった。

 だから僕は、今日は朝から気合を入れてきた。目当ての委員に何としてでもなるとかいうのではない。じゃんけんをしないような策略を巡らせていたのだ。どうせ負けるのだ。去年じゃんけんに負けて押しつけられた庶務係のような面倒な係には、もう就きたくない。

「クラス委員長をすることになった石田です。一年間、よろしく」

 クラス委員長は、あまり人気のない役ではあるが、クラスに一人でもリーダーシップのあるやつがいれば、すぐに決まる。今年もそれは石田だった。というのは、去年も石田はクラス委員長を務めたからだった。ちなみに僕と同じクラスだった。

 学年一の秀才でスポーツができて顔もいい。背も高いし、女子からの人気も高い。僕みたいにちびで根暗で勉強もいまいちのぱっとしないやつの天敵である。モテるという、ただその一点だけで僕の敵だ! ……まあ、やつは僕のことを敵視するどころか、まだ幼馴染みとでも思っているのかもしれないが。

 今でこそ僕は背が低い方だが、昔は石田よりも背が少しだけ高かったんだぜ?

 なんてことを考えても、仕方が無い。






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