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4

次に一行が財布を開いたのは、剣術指南所だった。

その前に立ち寄った武具屋の店主曰く。


「お前さんら、スキル習得前にウチに来たな?」

「あ、はい! あれ、なんで分かったんですか?」


武具やアイテムとは異なり、習得スキルの有無をぱっと見で見分けるのは至難の業である。あっさり言い当てられたことにコウが問いかけると、


「素人の考えなんざ手に取るように分かるわ」


店主は鍛え上げられた両の腕を組みながら得意げに笑ってみせた。


「スキルって、教えてもらっても使いこなすのに時間かかりそうだなと思ったんですけど」

「だから装備すりゃあとりあえず使える武器と防具を、ってな。逆だ、逆」

「……スキルはすぐに使えるが、武器や防具はすぐには使いこなせない?」

「即使える・実用的なもんだから金払って買うんだろう。買っても使用するまで練習が必要なら、ハナっから皆自力で覚えるってんだ」

「確かに」


頷くマースとは対照的に怪訝そうな空気を醸し出したA子も、


「今の、あんたに不利益な会話じゃなかった?」

「素人が使いこなせないモン売って、使えん店だと吹聴されるよりマシだ。良い店主だろう?」

「……広めるかは、そこの二人次第かな」

「期待はせんさ」


その返答に納得した様子で、武具屋を後にしたのだった。


というわけで、指南所に訪れた一行である。

唯一剣を扱うコウはスキル習得の為、マースはその選定を手伝うために併設された道場へ向かった。移動するのが面倒くさくなってきたA子は、入り口のそばに鎮座する椅子に腰掛けて、なんとなく自身の蒼く透き通るような髪を、純白のオペラグローブに覆われた指先でちろちろと弄っている。


「……火炎剣、焔斬り。フレアとは違うの?」

「お嬢さん、剣術を見るのは初めてかい?」

「まあ」


受付の上に大きく掲示されたスキル一覧表を眺めていたA子の小さな疑問の声に、優男といった風貌の青年が反応する。


「魔法は本人の魔力次第、といった面が強いのだけど。剣術は、こういった火属性を持つスキルでも魔力量はさほど必要ないんだ」

「魔力ない人向け?」

「あとは、魔法を使うのが苦手な人も。剣術に於いては、得物に纏わせることが多いからね」


受付から出てきた青年――名札にスートと名が刻まれている――は、A子から数は離れたところで腰に吊るしていた竹刀を掲げる。

ふ、と息をついた瞬間。


「こんな感じで」

「……魔法で火を纏わせた状態にして、突くなり斬るなりする?」

「そうそう。魔力があればまあ、そのままの意味で強力な火力になるけれど。火属性の剣術を極めるでもなければ、これが出来れば十分だよ。試してみる?」


青年の何気ないセールストークにA子が首を振る前に、


「お待たせ……」

「遅い」

「座って待っていただけだろう」


やや疲弊した様子のコウを筆頭に、道場から面々が戻ってくる。


「いやあ、最近の若い者にしては教え甲斐があるな!」


共に向かった師範代格の男だけがとても楽しげなのであった。


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