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「ハルラックの松風街の住人からの依頼だ。最近畑荒らしが出るとのことでな。犯人は近くの山に住み着くコボルトの群れだと判明している」
「山中でコボルトの群れの退治か。報酬は?」
「200R」
「……りーん」
「……まさか単位も知らないとか言わないだろうな」
提示された報酬に少しばかり首を傾げるA子に、マースが呆れた様子で突っ込む。
「……私の国のお金とは違うみたいだけど」
「? ここいらで通貨単位が違う国なんかあったかな」
「実際違うし。私も知らなかったし、あんた達も知らないだけじゃない」
「ふむ、まあそんなものか」
内心あまり納得はいかないし少女の言う通貨に興味は惹かれるものの、ここで長引かせる話題でもない。そう判断したマスターは適当な言葉を返すだけとした。
「で、受けるのか?」
「?」
「"A子御一行"、というくらいだ。貴様が決めろ、リーダー」
「……」
「俺も、A子の判断で良いと思うよ」
「……まあ、良いんじゃない? 相場とか分からないし、どうでも。他に受けられる依頼ないんでしょ」
A子の雑にも聞こえる返答にため息をつきかけるも、後に続いた言葉に飲み込んだ。
たった今結成されたばかりの新米冒険者チームだ。依頼の選り好みが出来る立場ではない。
しかし仮にもリーダーが「相場が分からない」などと堂々と言うものではない。
「……ちなみにそのりんごジュースが2Rだ」
「へえ。飲み放題ね」
「冒険者に必需品とされる傷薬が200R」
「そんな目で見ないでくれ。ハルラック内、新人可で危険性の高くない依頼なんて、そうそうないんだ」
じっとりとしたA子の視線に、マスターが両手を上げてみせた。