6話 サラ 手のひらクルっと
うっわ……キモっ!
こんな手紙貰ったら寒気しかしないわ!
便箋目いっぱいに『愛してる』が書いてあるなんて異常よ!
それが十枚も!!
きもーいっ! 超キモーイ!
さっきまでその本人と話しちゃってたよ。
うっわぁ! いやだいやだ。 ちょっとやだぁ!
嫁って言ってたけど違うじゃない!
え? 一回しか会ったことないの?
怖いからお父さんに頼んで厳重に護衛してもらってたの?
……ごめんね。
街道に居た護衛の人……のしちゃったよ私。
あああ……悪い事しちゃった。
護衛の人達も気が気じゃないだろうなぁ……
本当にごめんね!
あ、うん! それは大丈夫、安心して!
トスカの所なんて連れてかないから!
そうそう。ホっとしてくれていいよ。
本当にごめんね?
そっか。
あなたは貴族のスーカさんが好きなのね。
そうだ!
お詫びに私が貴方の護衛に就くよ。
え?
私戦えるよー!
あ。ギルドカード見せたらわかるか。
ほら。私『金』だよ~。
おおお。
すっごい驚いてる!
だよねーそうだよねー。うふふふ。
この特別感はちょっと好きなのよね~♪
ううん。罪滅ぼしだから遠慮しないで。
お金もお礼もいらない。
……ただお話はちょっと聞きたいカモ。
あ、そう。ニアさんね。どうぞ宜しく!
私サラ!
……でもその前に……アレよね。
近くにいるトスカって人を何とかしなきゃだよね……
どうしようか?
…‥え?
牢が整備されている家ってどうなの?
貴方ん家ちょっと怖いんですけど。
いや『お父様が心配性』って……まぁ、いいけど。
まぁ貴族さんのトコで無事に結婚できるまで幽閉するのか~。
……流石に……拷問とかヒドイことはしないよね?
ん。
ならよし。
じゃあちょっとトスカ達捕まえてくるね。
そうだそうだ。
ロープ頂戴。
あと捕まえてから連れてきやすいように、家の護衛さん達に私の事を紹介してね。
そしたら捕まえてから連れてきやすいし。
***
はいー。ごめんなさいー。
護衛の隊長さん。
私はあなた達の警備を無意味かのごとく侵入したり、街道に居た人達が頼りにならないかの如く気絶させたりしちゃいました。
……
いや本当だって。
ほらカード見て。
私『金』だよ?
な~んで信用しないかな……
まぁ? そんな事には慣れっこですけどね。
わかりましたわかりました。
もう『偽物』って言ってればいいよ。
戦ってみればわかるでしょ。
いいよ。もう。
嘘つきじゃないもん。
ほら。誰でもいいから早くしなさい!
短刀? 使わなくても全然平気よ。
悔しいから心が折れるまでお兄ちゃん直伝ヒザカックンしてやるんだから。
***
……まさか20回もするハメになるとは思わなかったわ。
結局手刀うっちゃった。
でも信用してくれたしいいか。
さて、じゃトスカ捕まえてきまーす。
……
お~いただいま~!
かーらーの。
全員捕縛~!
なによ!
なにするんだじゃないわよっ!
アンタただのストーカーじゃないの!
嫁とか嘘ついて最低っ!
好きって言ってもアンタの気持ちだけでしょ!
ただの押し付けよ!
もっと相手がどう思っているのかとか考えなさいよ!
自分の気持ちも大事だけど、相手の気持ちがあってこそでしょ!
何やってんのよ。
はぁ。
さて、連れて行きますか…。
え?
『ニアさんが貴族さんときっちり結婚するまで幽閉する』ってさ。
ご飯とかはちゃんと出してくれるっていうし、いいじゃない。
騒がないの。
ちょっと自分を見つめ直してなさいよ。
一応乱暴な事とかしないようには言っとくし十分に反省なさい!
さて……引きずるのもかわいそうだし……隊長さんを呼んでくるかな。