12話 サラ 領主の娘と話す
ん~~? ん?
ん~~~~??
なんだかなぁ?
なんなんだろう?
すっごい変な感じがする。
話すと普通に返してくれるのに、心ここにあらずみたいな。
ん~~~?
でも、なんとなく儚げな雰囲気……それが大人っぽく見えて羨ましいなぁ。
……
あ。それどころじゃなかった。
あのう。私勝手に入っちゃったんですけど許してもらえるんでしょうか?
ん~~?
ぜんっぜん気にしてない感じなんだけど?
いいの?
それでいいの? そんなんでいいの?
あ……いいのね。
……
私が言うのもなんだけど、こんな立派なお屋敷で侵入者を気にしないって問題じゃない?
え? 昔は結構勝手に入ってくる人が居たの?
その名残?
へ~~。
…………寛大だわ。
寛大ついでに、その、あの、えっと、ひ、秘密特訓してたスーカさんの事を教えてくれたり………しませんよね。ごめんなさい。
あ。いいの?
……
なんだろう。
この人見た感じ私と一つ二つくらいしか違って無さそうに見えるのに、すごく大らかな感じがするなぁ。
……はっ!?
これがいい女ってヤツなのかしら!
むむむ。
これはこの人のお話を聞かないと!
あ、なんか楽しそう。
へ~。 最近は侵入してくる人が居なくて退屈してたんだ。
うん! じゃあ色々お話ししよ!
え?
お部屋あるの?
うん。いこいこ。
* * *
めっ…………ちゃくちゃ立派なお部屋なんですけどーーーーー!!!
なにこの部屋!?
え? なにこのテーブルの装飾!?
うわぁ、でっかい姿見まである!
…………うんうん。私やっぱり可愛いじゃない。うん。
あ。ごめんね。
ちょっとテンションあがっちゃった。
改めまして私サラ!
突然お邪魔しちゃったけど、よろしくね。
へー。パミラさんね。覚えた!
じゃあ私色々聞いちゃうけどいいかしら?
えっとね。
実はスーカさんの婚約者が私の知り合いなんだけど、その婚約者がスーカさんにあんまり会った事がないって言うから、どんな人か調べようと思って覗いちゃったの。
勝手に入ってごめんね。
でね、スーカさんの事教えてくれると嬉しいな。
……あ、あ、あの、秘密特訓とかも含めて。
………
…………ふんふん。
へ~。スーカさんって、もうこのお屋敷勤めて長いんだね。
しかも3番手の強さの人って立派だわ。
………ふんふん。
他者に優しく自分に厳しい人か。
なんだか人柄は申し分なさそうよね。
あ。やっぱり太鼓判押すレベルなんだ。
…………
でもその顔はアレよね?
何かあるよね?
………きっとあの……秘密特訓よね。
……ね、ねぇそもそもなんだけど、あれって一体なんなの?
…………
……いや、あの、話したくないならいいんだけど。
あ、いいの?
ありがと。
……ふんふん。
え?
パミラさんに無礼を働いた侵入者がいて、みんな返り討ちにされたの!?
……え゛っ!?
……その時の侵入者が……負けた人のお尻を!?
えええ!?
なにソレ。まるっきり異常者じゃない! 変態じゃないっ!
うわぁヤだなぁ。
世の中には危ない人もいるのね!
気を付けなきゃ。
……それ以来の特訓敗者の習慣になった?
………
勝者が敗者に木刀を挿すのが?
………………
それおかしくない?
…………
……いや、どこが? って言う顔されましてもですね。いやいやいや。
全体的にオカシイよね?
………
……あれ? 私がオカシイの?
いやいやいや、違う違う。きっとオカシイよ!?
あ。
スーカさんの何かあるのもその特訓絡み?
教えてよ。
…………あ。はい。
わざと負ける?
はい。
え~~っと。
………
つまり木刀で挿されたい人なのね。
…………
うう~~~~~~~~~~~~ん!!
これニアさんにどう説明しよう!
あなたの婚約者は大変立派な人ですが、木刀を挿されるのが好きです。
でも立派な人です。
………
う~~~~~ん
うん!
わかんない!
これはこのまま伝えよう。
もうニアさんに任せる。
うん。それしかないわ。
あ。
……今気が付いたんだけど、その侵入者にみんな返り討ちにされたって事は……その時パミラさんは大丈夫だったの?
……あ。
ごめんなさい。
こんなこと聞いていい事じゃないよね。
ごめんなさい!
…………ん?
な、なんか……パミラさん興奮してない?
気のせい?
え?
あ。あの。
そんな情熱たっぷりに話してくれなくていいですから!
ちょ、肩をがっしり掴まないで! 聞きます聞きます!
聞きますからっ!
え!? あ、え!? 鞭!?
ちょっと待って、ハードル高い話はちょっと。
え!? 縛られて、身動き取れないのに鞭打ち?
ひど……ってなんでうっとりした顔なの!?
えええ??
なんかよくわからないよ!?
その時に初恋の人が颯爽と現れたの!?
あ、よかった。なんか素敵な話になりそう。
………………
じゃなかったよっ!!!
何してんの初恋の人!!
って、パミラさんもなんで紅潮させてんのよ!
身動きできない状態で、好き勝手に破瓜とかやめてっ!
ちょっと聞きたくないってば………なんでそんなに嬉しそうなのよ。
あ。
パミラさん落ち込んじゃった。
そりゃそうよね。
……そんな経験したらつらいよね。
頑張って話してくれたんだよね。
……ありがと。
……え?
ちがう?
その人達がそれ以来まったく来ないから?
あ……さいですか。
…………
……悲しそうな顔をするんですね。パミラさんは。
そっか。まだ好きなんですね?
その初恋の人。
あ、また遠いところを見てるような顔。
……なんだか色んな人間模様があるのね。
……
あの~。
私これでも金ランクの冒険者だから、探してこようか? その人。
え?
今王都に居るの?
なんで知ってるの?
えっ!?
その初恋の人って元勇者なの!?
…………ん?
ん??
元勇者?
んん???
んんん???
…………
いやいやいやいや
ん??
いやいやいやいやいやいや。
…………
えっと、その元勇者って……
いやいや
…………
だめだ。やめよう。
考えるのやめよう。
と言うか。
むしろパミラさんには直接確認してもらおう。
うん。きっと違うはず。うん。
パミラさん!
明日スーカさんの婚約者連れてくるからその後、私と一緒に王都いこっ!
その初恋の人に会いに行くよっ!
おおおおお! なんという乙女オーラ!
………だけじゃないよね。
なんか紅潮して鼻息荒くなるのは違うよね。
まぁいいわ。
とにかく、そんな感じでいいよね!?
ダメって言っても誘拐するからねっ!
だから段取りしておいてね!
おお……力強い頷き。
じゃっ! 私スーカさんの婚約者の所に行って報告してきます!
…………
どうか思い過ごしでありますように。