１０話 サラ 領主の館に入れない【挿絵あり】
うっわ～……
なんか城壁みたいにばっちり覆われてるのね。
……ここの領主さんって超お金持ちなのかな？
とりあえず正面から行ってみよーっと
……広い。
……遠い。
……正門が遠いんですけど？
ほんとはここお城なんじゃないの？
やっと正門と衛兵さん見えたよ。
って、衛兵さん真面目そうな人だなぁ。
とりあえずお話してみよーっと。
こっんにっちは♪
あらま。素敵な笑顔でご対応。
女の人に人気ありそうねこの人。モテそう。
え？ ありがと。でも道を聞きたいんじゃないよ。
えっとね。
突然ですけどスーカさんって人に会いたいんですが、いらっしゃいます？
………
？
なぜ表情曇るの？
あ！？
そうよね。自己紹介もしない人間に合わせるワケないよね。
ごめんなさい。
私 サラ！
これでもギルドカードのランク『金』の実力者です！
どやぁ
……はぁ。
いいです。別に。その反応で慣れてます。はい。
でね。
今、私スーカさんの婚約者のおつかいで、わざわざ伝言に来たの。
内容的にも直接伝えたいから会わせてほしいの。
………
？
なぜ表情は曇ったまま？
しかも拒もうとするような雰囲気なのかな？
……『猛特訓中で顔を出せない』？
じゃあ私がそこに行けばいいんじゃない？
………あ。ダメ？
なんで？
え？ ……秘密の特訓？
なにそれ楽しそう！
見たい見たいっ！
って、すんごい拒否だけどなんで！？
いいじゃない！ 秘密の猛特訓とかどんなことしてるのか見てみたいよ。
………女子供が見ていいもんじゃないって、なにそれ！
ちょっとひどくない！？ どっちも該当するの私？
私もう子供じゃないんですけど！
…………
………ネェ。
………それ以上……私の胸に目線を向けてみろ。
私どうなるかわらかないよ？
はっ！？
て、てへっ♪
なにも怖い顔してないよね？
ね？
……ネェ？
え～。特訓場は関係者だけしかダメ～？
え～。折角来たのになぁ～。
夜には終わるの？
それまで待て？
それだとちょっと遅いような気がするのよ。
っていうか、ただ待つのなんてヒマじゃない！
あ～。
……もう。
そんなに謝られたら、どうしようもないじゃない。
……はぁ。
は～い。分かりました。
無理を言ってごめんなさい。
じゃあ夜に婚約者の使いが、もう一度正門に顔を出すってスーカさんに伝言だけお願いします。
うんよろしくね！
またねー。ばいばーい。
…………
フフフ。
誰がただ大人しく待つもんですか。
いやいや。待ちますよちゃんと。
伝言も残したしね。
ただ……秘密の猛特訓とか気になるし…………見たいよね。うん。
ちがうちがう！
別に興味本位とかそういうんじゃないし。
ニアさんの護衛としてはやっぱり婚約者がどういう人間かも見ておかなきゃだめじゃない！
うんうん。
そうよ！ これも護衛の一環なのよ！
私はスーカさんをこっそり観察しなくてはいけないのよ。
ニアさんの為に！
……となれば、もう忍び込むしかないよね。この館に。
あ～仕方ないわ～。
忍び込むなんて不本意だけど、しかたないわ～！
……フフっ。
さて、どこから忍び込むのが特訓場所に一番近いかな。
とりあえず館の周囲から特訓してるっぽい気配を探ろうっと。
どっこっかなー？ ウフフ。
【イラスト】
朱崎紫童様
http://www.pixiv.net/member.php?id=960665
