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厳酷のロザリア  作者: 河崎湊
聖王都防衛戦
4/6

3話:暴走少年

大人達の意見も纏まり準備が整ったところ、部屋の扉が突然開いた。開いた扉を見やると、そこには派手で豪華な衣服を纏った男達が四人立っていた。

全員白髪の混じり始めた初老の男性だが、現代日本の初老の人よりかなり筋肉質で、生命力というかなんというか、ギラギラと何かをたぎらせているような印象を受けた。


「初めまして、勇者達よ。余は"世界連合"所属、聖王国国王ウールド=ルートディスガだ。それと、この者らは大臣のカールド=ヴェスティ、公爵のコラン=マーヴェリン、軍務卿のハマン=セイント。我等四人が貴様らに説明しにきた」


四人のその中でも更に武骨な筋肉をしたウールドという男は、自らを国王だと名乗る。

老人であるのにかなり若々しくみえ、肉体から溢れ出るオーラと豪華で派手な意匠を施した外套と服が彼に更に圧を与えていた。


「初めまして、ウールド国王。私はこの集団の長をしております鈴裏です。

失礼とは存じますが、我々の世界では貴方のような名前は先に名前、後ろに家名が付くのですが、こちらでも同様でしょうか?」


周りの誰もがその圧に怯んでいると、一人だけ軽々しくお辞儀をし、ウールドとは対照的に優雅をもって自己紹介をする者がいた。

学校代表の鈴裏である。

ウールドその一連の所作を見ると口元を緩め、その身なりによく合う豪快で、見ていて気持ちのいい笑いをする。


「ハハハ!! ......合っておる、合っておるぞ!! スズウラよ。どうやら、中々異界の勇者も隅に置けぬかもしれないのう」


ウールドが一言そう漏らすと、彼に付き添う三人は警戒の強かった表情を更に引き締める。そして、どこにいたのか、彼らの後ろからセイリアが現れ、国王と鈴裏の両者に対して告げた。


「主催も揃いましたので、そろそろ始めるとしましょう」


こうして、異世界に来てから初めての戦いの目蓋が切って落とされた。


           ※


セイリアによって席へと着いた鈴裏と大人達と彰は、早速本題に入ろうと、話を切り込む。


「我々はいま困惑しています。異世界召喚などというシステムは我々の世界には存在しておらず、一般的にはそういったことは夢物語とされています。ですので、説明をしていただきたい」


言葉を発したのは長を名乗った鈴裏だ。

話し合いの中で彰達は全体の意思をある程度統率しておこうという意見になり、それをする上で校長というこで鈴裏を中心に据えた。

そして周りは鈴裏がミスをしたらフォローし、上手いこと相手にリードされないようすることにした。統率が取れずに相手に良いように切り崩されるよりは、中心に誰かを据えてある程度全体の意思を汲んだ質問をしていった方がマシだと考えたからである。


「まあ、待て。そちらも急に召喚されて焦っておるのは理解しておるが、ここは順を追って説明をさせてくれ」


鈴裏の質問に答えたのはウールドだった。

こちらとは違い、やけに落ち着いた雰囲気と口調で答える彼は、目の前の金色に塗られたコップの中身を一気に飲み干す。

彰はそれを見て、なんとなくムッとした。

ウールドの取った行動が、態々呼んだ自分達に対して誠意がないように見えたからだ。

そして、冷静でいる彰でもイラっと来るそれを、冷静でない周りの、そう忍耐力のないクラスメイト達が見たら一体どうなるだろうか?


答えは簡単だった。


「なんだよ、その態度はよ!? 勝手に連れてきたくせにんな態度取るとかふざけてんのか!?」


男子のクラスメイト、逢坂 昴(おうさかすばるが席を立ち、声を挙げてウールドを指差す。


周りのクラスメイトはそれをみて唖然した。

もちろん、周りの大人も同様である。しかし、それが不味いことであると思考を取り戻した大人達は彼を止めるべく席を立つが、彼に賛同の声を上げてウールドを非難する生徒が出始めた。


これには大人達や彰は顔を青くして、表情に出るくらいヤバイ!! と全員一致で心を一つにした。


不満と不安からドンドンと騒ぎの大きくなる彼らに席に着くよう言い聞かせる大人達。

これでも流石だと言うべきか、顔には出さないもののこれからどうしようと頭を抱える鈴裏。

特に何が出来るわけでもなく、ひたすらに焦りを感じる彰。

正にチェスで言うところのチェック、若しくはチェックメイトの状態で、一人、大きな声で制止する者が現れる。


「皆、落ち着こう!! 不安があるのは皆同じなんだ。だから、一旦落ち着こう!!」


非難していたクラスメイト達は一斉に黙る

沈黙を貫いていた者や騒ぎ立てていた者、教師から保護者まで声のした方へ振り向く。そこには一人の男子生徒が立っていた。

十文字海斗(じゅうもんじかいと)。クラスカーストの最上位にいるその生徒は、優しげで爽やかな笑みを浮かべて、沈黙が生まれるとこれ幸いと言わんばかりにクラスメイト達を説得しにかかる。


「皆、不安はたくさんあると思う。俺にだってある......けど、それで先生達を困らせるのは駄目だ!! 」


十文字の言葉がクラスメイト達を冷静にさせる。

バツが悪くなったと感じた彼らは、自ら席へと座る。

十文字はそれを見届けると、逢坂の元へとやってきて、謝罪を促した。


「昴。謝るんだ」


「いや、でも悪いのはあいつらだろ!?」


謝るのが納得いかないのか、逢坂はごねる。

しかし、十文字はそれを許さない。


「例え、俺らの感性に触れる行為があったとしても、周りに迷惑をかけたのは変わらない。だから、謝ろう」


しぶしぶといった表情で逢坂はウールドと俺らにそれぞれ謝罪する。

今まで何も言わずにただ静観していたウールドとその側近達、彼らの表情とその瞳に何を思うのか全く読めない。


「......すみませんでした」


「申し訳ありませんでした、ウールド陛下。自分達はまだここに来たことに混乱してばかりで、陛下に無礼を働いてしまいました。何卒、彼をご容赦下さい」


逢坂本人よりも長々と謝罪する十文字をウールドは、彼の頭の先から足の先までジロリとしっかりと値踏みするかのように眺め、後に満足したようにガハガハ豪快に笑うと、彼らの謝罪を受け入れた。


「よい。そこの者ではなく、ソナタの誠意に免じて許そう」


しかし、王に対する無礼な行為を見過ごすわけにはいけないと判断した側近三人は、ウールドに考えを改めるよう異議を申し立てる。


「陛下!! いくら異界の勇者とはいえ、それは....」


「よい。我がよいと言っておるのだ。それでよいではないか、コランよ」


コランの異議立てに被せるように、ウールドは彼を含めた付き添いに向けて、もう一度逢坂達を許すと強く言い放つ。

すると、彼らは不承不承ながらも口をつぐみ「失礼しました」とウールドに頭を下げようと......否、ウールドはそれを手で制す。


「コランよ。我は確かに彼らを許すとは言ったが、お主のさっきの行いは側近として間違った行いだったかの?」


「いえ、間違いではごさいません」


「ならば、頭を下げなくとも良い。我は間違った行った者に対して罰は与えるが、間違いもしていない者にそれを課すほど暴君ではない」


それを聞いたコランはウールドを讃えるように、言葉ではなく態度、つまり恭しいお辞儀をすることで敬意を示した。


「それと、少年。お主、名をなんという?」


一連の出来事に放心していた十文字をみて、ウールドが楽しそうな顔をしながら、彼に名を尋ねる。


「自分は、海斗。十文字海斗と言います」


「ふむ、カイトか。......良い名だな、覚えておこう」


やはり楽しそうな顔でウールドは十文字を見ると、十文字は苦笑混じりにウールドに一礼し、自分の席へと戻るのであった。




           ※





「さて、そろそろ本題に入るとするかの」


逢坂の件で強く出れなくなった大人達は、苦い顔でウールドの話を聞く体勢に移る。

端的に言うと.....。と、一拍間を取りながら、ウールドが話を始める。


「まず、我々が貴殿らを召喚した理由は"異界から来る軍勢と戦うため"に呼び出したのだ」


「異界の軍勢?」


質問をしたのは十文字だった。

恐らく意図して質問したのではなく、心の声が声にでてしまったとかそういったことだろう。

それを聞いたウールドは、「そうだ」と律儀に答える。

どうやら、先ほどの件で本当に十文字はウールドに気に入られたらしく、ウールドの反応が他と全然違う。


まあ、わかるよ。爽やかイケメンは男も女も皆大好きだよね。


「奴らがやって来たのは二ヶ月ほど前のことだ。ハースト王国にある、バリー大森林という深い森に奴らは唐突に現れてな。いきなり襲ってきて、近隣の村人を虐殺、捕縛していき領地を奪ってきたのだ」


ウールドや付き添い達は苦渋の顔をしながら、説明を続ける。


「当然ハースト王国も奴らに抵抗するため、戦力をバリー大森林に向けたが、結果は無惨にも敗北。

為す術なく軍を引き下げ、今度は我等聖王国を含む世界連盟の力を借りて敵と戦った。だが、引き分けに止まり停戦状態だ」


戦争などという言葉にあまり実感が湧かないのか、ほとんどの大人達やクラスメイトらはなんとも言えない表情をしている。

唯一反応を示しているのは、高齢者である鈴裏や教頭、"不思議な現象"に慣れている彰くらいなものである。


「しかも、我々は十万もの屈強な兵と異名持ちの猛者達までを投入しています。それで停戦状態に持っていくまでに失った兵は二万、そのうちの猛者の生還者はゼロです」


コランが口を開き、戦況に対する報告を述べる。

それを聞いた鈴裏を含めた大人達全員が剣呑な雰囲気を発する。特に保護者達の圧力は凄いものだ。


「そのような敵に我々に立ち向かえと仰るのですか?」


「左様。我々は奴らに対抗するため、貴殿らを召喚した」


一切躊躇することなく言い切るウールドに、鈴裏の表情は険しくなる。それは周りの大人達も同様で、恐らく今の大人達なら眼光だけで人を殺せる、そんな雰囲気をしている。

対して子供達の方はというと、全員不安な表情を浮かべている。彰も同様に不安を感じていたが、それよりも、彼らの話を聞くことを優先するように思考を無理にでもこちらに集中させる。


「我々はただの一般人です。正直に申し上げて役に立たない」


鈴裏の声色はかなり怒気を孕んでいた。

しかし、それでもウールドは平然と切り返す。


「それも理解しておる。だが、それを承知で我々は貴殿らを召喚したのだ」


彰はその発言に疑問を抱いた。いや、彰だけではない。鈴裏や大人達、はたまたクラスメイトの全員、誰もがそこに何かしらの反応をしてみせた。


「それは、どういうことですか?」


「それは私がご説明します」


その質問は鈴裏......ではなく、十文字が繰り出していた。それには先ほどまで恐ろしい程に沈黙を貫いていたセイリアが答える。


「異世界召喚をする際、私どもは数多の世界から異界の勇者足る素質を持つ者を探します。素質は様々ですが、具体的に申し上げますと他者を救う気質のある方が該当し、その次に異界の勇者としてその素質を存分に奮うことが出来るか、力の継承可能か否かになります。

そして、それらを満たし且つ数多ある世界の中でも一番の適性を示したのが貴方方なのです」


頭が痛かった。

彼らが入念に調査した結果、一番の適性を示したのが一般人の学生達と数名の教員、そして保護者達と来たものだ。

しかも彼らはそれを承知の上で彰達をここに連れてきたのだと言う。これでは、勇者としての役目を終えるまでは逃がす気はないと直喩しているものだ。


(ああ~、もう嫌だなー。勇者ってつまり戦うってことだろ? 人殺したりするかも知れないのか...)


逃げ道はない。

そう言われて全員が頭を抱える。

ある者は腕を組んで首を捻り、ある者は体を震わせながらガチガチと歯を鳴らし、またある者は何度も上を向いては下を向き溜め息を吐く行為を繰り返し、またまたある者は親の元に向かい、互いに手を握り合って必死に落ち着こうとしていた。


誰もが絶望していた。

このどうしようもない糞ったれで、残酷なそれでいで辛く厳しい厳酷な世界で戦うことに絶望していた。

怒りたい気持ちもあれば、泣きたい気持ちもあり、弱音を吐きたければ、諦める気持ちもある。そんな、幾つもの感情が渦巻く空気の中、そんな雰囲気をぶち壊すかの如く、誰かが質問を投げ掛ける。


「二つ聞きたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」


それは一人の男子生徒だった。

クラスの人気者で、イケメンで性格も良く、勉学もスポーツもでき、他人に優しく、人徳に優れた理想の男子生徒だった。

そんな彼を見て他の生徒達は何を思ったのか、無言で、でもどこか何か彼に期待するような眼差しを向ける。自分達ではこの状況を打破することは出来ない。けれど、この人なら、この少年なら、この生徒なら、もしかしたら何とか現状を打破してくれるかもしれない。

そんな淡い望みを持った生徒達を彰は危険だと思いながら、しかし状況を変えるだけの物がない。


「何かね? カイト殿」


ウールドは少しばかり気まずそうな顔をして、十文字を見返す。初めて感情を映すその瞳と表情は、彰にはそれが謝罪をしたそうに見えた。


「一つ目、役目を終えれば必ず返してもらえるのでしょうか?

二つ目、私達が勇者の役目をこなすのに充分な支援は受けられるのか?

三つ目、私達だって単に無償働いて死にたくはありません。役目をこなすにはそれなりの対価を貰えるのか?

                   以上です」


十文字の質問に彰達全員がギョッとする。コイツ、マジで勇者なんてやるつもりなのか?という目で十文字は見つめる。

彰は十文字の決断に敬意を表したくはあるが、同時に怒りが込み上げてもいた。

まず敬意表したい理由だが、単純にこの重苦しい雰囲気の中で決断を下したことと、彼が意図してやってるかは分からないが、この場でごね続けてウールドらに不興を買いタダ同然で働かせられる可能性があることを無くすため、先回りして要求を突き付けたことだ。

では怒りの理由だが、この場においてコントロール権があるのはウールド側にあるのは間違いない。では、先ほどからウールドに気に入られている十文字が「勇者やるぜ!!」と言ったらどうなるだろうか? 答えは当然、ほとんどこちら側の意見を無視した決裁になる。


ウールド達に帰還の生殺与奪権を握られている以上、彰達は彼らに逆らえない。そして、十文字はその逆らえないウールドのお気に入りになりつつある。事あるごとに彰達の全体の意思に、彼の意見がなるべく反映されるように配慮しなくてはならなくなるのだ。


しかも、今回の逢坂の暴走の件で生徒達を押さえきれなかった大人達は監督責任でウールドに頭が上がらなくなっている。だから、十文字独裁状態に繋がりかねないからだ。


ハァ。と長く重苦しい溜め息を吐き、ウールドは十文字に対しての質問に返答していく。


「一つ目、これは聖王国国王の名に誓い必ず約束する。

二つ目、これも当然今回の勇者教育国である我々と連盟の力をもって全力で支援する。

三つ目、勿論タダで働かせるわけにはいかないのは理解しておる。それ相応の報酬を払わせてもらおう。それに、衣食住に関しても、空いている王城の部屋を使ってもらい、我々と同じ食、服も好みの物を使ってくれてくれて構わない」


そこまでの条件を言われて少しだけ安心した。

だが、安心したとはいえ、それで全員が「はい。じゃあ戦います」なんて言うわけはなく、もっと根本的な問題が残っていたりする。


人間が戦うとき、それはなにかしらの覚悟を必要とする。家族を守るため、恋人を守るため、夢を掴むため、例えそれがなんであろうとも命を掛けるに値する"目的"がなければ人は戦えない。そして、それがいくら命を掛けられるものだとしても、それでも人間は危険を避けようとする生き物だ。

目的を低くすることで自らの危険を避けようとする心理面がある以上、心に余裕のないクラスメイト達が自分の命を掛ける選択よりどうにかして帰還できる方法を取るのが普通だからだ。


「皆、聞いてくれ...このままゴネているより俺はどうせなら勇者になろうかと考えている。......勿論、勇者をやるならそれなりの覚悟は必要になるし、力だってつけなければいけないだろう。でも、それって仕方のないことじゃないのか?

だって、彼らは俺らを今返すつもりはないんだ。 それに帰ることが出来ないのなら、勇者をやれば道中で別の帰還方法を見つけることが出来るかもしれないだろう? もしくは、本当にこの世界を助けてから帰還することも出来る。

なら、やってみないか? それにこの人達は俺たちを勇者だと言ってるんだ。勇者なら強力な力の一つや二つは使えるようになる筈さ。なら、そうそう死にはしないだろ?」


大人達はこれを止めることができない。十文字のスピーチにはいくらでも内容を指摘出来るものはあるが、それをしたからといって何か別の道を示せる訳ではないからだ。だから、苦々しい顔で座っている。

クラスメイト達は十文字の言葉に最初は疑心暗鬼だった。疑って、考えて、メリットを計算して、自分の感情と照らし合わせて。だが、彼らは気付いていない。

今自分達は正常な判断が出来ていないことを。地獄のどん詰まりに落とされて、帰還するのに僅かな可能性もないと思われたところに現れた一本の蜘蛛の糸にすがるような判断をしていると知らずに......。

暗闇に少しだけ照らされた光に、彼らは目を眩ませている。


「やろう」


始めは小さな声だった。

やろう!やろう!! やろう!!! やろう!!!! やろう!!!!!

しかし、それは次第に大きな声になっていき、やがて一つの大きな渦のように空間を支配する。


「では、やってくれるのか。カイト?」


クラスメイト達の雄叫びにも似た熱狂の最中、ウールドは申し訳なさそうな声で十文字に問い返す。

大人達の表情は暗く、そしていかんともし難い雰囲気を漂わせている。

彰も一生徒でありながら、大人達と同様にその顔と雰囲気は暗く、どこか冷めた目でクラスメイト達を眺めていた。

大人達の確認を取るように彼らに振り向く十文字。しかし、誰一人として大人は彼を見ない。

彼はそこに不安のような表情を少しだけ見せたが、それは直ぐに笑みに変わり............。


「ええ。やります」


二つ返事をする。

ウールドは立ち上がり、十文字の手を握る。一瞬十文字は驚くが、直ぐに両手でウールドの手を握り返した。


(今回の説明とやらで、十文字は俺達の代表みたいになったな...クラスメイト達の人気も奴に傾いてきてるし、あいつに集権されるのは不味い。もしも、十文字が暴走でもしたら大変なことになる)


冷めた目で彼らのお気楽さを眺める。

誰も彼もが安易な回答に逃げ込み、現実を直視するのを躊躇った結果がこれだった。いや、全員がというわけではないか。

少なくとも大人達と彰、そして数名の生徒は十文字に賛同していない。それに今回の舵取りをした十文字も、大多数の賛同を得るためのあのやり口は卑怯であったが、あの意見を自らの意思で出したのは本物である。他の流された奴らとは違う。




それにしても、たった一つの失敗で、ここまで状況が悪化したのには運命とやらの悪戯を感じずにはいられないと思う彰なのであった。

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