②生まれた森へ
やがて、木枯らしが吹き荒れる季節がやってきました。
クックは、カブトを力づけるために、毎日公園に通っては、落ち葉の中をのぞきこみました。
「カブト、元気にしてるかい?」
「うん。だいじょうぶだよ」
クックが声をかけるたび、カブトの返事はだんだん弱々しくなっていくようでした。
落ち葉のふとんにくるまりながらも、カブトのからだはふるえていました。
「寒いのかい? カブト。じゃあ、もっとあたたかくしないとね」
クックは夢中で飛びまわり、小枝やたくさんの落ち葉を集めてきました。そして自分の羽を抜くとカブトのために、小さなカゴのベッドをこしらえてやりました。
「ありがとう。とってもあったかそうだね」
カブトはうれしそうに、いそいそとベッドにもぐりこむのでした。
そんなある日の夕ぐれでした。
クックが公園に来てみると、カブトのベッドが空っぽです。
「こんなに寒いのに、どこに行ったんだろうね?」
クックが心配そうにあたりを見まわしていると、
「ここ……にいるよ」
頭の上からかすかに、カブトの声が聞こえてきたのです。
おどろいて見上げると、樫の木の幹に、カブトがぴったりとはりついているではありませんか。
「カブト、なにをしてるんだい!」
クックは、すっかり冷えきってしまったカブトを、すぐに羽の下に入れてやりました。
まるで卵をかえすように大切にあたためながら、クックはカブトに語りかけたのでした。
「おまえさん、森へ帰りたくなったのかい?」
カブトは、とぎれとぎれにつぶやきました。
「木のにおいが……なつかしくて。ねえ、クックおばさん、ボク、やっぱりもう……だめなのかな。雪を見ることはできないのかな」
「カブト……」
弱りきっているカブトに、クックはやさしく言いました。
「カブト、さあ、帰ろうよ。おまえさんの生まれた森に……」
クックは決心したのです。
カブトの命の灯が消える前に、もう一度、生まれた森で、心ゆくまですごさせてやろうと。
クックは、カブトをしっかりと胸にだくと、夕ぐれの森へと羽ばたきました。




