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蛙の子は蛙  作者: arata
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現実


夜の公園のベンチに腰掛け夜風に揺られながらタバコを喫する。

肌を包む風には生暖かい熱気が含まれている。季節はちょうど梅雨時のため天候も悪く頭上には曇天が広がっていた

夜空に吐き出す煙も夜風と混ざり、すぐに暗闇に吸い込まれていく。


ポツポツと雨が降り出した。

地面を小気味よく雨粒が打つ。

今日も心にはどんよりとした雲がかかっている。



一週間の終わりを告げるのは土曜日のタイムカードを切る時。

全ての鬱憤を吹き飛ばすような清々しさがその瞬間にはある。それは打ち合わせ終わりの喫煙よりも給料日後の風俗で楽しむセックスよりも快感を得られる。

一時間前の上司から受けた叱責なんて頭から跡形もなく消えていた。

会社の外に出て時計を覗くと針は夜の十二時を指していた。


世間では花の金曜日と呼ばれる週末のゴールデンタイムなんて出版業界には関係ない。

版元から提示された締め切りである校了日間近になると時間の感覚は徐々に失われていく。

せめてもの救いは日曜日に休めることだ。さらに切羽詰まった状態に追いやられると休日はお預けとなる。


そんな出版業界に足を踏み入れ一年が経とうとしていた。

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