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来る?2

どれくらい携帯を見つめていたのだろう。

携帯を思いっきり握りしめていて、手が携帯の形に固まってるみたいだった。


これって、そうだよね。

――さっきの話俺のじゃ駄目かな?――

そりゃね、過ったよ。圭吾君の学ランをって。

でも、でも妙に照れくさくて。それに体育祭で着たら汚してしまうかもしれないし。

そんな事を考えつつも、あの圭吾君の学ランに袖を通す自分を想像してしまったり。

なんか最近怪しい過ぎるって私。

そんな時、突然携帯が鳴りだした。驚いたのなんのって、あたふたしてしまったよ。

別に見られる訳でもないのに、周りを見渡してしまった。着信は龍太兄ちゃんからだった。

「よう、久し振り。学ラン欲しいんだって?」

おばちゃんとは違って話が早い。いきなり本題からやってきた。

「うん、そうだったんだけどね……あの~自分から言い出して何だけどね」

何だか、怪しすぎる自分の心を見透かされてしまいまそうでどもってしまった。もう借りれたからって言えばいいだけなのに。

「ふーん、そっか」

龍太兄ちゃんは多くは語らなかったけれど、事情は察してくれたらしい。

「うん、ごめんね。大丈夫になったんだ」

突っ込まれなかったとほっとしたのも束の間。

「彼氏だろぉ」

そう来ましたか。そう来るんですか。そっとしておいて欲しいところを龍太兄ちゃんはストレートに突っついてきた。

「へへへっ」

笑ってみるも、それはちっとも誤魔化した事にはなってなくて。

「まぁそれが一番じゃねぇの。郁にとっても相手にとっても」

何だか悟ったような口ぶりで、もう恥ずかしいったらなかった。

「あのね、おばさんには……」

心配事その1、恵理子おばさんに知られた日には、家族ぐるみでからかわれる事間違いなしときたもんだ。

「解ってるって、おふくろに報告したら、きっとお前大変な事になるぞ。それこそ根ほり葉ほり」

龍太兄ちゃんの声が何だかとっても楽しそうに聞こえるのは気のせいなのだろうか。

そんなやりとりをして、じゃあまたねと電話を終えた。

何だかんだ言って喋っちゃうんだろうなぁ。お正月は餌食かも。

少し先だけど、親戚中が集まるお正月を想像して身震いしてしまった。


そうそう、圭吾君に返事をしなくちゃだった。

でもいざとなったら、ちょっと緊張しちゃったり。だってあの圭吾君の学ランだよ。

まさか、こんな事になるとは。嬉しいけれど、照れくさい。

いろいろと文面を考えて、メールを書いては消しての繰り返し。

結局

――ありがと。借りるね――

という一言だけ書いて送ってしまった。

なんかすっごく緊張してしまった。だけど、その直ぐ後、それを数倍上回る緊張が圭吾君の電話と共にやってきたんだ。

頭の中に、圭吾君の学生服を想い浮かべながら

ありがとうなんて言ってみたのだけれど、学ランを貰う都合を聞かれてそれに続いた言葉に度肝を抜かれた。


――来る?――

「来る」って? 頭の中が一瞬弾けたみたいで、私の口は勝手に


「へっ?」

なんて間が抜けた言葉が出てしまった。口を押さえたけれどもう遅かった。

すると圭吾君はちゃんとした言葉で


――明後日、学ラン取りに来ないか?――俺んちに――

今度は声すら出ずに固まってしまった。圭吾君のお家に呼んでくれたんだ。

これが嬉しくないはずなくって。だけど、嬉しすぎて言葉が出てこなかったんだよ。

やだ? なんて言われても、返事が出来ないほどパニック状態で。

やっとこ声が出たのは、圭吾君が持ってきてくれるって言い始めてからだった。


「行く、取りに行くよ。へへっ何か緊張してしまった」

緊張してしまったのは事実だけど、そんな事まで言ってしまった私、テンパリ過ぎでしょ。

思わず口元に手がいってしまったけれど、遅すぎだってさっきと同じだよ。

頭の中はもう違うところに飛んで行ってしまったみたいで、圭吾君との会話はとってもチグハグなものになってしまった。


電話を切る間際

「じゃあ明後日な、おやすみ」

ってあの低い声で言われてしまって。ドクンと鼓動が跳ねた。

「おやすみ」

という私も声はちょっと裏返ってしまったような。


付き合い初めて数か月経つというのに、まだこんなドキドキしているなんて。

火照った頬に手をあてて、カレンダーを見つめた。

明後日かぁ。きっと明日と明後日は何にも手につかないんだろうな。

そんな事が容易に想像できてしまう私って。


あーどうしよう。


何がどうしようなのか解らないけれどそう口走っている私がいた。






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