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勢いで2

きっと、私の顔は真っ赤だと思う。

心臓が別の生き物みたいに体の中で跳ねまわってるみたい。


調子に乗ったってどういう意味なんだろう。

頭が回らなくて考えつかないよ。

あんまりびっくりして考えていなかったけれど、どうしてここに圭吾君がいるのだろう。

自惚れちゃっていいのだろうか私。


言葉が出てこない……


何か言いたそうな圭吾君。

そりゃそうだよね、いつまでもここにいたって仕方がないよ。

でも今圭吾君と2人でこの路地から出たらきっと見つかっちゃう。

私が思いついたのは、桜と良く行く喫茶店だった。

もし、見つかったら圭吾君に紹介させてなんて言われるのが目に見えている。

何より桜に紹介する前に、彼女たちに会わせるなんて事出来ないからな。

本当はそれだけじゃなかったりするんだけれどね。

そう桜の事は口実だ。


一緒に行ってくれるかちょっと心配だったけれど圭吾君は承知してくれた。

一先ず安心。

喫茶店へと向かう道を2人並んで歩いた。

さっき抱きしめられた時に鼻いっぱいに広がった圭吾君の匂い。

何かをつけているわけじゃないみたいだから、洗濯洗剤の香りかもしれない。

隣を歩く今もほのかに香るんだ。

さっきの光景を思いだして、一人照れてしまう私。

とてもじゃないけれど、ほんと会話なんて出来なかった。


ここら辺の町並みはとても落ち着いていて素敵なお庭のお家が続く。

いつもは桜と話ながらこの道を通るからこんなにじっくりと見る事は初めてかもしれない。

すると、いつもは目に入らなかった小さな桜の木がとある家の庭の隅に植えられているのに気がついた。あっちの桜に何かを訴えられているようなそんな感じがしてしまった……。

私が教室を出る時には大山達と話をしていた。まだ学校にいるはずだよね。


私が諦めずに圭吾君と付き合えたのは桜のおかげでも有るわけだし、やっぱりそうした方がいいんだよね。そんな事を考えていたら、もう店の前に着いてしまった。

圭吾君に声を掛けて、喫茶店の重厚なドアを開けた。途端に広がってくるコーヒーの香り。


マスターに軽く会釈をしていつもの席に座った。

マスターの前を通り過ぎた時に、マスターの唇の端が僅かに上がったのが目に入った。

私だってまさか、この店に圭吾君と一緒に来ることになろうとは夢にも思わなかったからマスターが驚くのも無理はないかもね。


圭吾君は私のお勧めしたコーヒーを私は景気づけに特大のパフェを注文した。

いつもは何かのご褒美で頼むそのパフェ。腹が減っては戦は出来ぬの心境だったりする。

頃合いを見て、圭吾君に言ってみた。

私の大事な友達と会ってくれる?って。緊張して口が回らなくってちょっと省略してしまった。


一瞬圭吾君が驚いたような顔した。

やっぱり、友達に会って貰うだなんて図々しかったかな。考え直して


やっぱりいいよ、気にしないでって言おうとしたら。


「郁の大事な人なんでしょ、ちょっと緊張するけれど。」って了解してくれたんだ。


一度目を伏せてから、私の目を真直ぐみる圭吾君。またもやドキュンと心臓が跳ねた。


じゃあ、連絡してみるね。


携帯を取り出して、桜を誘うメールを打った。会って欲しいんだと一言。


桜は送信を押して、一分も経たないうちに返信してきた。

言葉は何にもなくて、画面いっぱいにハートマークが書いてあった――ちょっと恐ろしい。


桜を待つ間、ちょっとだけ圭吾君に桜の話をした。

圭吾君は話の途中に無意識だろう眉間に皺を寄せていた。やっぱり、駄目だったかな?ちょっと心配になる。

そんな時、カランと鐘の音が聞こえた。

桜だ。

桜は私と目が合うと、思いっきりニヤーっと笑ってくれた。私のほっぺは固まった。


あれよという間に私の隣に腰かけて、圭吾君の顔をじっと凝視している。

桜ってばー。

私の心の叫びは桜に届かなかったようだ。

さっきの私へのほほ笑み同様のあのニヤーって奴を圭吾君にまで。

一瞬仰け反ったよ圭吾君。

私は堪らなくなって、パフェを口に運んだ。


先に口を開いたのは圭吾君だった。

「初めまして」

そんな短い言葉。

大丈夫なんだろうか?桜に凝視されて気を悪くしたとか?

桜と言えば、まだじっと圭吾君の顔を見ている。

耐えられなくなったのは圭吾君のほうだった。

目の前にあるコーヒーを口元に運んだ時だった。

桜が口を開いた。

「初めまして……じゃないよね。浅野君。」


はっ?


私の頭に?マークが浮かんだの同時に


ブハッとコーヒーを吐きだす圭吾君。

それを見て、桜が大笑いしていた。


ちょっと桜ってば、それに圭吾君。それってどういうことなのー?

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