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思いは何処に2

彼女はきょろきょろ周りを見渡している。


自分が話しかけられたかどうかをみているのだろう。

小動物のように首を動かしあたふたしてるみたいだった。


ここは笑いたいところだが、この前の一件がある。

しかし、この後なんて話掛ければいいんだ?

突然自己紹介から始めるのか?


そう思ったら、彼女が俺を真っ直ぐ見ていた。

俺ってこんな顔出来るんだ。

知らないうちに自分が微笑んでいるのが解った。


改めて彼女を近くで見ると顔色が悪そうだった。


「顔色悪いけど大丈夫?」

具合が悪かったから電車を降りたのかと納得してみる。


ほんの、ほんのちょっぴりだけど、もしかして俺に会いに?なんて考えたことは木っ端微塵に吹っ飛んだ。

無論そんなことはないって解っていたのだけれど。


君の名前は?って聞くのか

それより俺から名前を言うべきだよな


取り合えずこの前の携帯のお礼を言ってみた。

彼女はコクリと頷いた。


突然ふってわいた偶然の再会。

やっぱり運命なのかなんて思っていたら


「圭吾っー電車行っちゃったじゃない」

と涼子がやってきてしまった。


なんでお前がくるんだよ。

彼女をみると具合が悪くなったのだろうか唇をかみ締めてじっとしている。


次の瞬間

「じゃあ」

と言って走り出した彼女。


一瞬何が起こっているか解らなかった。


咄嗟に

「待って話があるんだ。」

と言ってはみたが彼女の足は止まる事がなかった。


慌てて後を追うも電車のドアが閉まった直後で

「また会いたいんだ。会って話がしたいんだ。」

と動き出す電車に向かって言ってみるもそれは無情で。

彼女が一瞬振り返ったが電車は行ってしまった。


最後に見た彼女の顔は悲しそうな顔だった。


また言いたい事も言えなかった。


「さっきの子知り合いなの」

振り向くと涼子が立っていた。


これ程までに他の誰かに嫌悪感を持ったことはあっただろうか?

自分がさっさと話しをしなかったことを棚に上げて涼子を怒鳴ってしまった。


「お前とはより戻す気はないっていったよな。もう俺に話掛けないでくれ。二度と俺の前に来ないでくれ。」

八つ当たりだっていうのは重々承知だ。

でもどうすることも出来なかった。


涼子は目を見開き固まっていた。


「ごめん。」

そう一言だけ涼子は言った。


そして

「あのこ、綾南の子でしょ?あの子と付き合ってるの?」

とても小さな声だった。


「綾南?」


「そう綾南。知らなかったの?付き合ってるんじゃないの?」


涼子の問いには答えず

「どうして解るんだ?」

と聞くと


「帯のループに校章が刺繍してあったから。」

と涼子は言った。


知りたかった情報を涼子から聞くなんてな。

少し落ち着いた俺は


「ごめん、言い過ぎた。でも俺本当にお前とどうこうなる気はないんだ。」

真っ直ぐ涼子の目を見て言った。


「そっかぁ結構自信あったんだけどな。ここまで言われちゃしょうがないかもね。さっきは私の方こそごめん。嫉妬した。わざと」

そこまで言った涼子の言葉を遮った。


「もういいから。」

本当は良くなんかない。

今でもムッとしているのは確かだが、もっとちゃんと涼子に言っておくべきだったのは自分だから。


涼子の目から一粒涙が零れ落ちた。

別れるときだって見せなかった涙だ。


「あー本当に駄目なんだね。」

そういって顔をぬっぐた涼子。


心の中でもう一度ごめんと言った

こんな俺を好きになってくれてありがとうと言う気持ちも込めて。


その後から来た電車で涼子を見送ると学校に行く気も失せ、また来た道を戻る事にした。

思い起こすのあの彼女の悲しそうな顔ばかり。


知らぬうちにため息の数も増えていく

でも1つ収穫あった。


高校がわかったからにはなんとしても彼女を見つけなくては

もしかしたら既に彼氏がいるかもしれない

でもそんなことは関係なかった。


俺は彼女が好きなんだ。


彼女が好きになってしまったんだ。

自分には恋愛感情が欠落していると思っていたのはつい最近なのに

それが思い出せないほど彼女のことばかり考えている自分がいた。




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