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友達思い2

今日は日曜日。

俺の好きな作家が新刊を出す日だった。

いつもだったら行き着けの本屋に予約をするのに、最近の俺は何だかどうかしているようですっかり予約するのを忘れてしまって、こんな事は初めてだった。


昼飯を食ってから、本屋に行こうと家を出た。

出かけに母さんにジャガイモとにんじんを頼まれる。

今日はカレーかぁ。

そんなことを思いながら、駅前のいつもの本屋に向かったのだが。


そういえば彼女はどの位先に住んでいるのだろうか?

そんなことを考えた。

俺は本屋の入り口で向きをかえ、駅へと向かう。

確か、3つ先の駅前に大きな本屋があったよな。

一度だけ行った事のある本屋。

品揃えも多く、時間はいくらあっても足りないほど魅力的な本屋だった。

ただ、地元の本屋もそこそこ大きく満足していたので、また電車に乗ってまで行こうとは思ってなかったのだが。


今日は思い切って行くことにした。

何となく彼女に近づけるような気がして。

本当に何となくだけど。


駅前は、日曜日のせいか人がいっぱいだった。

同じ位の女の子も多く、どうしてこんなにいっぱいいるのに彼女はいないのだろう。

そんな馬鹿なことを思った。


前を見ると凄い行列。

今日は暑いせいか、アイス屋が人気があるようだった。

その行列を通り過ぎる際、一度だけ聞いたあの声が聞こえたような気がしたが、とうとう妄想の世界に入ってしまったかもと自分を笑い通りすぎてしまった。


本屋に着き、始めに目当ての本を手に取ると、後は時間を惜しむように自分好みの本探しに没頭した。

久し振りの感覚だった。


挙句の果てに、帰宅時間も遅くなりおまけにすっかり買い物を忘れて母さんに怒られてしまった。

結果夕飯はカレーからチャーハンに変わった。


その晩は買って来た本にかじりつき、一気に読みふける。

お陰で深夜3時になってしまった。


あくる月曜日のけだるい朝。

まだ眠い目をこすりつつ俺はいつものように駅に着き、改札まで行くとそこに真治がいた。


「おっす!圭吾」


「おっすってお前、何でこんなところにいるんだ!」


「俺も捜してみたくなってさぁ、圭吾にそんな顔させる女の子をさ」


どんな顔だよ。


聞くと朝からわざわざ電車に乗ってこの駅で俺を待っていたそうだ。


「焦ったよ、他の連中はみんな1本前の電車に乗って行ったから来ないかと思ったぞ」

なんて笑いはじめた。

朝からテンションの高い奴だ。


それにしても真治の奴。

俺だって会えないのに、いきなり来て会えるわけないじゃないか、と。

それに、こいつはあの子が誰だか見たこともないのに捜すことなんて出来ないだろうに。

って見たことないからみたいのか!心の中で突っ込みを入れてしまった。

本当何やってるんだ、全く。

そう思いながら、真治と電車を待った。


電車を待つ最中も真治の口は止まらず


背はどの位だ

髪の色は?長さは?

等と煩すぎだ。


無視していたのだが、しつこいったらない。

俺は根負けして


背は普通、髪も真っ黒ではなく茶色でもなく、長くもなく短くもなく


と端的に答えた。

隣でせめて背が高かったり、髪が長いとか短いだとかだったら見つけ易いんだけどなと言っていた。

お前に見つかる為に彼女は存在するんじゃないから、彼女は。


そして、向いのホームに電車がすべりこんだ。


「どれどれ」

なんて面白がっている真治。


ゆっくり入ってくる電車の先頭から目の前の車両まで目を凝らしてよく見ても、やはり彼女は見つからなくて・・・

電車が発車してしまった。

その時、


「あの子か?超かわいいじゃん!」


ゆっくり動き出した電車のドアの前にセーラー服を着た女の子が立っていた。

確かに制服は同じ様だが、彼女じゃない。

っつうか、思いっきり髪長いじゃないか!

彼女だったら良かったのにともう一度その子をみると、ばっちり目が合った?


ま・た・ね


そう口が動いたように見えた。

何なんだ?


隣で

「何か言ってたんじゃないか?それより良かったじゃないか会えて。」

ちょっと興奮ぎみに俺の背中を叩く真治。


「彼女じゃないよ。」

そう一言呟くと


「そっかぁ残念だったな。っていうか俺はさっきの彼女とお近づきになりたい!」

なんて馬鹿なことを言い出した。

でもそれは、俺を元気付けようとした言葉なんだろうけどな。


また会えなかった。


会えない時間が思いを募らせるような、そんな切ない気持ちになった。


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