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嫌悪感2

彼女は結局見つけられなかった。


一緒に飲もうと買ったコーヒーを手に持ち天井を仰ぐ。


近くでみた彼女は電車で見るそれより小さかった。

一際目をひくのはあの大きなくりっとした目だった。


缶コーヒーを飲もうとプルタブに指を掛けるものの、そおっと指を離しベットの脇に置いた。


どうして、ここにあるかな。

お前は本当だったら、駅のゴミ箱に捨てられていたはずなのに。

人差し指で缶を弾くもコンとういう何とも寂しい音がするだけで。


あの後、話を出来ていたら、今頃携帯で話でも出来たかもしれないのにな。

面白くて、先が気になっていた小説も手付かずにいつの間にか眠りについていた。


いつもの日常。

それは、彼女と話したことで少し変わってしまった。


次の日いつもと同じ場所に立って電車を待つも彼女を見ることはなかった。

ここで不安に駆られた。

どうして彼女は車両を変えたんだろう?

もしかして、俺避けられてる?

笑ってしまった事で嫌われてしまったのだろうか?

でも携帯を借りた時もいやな顔してなかったよな。

でも、俺が浮かれてただけで気づかなかったのか?

頭の中で疑問と不安が渦巻いた。

そんな日がまた何日も続いた。


今日こそは。

本をカバンの中にしまい、じっと電車が来るのを待つ。

この電車の中に彼女が乗っているかと思うと捜さずにはいられなかった。

とはいえ向こうの電車はこちらと違って、いつも満員だ。この中から彼女を見つけ出すなんて無理難題もいいところなのかもだが。


やっぱりというか何といか、今日も彼女を見ることは出来なかった。


「圭吾、お前変わったな。」

そういって真治が俺の前の席に腰を下ろした。


「圭吾とつるんでからずっとお前はポーカーフェイスだって思ってたけど、うんうん」

なんて俺の頭をなでやがった。

そんなのお前が勝手に思ってただけじゃないか。


「俺、避けられてるのかも。」

言うつもりはなかったけど思わず呟いてしまった。


真治は口をあんぐり開けて固まっている。

そして

「お前からそんな言葉が聞けるなんて。」

よほど驚いたのか、それとも言葉が見つからなかったのかそれ以上言葉は続かなかった。


一番驚いているのが自分だったりするんだよ。


「やっぱさぁ殆ど初対面なのに、笑っちゃったりしたら嫌悪感とか持たれたりするかな?」

否定してくれ、と心の中で願う。


「そういう奴もいるんじゃねえの。」


「そうだよなぁ」

やっぱあれは拙かったか。


「でもさぁ。」


でも?俺はそういう真治の続きを待った。


「お前の話聞いてる限りじゃあ、そんな事ないんじゃないかと思うけどな。んで、やっぱり捜してやろうか?」

真治は笑っていなかった。

でもそれはやっぱり自分で捜したいとういうか、結局今まで電車を見るだけで何もしなかった俺が言う事ではないのだが・・・


真治は俺の顔を見て、多くを語らず

「どうしてもの時は言ってくれよな。」

と言ってくれた。


真治の言葉に少しだけ救われた気がする。

いい奴だよなと今更ながらに思った。


それより、これからどうすっかな。

解っていることはあの時間に反対の電車に乗っている事。

時間的に逆算すれば、だいたい先にいったとしても精々3つ先の駅までだよな。


どういう訳だか、昔からこの辺りはセーラー服に学ランが多い。

俺らの学校も学ランだったりする。

女子は何年か前にはやりのブレザーになったのだが、どういうわけだか男子の制服は変わらなかった。

噂によると、PTA会長が反対したらしい。

変な話だ。


兎に角、該当する高校はいくつかあって、5,6校って感じだな。

せめて名前だけでも解れば、同じ中学の奴らに聞けるのだが・・・


聞くったって、名前も学校さえも解らないのに何を聞くんだか。

偶然を当てにするなんて、もうきっとないだろうからな。


一度しか話した事のない彼女がこんなに気になるなんてな。

今までだったらありえない話だ。


過去に付き合った事がないとは言わないが、その彼女には悪いと思うけどそんなに会いたいという欲求はなかった。

言われるままに一緒に帰って、たまに休日に出かけて。

自分から連絡だってした事はなかった。

彼女といるよりも、本を読んでいたほうがずっと楽しかったのだから。

俺って酷い奴だったんだな。

今までの自分を思い出して苦笑した。


それよりどうすれば彼女に会えるのか。

いくら考えても良案は浮かんでこなかった。








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