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続、合流ポイントで

前回、早く投稿できたと思って喜んでいたら、六日も経っていた。なんでじゃー!

本人は三日しか経ってないぞ、どうだー。という気持ちだったのだけれど……

昼間の暑さで熱暴走でも起こしたか…… 余裕をかましていたら予定日が過ぎていた。

道理で原稿がたまるわけだ。

そんなわけで今回は早めに。

次回からはまた平常運転(中四日ぐらい?)です。

そもそも一週間を四で割る奴が悪いんですよ。

「なんか縮尺違う」

 オリエッタが望遠鏡を覗いて言った。

「確かに……」

 望遠鏡を必死に覗き込むが、周囲の対象物と船の全幅が合わない。

 それは円盤形の前も後ろもない不思議なホバーシップだった。

 近付くにしたがってそれが船などではないことに気付く。

「要塞だ!」


 長い時間を掛けて、それは目印の石積み手前ギリギリに停泊した。

 停泊していた船をその影にすべて覆い隠す程大きな建造物が、僕たちの頭上で立ち止まった。

 僕たちは首が折れる程、上空を見上げた。

「これって…… 」

 周囲を囲う壁は出入りする城門がないだけでまさに城壁そのもの。上部には狭間胸壁まであった。

 護衛船ですら小さく見える。

 地上に向けてアンカーが何本も降ろされた。重そうな鎖がジャラジャラ落ちてくる。

 巨体を支える気嚢はここからは確認できない。

 どこまでも続く平らな船倉は、これからどうすればいいのか悩ませるに充分な広さを持っていた。

「先に行け!」

 護衛船の船員が先に行くように僕たちを促した。

「商船に付いて行け。上に上がったら誘導に従うんだ」

「ナーナ」

「ありがとう」

『ありがとうございます』

「髭のおじちゃん、ありがとー」

 こちらのバラエティーに富んだ搭乗員を見て船員は目を丸くした。

 進み始めた商船の先、船底のハッチが開き始めた。

 金属が歪んだときに発する銅鑼のような大きな音を奏でながら巨大なハッチがこれまた巨大な鎖に吊り下げられて下りて来る。

「早速、詰まったか」

「何?」

 前の商船の甲板にいる老人が日除け用の天幕の下で水タバコをくゆらせながら言った。

「いつも言うとるんじゃ。あのハッチの傾斜はきつ過ぎるんじゃと」

 斜めに下りてきたハッチがそのまま足場になって坂を形成していた。

 積み荷を満載した一隻の商船がその坂を上れず途中で立ち往生している。

『浮遊魔方陣』は陸から離れる程その出力は弱まる。おまけに船を傾ければ垂直方向の影響面も狭まるから、積載重量ギリギリまで詰め込んだ船は浮力を失ってしまう。

 前方で荷下ろしが始まった。

「おいおい、日が暮れちまうぞ」

「ほら、頑張れ、頑張れ」

 恒例行事のようで怒声の類いはない。

「手伝いましょうか?」

 老人に尋ねた。

「いや、もう上がる」

 言葉通り、積み荷の木箱を二つ、三つガーディアンで降ろしたところで船が滑り出した。

「ほんとにギリギリまで積んでたんだ」

「フォフォフォフォッ」

 僕の呆れた声に老人は笑った。


 僕たちの船は割り符を持っていなかったので隅に寄せられ、第三者扱いで検閲官のお世話になった。

「名前は?」

「リオネッロ・ヴィオネッティー」

「リオ…… ヴィオネッティー?」

「はい。リリアーナの弟です。正確には甥ですが」

 検閲官は動揺を咄嗟に押さえ込んだ。

 すぐさま平静を装うと「証明できる物をお持ちですか?」と聞いてきた。

「ギルド証があります」

 ギルド証を確認すると、仲間に上官を呼びに行かせた。


「ああ、お待ちしておりました」

 中年太りの人当たりのよさそうな丸顔の人物が、呼びに行った検閲官に付き添われて現われた。

「港の責任者をしております。ラウリーニです」

 僕たちは握手を交わした。

「あの…… 待っていたというのは?」

「ああ、この船はこう見えて街扱いなものですからね」

 視線の先に見慣れた旗が棚引くポールが見えた。

「冒険者ギルド!」

「はい。当然『双子の石版』も完備しております」

『双子の石版』というのは冒険者ギルドが専売特許を持つ通信用の魔導具のことである。瞬時に情報のやり取りができる優れ物だが、例え王家であっても入手することができない希少な物である。

「姉さんから連絡が?」

「先に着くようならよろしくと」

 話が通っているなら安心だ。

「それにしても…… 壮観ですね」

 僕たちはほぼ最下層の通路から上を見上げていた。

 街は臼状に外壁に向かって高くなるように築かれていた。船の強度を維持するために中央の空には無数の梁が。その梁の上にはまるで浮島のように大き目の建物が並んでいる。

「ええ、まあ。でも実際は見た目程じゃありませんよ。所詮は浮き船です。余分な重量は排除していますからね。中身はスカスカです。屋根瓦の代わりに布きれを被せているぐらいですからね。ああ、そうだ。足元には注意してください。通路以外は底が抜けてることが多いですから」

 通路をそれた建物同士の隙間などを覗くと階下の景色が確かに見える。

「手摺りがやたらにあると思ったら、そういうことでしたか」

 上を見上げても露出の多い場所には落下防止用のネットが設置されていた。閉塞感を緩和するため、一役買っているようだ。明かり取りも兼ねているのかな?

「まともな屋根はなくとも結界は完璧です。ドラゴンの襲来も砂嵐も怖くはありません」

 骨組みだけの多重構造体に必要最小限の物が載っかっているということらしい。

 足元から見上げると隙間なく頑強に見えた城壁も街の風通しをよくするために巨大なスリットが上向きに空いている。

 最下層辺りのドックの床はさすがにしっかり目張りまでしてあるが。

「元々は船の残骸を集めて回るジャンク船だったのですが。『銀団』に買い取られてからはジャンクを売るより、客の船の改修をすることが多くなって。需要に合せてドックを増やしていたら、人の出入りも増えましてね。宿泊施設や救護院、必要な物をその度ごとに増築していたら、繁華街を持つまでになりました。この街には常時六千人が暮らしております」

「慢性的にドックは足りていないと聞いていましたが」

「小さな船なら砂漠の上でもできないことはないのですよ。ですが、大きな船ともなるとさすがに…… パーツ一つ一つが大きいですからね。まあ、最大級の船を修理する船ですから、このサイズもやむなしと言ったところです」

「商船の積み荷は船のパーツが主ですか?」

「生活必需品と半々です」

「ほんとに凄い……」

「この程度で驚かれてはいけませんよ。最前線の地下都市を見たらもっと笑えますからね」

「それは楽しみだ」

 生憎立ち寄る機会はないだろうけど。

「明朝、大掃除がありますから。合図がありましたらドックの方にお逃げください」

 逃げる?


 ギルドがあるとは、これ幸いにと手紙を出しに向かった。

 意外にしっかりした出張所であった。前線に着くまでは開店休業中で依頼件数自体、雀の涙程だったが。

 奥のテーブルを借りてミントの件について注進する手紙を書くことにした。アールヴヘイムでは『太陽石』の処分が始まっているはずだ。ゲートキーパーに間違いはないと思うが、迷宮で一時預かりする手筈になっていたから、下手をすると今頃、ミントの仲間たちが大量に湧いている可能性がある。さっさと魔力の枯渇した世界に送りつけていればよいが。

「あの…… ヴィオネッティー様。こちらに手紙が届いております」

「へ?」

 一応街は船でもあるので、明日には乗客宛の手紙は配達されていただろうが、配達前の僕宛の手紙が留め置かれていたようだ。

「爺ちゃんからだ!」

 早速封蝋を剥がして中を見る。

『ゲートキーパーから知らせが来た。『太陽石』に魔力を三日以上当てるな。迷宮を開設してもゴミ箱代わりに放り込むな。羽化することが判明した。彼らは知性を持っている。殺害無用。念話が可能――』

 向こうでもミントの仲間たちが何体か先んじて目を覚ましたようだ。数は定かではないが、さぞやうるさいことになっていることだろう。オクタヴィアが通訳でフラフラになっているとも記されていた。そのオクタヴィアから追伸で『あんこ、忘れた』とあった。

『あんこ』って餡のことか? なんのことだ?

 僕はミントの件をオブラートに包みながら、こちらも条件などを確認したと記した。タロスの第二形態による転移の件は特に詳しく書いておいた。

 秘匿文書扱いでまた金貨が飛んでいった。


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