第76話 メイド服の調達法 その7
「それよりわたしはもよりに興味があるな。クールでかわいい。さっきの、撮っといてよかった」
「え!?」
「ほら」
そう言って奈月さんはスマホの画面をくるっとこちらに向ける。
手持ち無沙汰に掌を腿の前あたりで重ねて直立しているわたしの全身像が映っていた。オーバーニーも膝上から爪先までばっちり入っている。
「・・・消して貰えませんか」
「絶対、誰にも見せないから。これはわたしの癒しのためにひそかに取っておくだけだから」
「はあ・・・・」
奈月さんのオムハヤシとわたしのアヒージョが配膳される。
いただきます、と手を合わせたわたしに奈月さんがコメントする。
「いいなあ、あなたのそういう仕草。やっぱりお寺の娘だから?」
「奈月さんは食事の前に”いただきます”って言わないんですか?」
「ん?そう言えばわたしも言うか。じゃ、同じだね」
いただきます、と奈月さんがかわいらしく手を合わせる。
「ああ、もよりが同じ学校ならよかったのにな」
「え?」
「わたし、もよりが好きだよ」
「はい?ああ、ありがとうございます。わたしも奈月さんが好きですよ。さすが副会長、って感じで、なんか、かっこいいです」
「そうじゃないよ」
「?」
「ほんとに好きだって言ってるの」
「え?わたしだって奈月さんのこと、ほんとに好きですよ?社交辞令とかじゃなくて」
「違うなあ・・・・わたしは恋愛の対象として、あなたのことを好きって言ってるんだよ」
「え?」
「引いた?」
「・・・奈月さんって、そういう趣味の人なんですか?」
「分かんない。そもそも男だろうが女だろうが、人を好きになったことなんて一度もないから。これが恋っていう感情だとしたら、あなたが初恋の相手だよ、もより」
「・・・それって恋じゃないんじゃないですか?」
「えらくあっさり否定するんだね」
「多分、わたしがちょっと背が高かったり、やたらと合理的な行動をしようとするからもの珍しく映るだけですよ。明日になれば気持ちもおさまってます」
「そんなことない。だって、あなたみたいなきれいでかわいい人間って見たこと無いもん。男女含めて」
「人間・・・・」




