第70話 メイド服の調達法 その1
前話からの続きなのですが。
あそこで話が終わっても良かったのかも知れないけれども、疑問が残る方もいると思うので、報告せねばならぬでしょう。
わたしがどうやってメイド服を調達したのか。
まあ、聞いてください。
最初、お師匠は
「それっぽい服は持ってないのか?」
とわたしに訊いた。
「ないよ、そんなの」
「じゃあ、買うか」
「?①どこで?②誰が?」
「①分からん、②もちろん、もよりが」
「嫌、です」
わたしとしては服の調達の前にこの企画そのものを無しにして欲しかったのだけれども、お師匠は執拗だった。
つまり、お師匠には見えていたのだ。
わたしがメイド服を着るのが必然だと。
これはお師匠が考えたのではなく、神仏がお考えになった企画なのだと。
ほんとに?と思うけれども、お師匠が冗談を言うような人格じゃないことを考えるとほんとにそうなのだ。
仕方なくわたしは調達ルートをもう一度検討する。
はっ、とメイド服を着た女子の残像が脳裏に浮かんだ。
ああ、そう言えば。
横山高校の大志くんにメールする。
”大志くんって、ソフトボール部の人と仲いい?”
しばらくして返信があった。
”同じクラスでよく話す子は1人いるよ。何で?”
よし。文字を打つのが面倒なので、そのまま電話した。
「あ、大志くん?忙しいのにごめん。今、いい?」
「うん、大丈夫だけど。どうしたの?」
「ほら、先月横山高校の学祭に招待して貰った時にソフトボール部がメイド喫茶やってたの思い出してさあ」
「ああ、そう言えばやってたね」
大志くんに好意を寄せている牧田さんにせがまれたこともあって、科学部の部活だけじゃなく、学祭にもみんなで押しかけたのだ。
「それでね、実はメイド服を貸して貰えないかなあと思って」
「え?何で?」
「着るの」
「誰が?」
「わたしが」
「へえーっ!」
それから事情を詳細に説明した。
「ふーん。じゃあ、一応真面目な人助けなんだね」
「学祭の時、5人くらいが同じメイド服を着て店に出てたから、誰かから借りられないかな、と。もしかしたら個人的な持ち物じゃないのかも」
「うーん、はっきり言ってぼくも女子にそんな話したら引かれそうで怖いけど、もよりさんのだめだ。明日まで待ってて」
「ありがとう」
「それに、もよりさんのメイド姿見てみたいし」
「ダメ。絶対見せない」




