第48話 ジャンル分けに関する考察 その4
「ごめん、詳しく説明して」
牧田さんに言われ、またもやわたしは思考にないことをすらすらと喋り出す。
「最近科学がSF化してて、これでいいのかなあ、って思って」
「科学のSF化?」
「はい。科学って本来事実を見つめるもののはずなのに、まるで自分の目で見て来たかのような仮説を立てて、それを事実とすり替えようとしてるから怖いなあと」
「?」
あれ?みんな疑問符出してる。説明が下手かなあ。
「例えば人間の身体と遺伝子やら人工細胞やらの研究が進んでるけど、そもそも一個の人間が”お腹減ったな”とかくだらないことを考えながら生きて動いてることがわたしにとっては不思議で。最先端の細胞を使ったところでもともとはただの肉の塊が動くんだよ?」
わたしは制服の上から自分の二の腕あたりをぽよぽよとつまんでみせる。あ、みんな失笑してる。
「一番違和感を覚えるのは宇宙の起源の研究とかって。もはや人間は誰も見ることのできないものを色々と調べるのって大変だし、どうかなあと思って。神様でもないのに」
「つまりそういうシニカルな視点で現在の科学を批評する研究ってこと?上代さん、それ、具体的にまとめられるの?」
「うーん、一応お寺だとそういう話も檀家さんとしないといけないから資料とかあるし。わたしの持論、というか事実がこうだ、っていうのはまとめてあるんだけど。まあ、敢えてジャンルに分けるとしたら、哲学っぽい分野になっちゃうかもしれないけど」
”へー、おもしろそう”
”うん、それいいんじゃない?”
あれ、まずいな。余計な事言っちゃったかな。牧田さんの顔、こわばってるな。
結局、テーマはわたしのが採用されてしまった。
リーダー、プレゼンは牧田さん。わたしは資料持参とまとめで、あとはその他大勢として教室展示の準備をすることに決まった。
「お師匠、本、何冊か借りてくね」
まあ、元ネタはお師匠ってことなんだよね。




