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第43話 少年の主張 小室次郎 その2
里先生と戦ったあの日、殴る側への怒りだけでなく、千鶴さんを助けたいという意識が加わりました。
”思考”、ではなく、”感情”です。
頭のいい里先生に足をすくわれないようにポイントを押さえて対決したつもりでしたが、相手が数段上でした。
「地獄に堕ちますよ」
というもよりさんの声を今でも鮮明に脳内で再生できます。
もよりさんは自分の身を投げ出して僕と千鶴さんを助けてくれた。
僕には分かる。
あのまま終わってたら、僕と千鶴さんはクラスの中で完全に孤立してしまっていたでしょう。
もよりさんって、すごい。
でも、もよりさんも相当の覚悟を持って里先生と対峙してくれたんだと思う。
だからこそ話す一言一言に迫力があった。
でも、それだけじゃない。
なぜ里先生が沈黙せざるを得なかったのか。
あの後、里先生がもよりさんや僕たちに仕返しすることができないのか。
それは、もよりさんから発せられた言葉がすべて”事実”だから。
先生であろうとも摂理やものの道理から逃れられないから。
もよりさん、ありがとう。




