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もよりがシュジョーを救う法  作者: @naka-motoo
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第186話 夏だよ(その6)

 お昼少し前に、7合目のロッジに着いた。今夜泊まる部屋に男女それぞれ荷物を置いて、食堂でご飯だ。


「うーん」

「奈月さん、どうしたんですか?」


 箸の進まない奈月さんを心配して、ちづちゃんが声を掛ける。


「ちょっと頭が痛いような重いような」

「あ、奈月さんもですか? 実はわたしもなんです」


 ちづちゃんもか。それはね。


「軽い高山病だね。多分しばらくすると慣れると思います」


 いたって平気な顔の大志くんが、さらっと答える。さすが横山を研究テーマに取り上げてるだけのことはある。


「ここで働いてらして、高山病になることはないんですか?」


 空くんがロッジのスタッフに訊くと、


「最初はやっぱりなりましたね。でも、何年かすると慣れて段々平気になってきましたね」

「それでも何年もかかられたんですか・・・」

「ええ。もうその状態を普通、と思うしかないですね。多分、漁師さんや船乗りさんも似たような感覚でしょうけど」

「ああ、確かに」


 空くんも納得顔だ。次にちづちゃんが結構深い事を言った。


「言われてみれば・・・わたし、小学校低学年の時は毎日ぐっすり眠れて、朝はばっちり目が覚めて、”さあ、今日は何しよう”って感じだったけど、段々学年が進んで色々悩みも出て来ると、頭と体が100%すっきりしてる、って日は数えるほどしかなかったかも」

「うーん」

「確かに、そうかもしれない」


 ロッジのスタッフさんが、にこっ、とする。


「お客さんは、一生懸命生きておられるからこそ疲れを感じるんですよ。充実してればはつらつする、ってもんじゃないです」

「そういうものですか」

「そういうものです」

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