第164話 とある証明をするナッキー(その5)
「おはよう!」
「え? あ・・・おはよう」
「おはよう!」
「お、はよっす」
GW明けの朝、校門をくぐった瞬間から誰彼かまわず挨拶しまくった。多分、わたしは極めてシンプルな人間なんだろう。
まさか、とは思ったけれども、奈月さんがくれた ACIDBOYのアルバムをウォークマンに入れて毎日聴いてたら、”どっちでもいい”、というわたしが復活してた。
お? 片貝先輩だ。
「おはようございまーす!」
「お・・・おはよう」
ありゃ。声大きすぎて驚かせたかな? まあいいや。
お? 里先生だ。
「おはようございます!」
「あ、ああ」
なんだ。いい大人が挨拶もまともにできんのかい。まあいいや。
お? 教頭だ。
「おはようございます!」
「・・・おはようございます」
声が小さい! って気合いを入れたいけどまあいいや。
やー、さゆり先生だ。
「さゆり先生、おはようございます!」
「おはよう、ジョーダイさん。ゆっくり休んで元気出た?」
「もともとこんなもんですよ、わたしは」
教室に入り、
「おはよう!」
と、一声発した。
おはよう、と返してくれる子、無視する子、ちょっとだけ笑ってくれる子。どれも、それぞれに、いい。
「学人くん、おはよう」
「もよりさん、おはよう」
「空くん、おはよう」
「おはよう。GW、どこか行った?」
「ううん、特に。ジローくん、おはよう」
「おはよう。よかった、元気そうだね」
「うん、ありがとう」
さて、と。わたしにとってのラスボスに対峙するか。
「ちーづちゃん、おはよう!」
「え・・・あ・・・うん・・・」
お?
「・・・おはよう・・・もよちゃん」
くーっ・・・かわいい!
これだよ、これなんだよ!
この照れた笑顔、優しくて高い声。
ああ、わたしは証明した。
わたしの人生には全員必要だ、って。




