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もよりがシュジョーを救う法  作者: @naka-motoo
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第157話 2年目の春(その12)

 金曜。投票が月曜なので、選挙戦も実質今日で終わりだと思うと正直言ってほっとする。5人組のみんなも、本来は目立ちたくないタイプばかりなのに本当によく頑張ってくれたと思う。


「もよちゃん、今日だね」

「ん? 何が?」

「ほらー。だめだよ、もよちゃん。リラックスしすぎだよ」

「あー、お昼の候補者討論ね。大丈夫。”お互い頑張りましょう”、的な儀礼的なもんだろうから」


 ちづちゃんに言わるまで忘れてた。

 昼休み。放送部主催で恒例の候補者討論を校内放送で流すのだ。まあ、司会は温厚な桜谷部長だし、対談程度のノリだろう。


「上代さん」

「はい、何ですか?」


 朝のHRより大分前にさゆり先生が教室に来た。しかもわたしのこと、カタカナじゃなく漢字で読んでる。ちょっと来て、とそのままさゆり先生と一緒に職員室へ行った。


「上代さん。さっき学校宛電話が入り、私が応対しました」


 わたしは職員室の入り口近く、応接用のパーテーションの一角で教頭先生の前に座る。わたしの隣にはさゆり先生。電話ってなんだろ。


「電話の内容は、あなたが傷害事件を起こしている、というものでした。心当たりはありますか」

「傷害事件? わたしがですか?」

「そうです」


 何のことだろう。


「いいえ。特に覚えがありません」

「はーっ」


 教頭先生、ものすごい溜息だな。落胆の最上級かな。


「上代さん、電話してきた方はね、あなたが女性に石を投げた、と言ってるんですよ。石を投げて転ばせ、その人を殴ったと」


 あ!? 

 多分、わたしの表情には特に驚きは出なかったと思う。わたしは淡々と答えた。


「ああ、それなら確かにそうです」


 教頭先生は、はっきりと舌打ちした。


「事実なのか」

「はい。その女性はわたしの母です。母にコンクリートブロックを投げ、拳で顔を2発殴りました」

「それで、警察に逮捕されたと聞いたが」


 あの時のことを思い出す。

 確かに、母がマンションから飛び降りるのをコンクリートブロックを投げて止めた。止めただけじゃ腹の虫がおさまらなかったから、右拳で2発殴った。3発目をやろうとしてたら通報で駆け付けた警官に取り押さえられ、そのまま警察署へ行った。


「警察の人は”任意でご同行願えますかと言ってましたけど、逮捕と言えば逮捕かもしれませんね」

「君は、馬鹿か」

「成績は悪いですけど、馬鹿かどうかは分かりません」

「教頭先生」


 さゆり先生が割って入った。


「何ですか?」

「意味のない質問かもしれませんが、”電話をかけて来た方”、は、一体どなたなんですか」

「無意味な質問だ。守秘義務があるので言えない」

「教頭先生。上代さんが自分で言うんですから、お母さんを殴ったのは事実なんでしょう。ですが、その内容は結局家族の間での極めてプライベートな出来事です。機微情報と言っても差し支えないと思います。上代さんの個人情報を第三者が知り得て、公の場である学校に電話をかけてくる。こちらの方が余程問題だと思います」

「神野先生、電話をかけて来て下さった方は祖北星高校によかれと思って知らせてくださったんですよ。感謝すべきでしょう」

「北星高校に、ですか?」

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