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第137話 一応、バレンタイン(その11)
帰ってお師匠に一部始終を話した。そして詰問した。
「お師匠はあの絵のこと、分かってたの?」
「うん、分かってた」
「じゃあ、どうしてわたしがケーキ食べてる時何も言ってくれなかったの」
「いや、もよりの反応が面白くてな。黙って男の子のいたずらに便乗することにした」
「そのお蔭でこの数年間、ケーキが食べられなかったんだよ」
「それは済まなかったな」
まあ、いいか。
「ところで、その刑場の菓子職人はどうなったの?」
「菓子職人なんか最初っからいないぞ。話があちこちでごちゃ混ぜになってるんじゃないか」
うーん。ちづちゃんのお母さん、結構アバウトだな。ちづちゃんがたまに見せるアグレッシブさはちょっと似てるけど、似て非なるものだね。
わたしとお師匠もそんなもんか。




