第134話 一応、バレンタイン(その8)
ちづちゃんのお母さんのお蔭でケーキ以外のメニューも食べられ、わたしはバイキングを堪能した。
「ごめん。わたし、ここで別れるね」
電車で帰るメンバーもいるので、駅までとりあえずみんなで歩いていたのだけれども、わたしはお寺とは逆方向に足を向ける。
「え?もよりさん、どこ行くの?」
わたしは高架の下をくぐって駅北へ向かうつもりだった。
「うん、ちょっとカレイドまで」
「もよちゃん、行ってどうするの?」
「いや・・・もし本当に菓子職人の念とかが原因だったらお師匠が気が付かないはずないし・・・それに、多分最近のわたしだったらもしかしたらそういうのを釣り上げられるかもしれないなって思って」
「いや、釣り上げるって・・・危ないよ」
学人くんが心配そうに見てるけど、わたしにしたら、ごく日常のことのはずだから、”大丈夫”、と一言だけ言って高架をくぐり始める。
「もよちゃん、わたしも行くよ」
「僕も」、「僕も」、「俺も」
結局、5人団体様となった。
「みんなこそ危ないよ?」
「ううん。喫茶店のはしごもたまにはいいでしょ・・・」
空くんの気軽さに甘えることにした。実のことを言うと、お師匠ですら気付かないような相手だとしたらちょっとやだな、って心細かったのだ。




