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第119話 Ordinary New Year's Day(その3)
大勢ではないけれども、年配の檀家さんを中心に人が集まり始める。いちいち玄関へ出て対応できないので、「そのまま本堂へお進みください」という張り紙と、「→」を貼って、勝手に上がり込んで貰うことにしている。
「あれっ?」
うわ、ちょっとびっくり。ちづちゃん、ジローくん、空くん、学人くんが揃って本堂に入って来た。
「あけましておめでとうございます。それからお誕生日おめでとうございます」
「うわー、ありがとう。来てくれたんだ。でもみんな寝たの?」
「寝てない」
空くんが目の下にクマを作った顔でぼそぼそ答える。
「いやー、みんなそれぞれの地元の氏神様に二年参りした後、なんとなくメールで咲蓮寺にお参りしようってことになって。帰ったら寝ちゃうから駅前のファミレスで4人で夜明かしして」
学人くんも半分眠りそうな状態で説明してくれる。
「ありがと、みんな。さ、床は冷たいから」
わたしは4人にも座布団を勧め、それから1人ずつお経の本を配る。
そして念押しした。
「お経上げる時、寝ないでね」




