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先生、ネコがしゃべりません!3

***


 5月某日。レクリエーション大会当日。天気は快晴。

 結局マナはビビと一言も喋ることの出来ないままこの日を迎えた。レク大会はパートナーが初めて主人と協力し能力を発揮させる目的もあるのに、マナとビビに限っては意味が無さそうだ。


「さービビさん、着いたよ~」


 バスが目的地に着き、黒猫を抱きかかえ集合場所まで歩くマナ。他の生徒のパートナーは皆黙って主人に着いて行ってるのに、ビビは放っておくとマナに着いて行こうとすらしないので否応なしに抱いて行くしかない。ふてぶてしい顔をして抱かれている様は、まるっきり甘えきってるペットだ。


「ビビさんは甘えん坊だね」


 マナの腕の中の黒猫を覗き込んでシホが言う。シホのパートナーはイモリのロキ。あまり頭は良くないけど、シホのパワフルな魔法に屈服して契約を結んだらしい。


「ビビはパートナーの風上にも置けないでやんす。主人に苦労掛けるなんてありえないでやんす」


 どうやらロキは江戸っ子らしく義理人情に厚いヤモリだ。でもだからってその小さな身体で無理に歩かなくても。うっかり踏み潰しそうで恐いから大人しくシホの肩にでも乗ってて欲しい。


 集合場所に生徒が集うと学年主任が今日のレクの詳細を説明し始める。やっぱり内容はオリエンテーリング、森の遊歩道にあるチェックポイントを全て通過してゴールすればいい極めてシンプルな課題。ただし。


「森には所々魔法によるトラップが仕掛けられている。チームの仲間やパートナーと協力してクリアするように。健闘を祈る」


 とーぜん、それが無くては魔法学科の意味が無い。制限時間までに己の持てる魔法力を駆使してゴールに辿りつく様仕組まれている。


「トラップだって。すごいねー。恐いねー」


 マナがいつもの笑顔のまま微妙に震えている。恐怖の時くらいその笑顔やめんか。その隣でシホは得体の知れない素振りをしてるし。何と戦う気だ。やっぱりコイツら木に括りつけてひとりで行こうかな。

 などと考えてるうちに、スタートのホイッスルが鳴らされ生徒たちはチームごとにバラバラと森へ入っていった。


「よーし。いきますぞー」


「マナ、あんたは無駄に出しゃばんないで。絶対遭難するから」


 私の命令にマナは「あいっ!」と素直に返事して敬礼のポーズをとった。何だこのリアクション。まあいいや。


「ララちゃん、ゴールまで木を押し倒しながら進めば一直線だよ!」


「シホ、あんたも大人しくしてて」


「あいっ!」


 だから何なんだ、その敬礼ポーズは。馬鹿の流行なのか?まあ、とにかく。やっぱりコイツらには任せられないので私は配られた地図を広げ戦略を考える。


 チェックポイントは3箇所。道なりに行けば通過できるようになっているけど、当然そう簡単にはいかないだろう。地図とにらめっこをしていると空から偵察をしてきたキョウが帰って来て私の肩に停まる。


「やはり上空には魔法力に反応する結界が張ってある。ホウキや浮遊での移動は無理だろう。歩道にも魔方陣がいくつか見えた。迂闊に進めば落とし穴の要領でどこかに飛ばされるぞ」


「やっぱり歩道を行くのは無理か。回り道をするか……いや、魔方陣を解除しながら行った方が」


 私が真剣にキョウと相談してると言うのに。


「ララちゃーん、みんな行っちゃったよー」


「早く行こう~早く~!」


 この大馬鹿コンビときたら。頭が使えないなら少しは大人しくしてろ!


「あ!ねーねー、遊歩道の脇に小道が見えるよ!」


「本当だー。あそこから行けないかなー」


「あっ!ちょっと待て!!」


 小学生以下の忍耐力しかない馬鹿コンビは痺れを切らし、発見した小道へとサッサカ走って行ってしまった。勝手に動くなってのに!幼児並に手の掛かるふたりを追いかけようとしたその時だった。


「うわーあーあーあーー」


「わー!マナちゃーん!!」


 案の定。小道に仕掛けられていたトラップの魔方陣にまんまと引っかかり、マナは空間にポッカリ開いた落とし穴へと見事に落ちていった。

 

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