先生、魔法が使えません!7
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「無茶するなあ長谷川くん」
私の活躍を一部始終見ていたゴロ先生が、寮へ向かう道をいっしょに歩きながら今さら額の冷や汗を拭っている。
「だって、こうでもしなきゃ相手は世界的機関なんだから、マナを守れないじゃない」
「うーん。僕も相当マナにイカれてる自覚があるけど、長谷川くんはそれ以上かもね」
「はぁ? 私、マナを守る気持ちはゴロ先生以上だけど、貴方みたいにイカれてはいませんから」
不機嫌そうに言い返しながらも、私もゴロ先生も顔から喜びが消せない。
「感謝してるよ、本当に。マナの居場所と平穏な生活を守ってくれてどうもありがとう。従兄として心から例を言うよ」
「別に。ただ、マナがいなくなったら私の高校生活、退屈で仕方ないじゃない。だからお礼なんかいらない。自分のためなんだから」
本当に。あの子がいない毎日なんて私には考えられない。かけがえが無い。それは、どんな無茶や危険も厭わないほどに。
研究機関はマナの現在の生活を変えさせないまま、観察を進めるそうだ。私も契約してる以上は腕輪を着け続け定期的に検診を受ける。それがお互い譲歩した形。多少は面倒くさいけれど、まあ魔女のはしくれとして魔法研究機関に尽力するのもいいだろう。あまり大きな機関を敵に回しておくのも心穏やかな毎日を過ごし難いし。
「それにしても、マナってば昨日さっそく小テストで赤点取ってたんだけど。研究機関も協力の見返りにちっとは頭ぐらい良くしてくれてもいいのにね」
「ははは、無茶言うなあ。それに、ちょっと抜けてる方がマナらしくて可愛いじゃないか」
「確かに。まあ、ちょっとどころじゃないけどね」
呑気に笑い合いながら歩く私とゴロ先生の頭の上には満開の桜が春風に揺れる。ヒラヒラと舞い散る花びらは、平穏な毎日を取り戻せた事をお祝いしてくれてるみたいだ。
「ララちゃーん。ゴロちゃーん」
寮の門前まで来た私たちを見つけて、玄関で待っていたマナがこちらへ駆けて来た。
「御用すんだの? 早くお花見行こー」
花見の約束が待ちきれなくて、浮かれて駆けて来るマナは案の定スッテンコロリンと転がった。
「あー! マナちゃん大丈夫―!?」
同じく、花見を心待ちにしていたシホが転んだマナを見て慌てて玄関から飛び出してきた。
「マナちゃん大丈夫うわあ!!」
「わあーシホちゃーん」
そしてお約束。マナにつまづいたシホまでスッテンコロリンして、馬鹿ふたりは絡まったままコロコロと転げていた。
「わーマナ! 大丈夫かー!」
それを慌てて追いかける従妹バカのゴロ先生。ふと寮の窓を見上げれば、2階の部屋からビビが「やれやれ」って目をして見ていた。
「ほんとーにもう、世話が焼けるなあ」
転がって目を回してるマナとシホに駆け寄って、私は溢れる幸せを噛みしめながら満面の笑みを零す。それを見てマナがいつものホワホワとした笑顔になった。
「あーみんなといると楽しいなー。お花見嬉しいなー。幸せだなー」
平和で大切な日常。また1年、ポンコツだけど大好きな友達とそんな楽しい日々が送れますように、と。私は青空に舞い踊る桜の花弁に願いを乗せた。
【完】




