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先生、クリスマスがやってきません!4

***


「あわー。あーあー。あわーー」


 12月25日の朝。私はマナのマヌケな驚きの声で目を覚ました。


「朝っぱらから何変な声あげてんの。うるさいなあ」


「ら、ララちゃん。大変、大変なの。昨日あきらめた靴下が出来上がってて、それでね、それで」


 昨夜、コッソリと仕上げてマナが寝た後にベッドの柱に掛けておいた靴下。どうやら目が覚めてそれに気付いたようで、マナは丸い目を皿のように真ん丸く見開いて驚いている。けれど。


「プレゼント入ってた! あたし昨日あきらめたのに! すごいーなんでだろー」


「えっ、本当にプレゼント入ってたの!?」


 さすがにプレゼントまでは私は知らない。まさか本当にサンタが来たとか? んな馬鹿な。ベッドの隅で丸くなっているビビに目をやると、同じ事を思ってたのか


「いや。昨夜は誰も部屋に侵入してきた様子は無かったぜ」


と、首を横に振った。


 プレゼントの謎に首を傾げ、はしゃいで包装を解いているマナの横からそっと靴下を取ってじっくり眺めて見た。すると。


「……魔法陣……?」


 昨日は作るのに夢中で気付かなかったけれど、よく見ればカラフルな毛糸と編み目が絶妙な模様を描いて魔法陣の形を成している。


「マナ。この毛糸ってどうしたの?」


「ここに入寮する時、他の荷物と一緒に実家から持ってきたんだよー」


 そっか。サンタの正体は遠く寮暮らしをする娘を思いやってるマナの家族ってワケね。それに気付いた私は試しに魔法陣の上に手をかざして見た。ほのかに何処か違う場所の気の流れを感じる。


 やっぱりこれは空間移動の魔法陣。きっと繋がってる場所はマナの実家なんだろう。上手いこと考えたものね、靴下が編みあがらなきゃ魔法陣が完成しない仕組みになってる。そうして出来上がった魔法陣のゲートにプレゼントを送ったって云うのが、この靴下のからくりらしい。


「わーやったー。たこやき機だー。これ欲しかったのー」


 ぶきっちょに包装をびりびりと破りながら中身を取り出したマナは、タコの絵が描いてある箱を掲げて目をキラキラさせている。


「た、たこやき機? なんでそんな物が欲しかったの?」


「大晦日、みんなでたこ焼きパーティーしよー。きっと楽しいよー」


 そんなマナの答えに、私は可笑しくなってプッと吹き出す。


「昨日クリスマスパーティーやったばっかりで、もう大晦日のパーティーって。あんたパーティーの事ばっか考えすぎ」


「だって、冬休みだし。ララちゃんとか、シホちゃんとか、みんなと遊ぶの大好きだし」


「分かった分かった。それよりほら、アンタ今日も補習でしょ? 早く支度しな」


「あいっ!」


 幸せそうなマナは机に丁寧にたこ焼き機を置くと、パタパタと支度を始めた。まったく、遊ぶ事ばっかり考えて。そんなんじゃ3学期も赤点取っちゃうわよ。


 けれど楽しそうなマナを見てると、なんだかこっちまで可笑しくなってくる。だから私は靴下作るの手伝ってやって良かったな、って思うんだ。


「いってきまーす」


 と補習に出かけて行ったマナを見送って、私はのんびりと椅子に腰を降ろした。机に飾ったクリスマスカード、壁やらドアやらに付けたクリスマスリース。楽しかったイブの名残たちを眺めながら、私も来年はマナにカードでも書こう、なんて思った。



【つづく】

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