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先生、クリスマスがやってきません!3

***


 PM5時30分。


「ただいまー」


 補習を終えたマナがパタパタと駆け足で部屋に飛び込んで来た。その声がやけに明るかったので、私は読んでいた雑誌から目を上げてドアの方を見やる。と。


「な、何その格好?」


 補習から帰ってきたはずのマナはとんでもなく浮かれポンチな格好をして満面の笑みを零していた。


 背中には大きなクマのヌイグルミを背負い、頭にはパーティーの三角帽と花冠をダブルで乗っけ、首からはカラフルなモールを下げている。とどめに手にはプレゼントの箱とブーツのお菓子。


「あ……あんた、補習に行って来たんだよね?」


「あのね、今日補習だからパーティーに行けないって言ったら、チェスリちゃん達がお昼休みに遊びに来てくれて、ミニパーティーしてくれたの」


 ……なるほどね。妖精どもやるじゃない。華やかな事が大好きで人懐っこい花の精たちの気の利いたサプライズ。ちょっと浮かれ過ぎな気もするけど、マナには相当嬉しかったはずだ。


「それでー、このヌイグルミはゴロちゃんが朝買ってくれたやつ。この貯金箱とブーツも」


 あー、あれから戻って来ないと思ってたらそのまんま補習に行ってたのか。いや、それはいいんだけど学校に買った物全部持っていくなっての。ゴロ先生に預かってもらうとかなかったのか。


 そんな事は構わずニコニコとしているマナは「よいしょ」とでっかいヌイグルミやら何やらを全てベッドの上に降ろすと、今度は慌てた様子で着替えてエプロンを着けだした。


「エプロン? どうしたの?」


「まだパーティーのお料理作ってる途中なんだって、寮母さんが。あたしも手伝ってくるね」


 そう言えばそんな事も言ってたね。良かったじゃん、約束に間に合って。


 マナはエプロンのリボンをうしろでキュッと結ぶと(縦結びになってたけど)「よーし」と腕まくりして張り切った様子で廊下へと飛び出していった。嬉しいんだろうな。数少ない自分の得意な事で誰かの役に立てるのが。


 それにしても。


 なんのかんのマナってば今日の予定全部こなしてるじゃないか、と私は感心しながらベッドの上に積まれたプレゼントやら三角帽やらを眺めた。いやまあ、こなしてくれたのは周囲の人だけどさ。


「良かったな。これで100点満点アイツの望んでたクリスマスになったじゃねえか」


 ベッドで寝ていると思ってたビビが、チラリとこちらを見ながら声を掛けてきた。


「まあね。あの子が落ち込んでると、何かこっちまで調子出なくなるし。多分みんな同じ気持ちなんでしょ」


 そう答えてから、私は咄嗟に隠してた編み棒と靴下を机の引き出しから取り出す。うーん、自分でも馬鹿みたいだと思うけどさ。でもしょーがない。今朝起きたら机の上に置かれてたクリスマスカードのお礼っていうか。


 『ララちゃんへ Mery Xmasu』って頭の悪い綴りのクリスマスカード。時間が無いはずなのに、ご丁寧に色紙やシールやらを使った渾身の手作りで。開くと中には笑っちゃうくらいヘタクソなサンタのイラストと『来年も仲良くして下さい マナより』って気の早いメッセージが書いてあった。


 馬鹿っぽいカードだな、と思いながらも嬉しくなっちゃったからさ。だからこれはほんのお礼。編みあがらなかったマナの靴下の残り4分の1。私が代わりに仕上げちゃっても、きっと友情に免じてサンタクロースも許してくれるでしょ。


「お前も随分とマナに甘くなったもんだな」


「クリスマスだからかな。アイツの浮かれてるのがうつったのかもね」


 細かく編み棒を動かしながら、私は小さな声で「……ジングルベール、ジングルベール♪」と口ずさんだ。

 

 


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