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先生、クリスマスがやってきません!2

***


 そうして案の定。


「あ゛~~あ゛~~補習だ~~」


 見事5教科すべて30点を下回ったマナには、冬休み補習フルコースのスケジュールが下された。もちろん24日も。


「補習、夕方には終わるんでしょ? 寮のパーティーは夜の7時からなんだから間に合うじゃない」


 ボトボトと大粒の涙を零して嘆くマナがあまりにも見ていられないので、そう慰めてやると


「あ゛~~午前中はゴロちゃんと買い物行ってプレゼント買ってもらう予定だった~~午後はチェスリちゃん達のパーティーにお呼ばれしてた~~夕方から寮でパーティーのご馳走作るお手伝いする約束だった~~あ゛ぁう~~」


浮かれてギッチギチにクリスマスの予定を詰め込んでいたマナは、それらが全てポシャった事を絶望的な泣き顔で嘆いた。自業自得とは言えさすがにちょっと気の毒。


「それに、まだプレゼント用の靴下が編みあがってない~~あ゛~~サンタさんにプレゼントもらえない~~」


「なんだそれ」


 どうやら高浜家には変な家訓があって、毎年プレゼントが入る大きさの靴下を自分で作らないと、サンタクロースからプレゼントをもらえないと教育されてきたらしい。く、くだらない。てか高校生にもなってサンタ信じてたのも驚きだけど。


 とにかく、マナにとって今年のクリスマスは何から何まで絶望的らしく、彼女は学校で補習を言い渡されてから寮に帰るまでずっとベソベソと泣き明かしていた。


 なお、馬鹿2号シホは2教科のみ赤点だったらしく、なんとか24日の補習は逃れていた。ヤツの食欲に由来する底力はすごいな。


 そんな状態で始まった冬休み。マナはションボリと肩を落としながら補習に通いつつ、それでも帰ってくるとセッセとクリスマスカードを書いたり靴下を編む事をやめなかった。往生際が悪いというか執念というか。


 けれどやっぱり。


「あー間に合わなかった~~」


 手先もポンコツのマナでは結局、クリスマスイブ当日を迎えても靴下は編みあがらなかった。って言うかさ、何貰うつもりだったんだか知らないけど、靴下でかいよ。だから余計間に合わなかったんじゃないの。


 昨夜は徹夜してセッセと編み棒を動かしていたけど、結局朝方寝てしまい間に合わなかった模様。あと4分の1ってところか。


 朝日の眩しさに、編み棒を握ったままうたた寝してたマナが起こされたのは朝の6時。補習は9時から始まるけど……マナのぶきっちょさじゃもう無理だろうな。


 本人もあきらめたのか、ションボリとした面持ちでへんちくりんな寝癖のついた髪をとかしていると


「マナ! マナ! メリークリスマス! さあプレゼントを買いに行くよ!!」


なんと、窓から寒風と共にホウキに乗ったストーカー男……もとい、ゴロ先生が突然飛び込んで来た。


「ゴロちゃん」


「ぎゃー!! 不法侵入者! 痴漢! 変態!」


「長谷川くん、静かに。寮母さんに見つかったらまた警察呼ばれちゃうから」


 いやいやいや、これは立派な警察案件だから。いくらマナの従兄で学校の保険医だとは言え、女子高生の寮の部屋に窓から侵入してくる男はどう考えても通報レベルの不審者だ。しかも朝っぱらから。


「仕方ないんだ、時間がないからね。マナは9時から補習だろう? その前にパッパとクリスマスプレゼントを買いに行かないと。さ、マナ。後ろに乗って」


「は、はぁ!? 今、朝の6時ですよ?」


「ドンキなら24時間やってるだろう。あそこなら玩具もお菓子もいっぱいあるし」

 

「やったードンキだー! あたし貯金箱が欲しい」


 そんなのでいいのか。……まあ、本人がいいならそれもアリだよね。なるほど。


 納得したような呆れたような苦笑いで、ホウキにふたり乗りしたマナとゴロ先生を見ていると


「早朝だろうがドンキだろうが、やっぱりクリスマスイブは今日しかないからね。マナにちゃんとクリスマスを楽しませてあげたいじゃないか」


そんな風にどこか照れたような笑いをこぼして、ゴロ先生は「じゃ」とホウキを鮮やかに発進させて行った。窓からだけど。その背中にしがみついていたマナのキラッキラに嬉しそうな顔を見たら、なんだかゴロ先生の言ったことはちょっと理解る気がした。


 ……マナ、クリスマスめちゃくちゃ楽しみにしてたんだもんね。


 ふたりが飛び立っていった窓を閉めると、私はベッドに置きっ放しになっていた編み掛けの靴下に目を止めた。


 


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