第七話 先生、クリスマスがやってきません!
第7話 先生、クリスマスがやってきません!
12月になってからマナがうるさい。
「ジングーベー。ジングーベー。すっずがー鳴るー」
朝から晩まで延々クリスマスソングを歌い続けている。しかも音痴。ルームメイトでクラスメイトの私としてはたまったモンじゃない。そろそろ騒音被害で訴えようかと思案している。
「マナ、うるさい」
「しかしララちゃん。もうすぐクリスマスですから」
なにが『しかし』だ。意味分からん。それがどうして騒音を撒き散らしていい理由になるのか説明してくれ。
「そーそー! もうすぐクリスマスだもんね! 仕方ないよね!」
私の疑問と苛立ちに追い討ちを掛ける様に、部屋に遊びに来ていたシホが満面の笑みで頷きつつ言った。何が仕方ないんだ。馬鹿にはクリスマスが近いと何をしても免罪符になる法律でもあるのか。
ドッカリとおやつ持参で部屋に居座ってるシホは何をしてるのかと言うと、マナと一緒にクリスマスリースを作っているのだ。どうやらクリスマスに浮かれまくってる者同士で浮かれたインテリアを作り、寮の至る所に飾ってやろうという計画らしい。
おかげでここ数日部屋にはリボンやら木の実やらがとっ散らかって迷惑このうえない。ちなみに騒音と散らかりの二重被害により、いつもはベッドで丸くなってるビビもさっさと窓の外へ逃げていった。キョウでさえも私が呼ばない限り極力部屋に近付きたがらない。パートナー達にまで迷惑を掛けるとは。馬鹿×クリスマスの破壊力は凄まじい。
「あー楽しみだなークリスマスー。あたし、いっぱいクリスマスカード書くんだ。寮のみんなでしょークラスのみんなでしょー先生でしょー家族でしょー。そうだ。精霊さんとヘーさんにも書こう」
「私なんかもうフライドチキン予約して来ちゃった! クリスマスバーレル8個!あー幸せ~!」
本当に驚くべき浮かれようだ。ここまでクリスマスを満喫出来るのもちょっと羨ましいよ。だってさ。
「あんた達、浮かれるのはいいんだけど勉強してるの? もうすぐ期末テストあるんだよ?」
現役高校生にとってフツーはさ、クリスマスに浮かれる前に乗り越えなくちゃいけない苦労があるでしょ。今すべきはジングルベル歌いながらリースを作ることじゃなくテスト勉強だよね?
問題集を解いていた手を止めてクルクルとシャープペンを回しながら尋ねると、マナとシホが阿呆面のまま固まった。
「…………しかし、クリスマスですから……」
「だからそれが何の免罪符になるんだっつーの。て言うかさ、期末で赤点取ったら間違いなく24日は補習だよね」
「ぎゃーーー!!!」
やっと現実に目が向いた馬鹿共が揃って絶叫を上げる。真っ青な顔をして。何これ面白い。
「べ、べべべべ勉強しなくては。クリスマスを迎えられない」
「そ、そうだねマナちゃん! 勉強しよう! 補習になったら大変! ケンタッキー並びにいけなくなる!」
慌ててワチャワチャとリースの片づけをすると、シホはバタバタと自分の部屋へ帰って行き、マナは大層焦った様子で机に向かい始めた。
けど、ちょっと意地悪だったかな。だって所詮ポンコツはポンコツ。今さらテスト勉強したところで点数が大して変わるはず無いんだもん。だったらいさぎよく0点覚悟でヘラヘラとジングルベル歌ってた方が良かったかも?




