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先生、ドラゴンが倒せません!5


 な、なにそれ! こんな展開あり!? 神は気紛れとは本当よく言ったもので、私達はどうやらとんでもないモノに目を掛けられてしまった様だ。殺されなかっただけマシだと思ってたのは甘かった。


「で、でも私達ただの高校生だし、帰らなくちゃみんな心配してるし……」


『ならばお前らの帰る場所を焼き払うまでだ』


 う、ウソでしょ!!? 私の必死な弁明が危うく神対人間の世界終局戦争を招いてしまいそうになって青ざめたその時。


「でも帰らなくっちゃハッピーターンもう無いよ」


 こんな状況でもヘラリとした顔でマナがそう普通に言い放った。呆気にとられていると、マナはトコトコと歩いてドラゴンの後ろ足の鉤爪を撫でだし「かたい」と笑っている。えっ。なんで今そんなにマイペースなの。


「また遊びに来るね。約束。あたし約束は守るよ」


 ニコニコとそう言うと、マナはドラゴンの鉤爪をスルスルと撫でながら「ゆーびきーりげーんまーん……」と歌い出した。


 ポカンとそれを見ていると、隣に立っていたシホもマナに駆け寄っていき


「私も約束! また来るねドラゴンさん! 今度はもーっといっぱいおやつ持ってくる! ゆーびきーりげんまん!」


と、マナと一緒になって約束を紡ぎ出した。


「……じゃ、じゃあ、私も」


 こうなったら私もしないワケにはいかない。おずおずと後ろ足に近付いて凶暴そうな爪に指切りをする。


 そうして再会の約束を誓った私達をドラゴンは琥珀の瞳で眺めると


『……神に誓いを紡ぐとはいい度胸だな……』


1度伏せた瞳に見た事も無い印の形を映し出して見せた。そして次の瞬間、それは眩い光と共にマナの手の甲へと移る。


『神の烙印だ。誓いを破った時、それはお前を焼き尽くす』

 

 げげげ!! なんかえらく大層なもの刻まれちゃったよ! 大丈夫かそれ!?


 けれど、そんな私の心配をよそにマナはニコニコしながら手の烙印をなでると


「約束のしるし。これで忘れないね」


なんて嬉しそうに笑っている。ここまで動じないとは。無知ってすごい。



 こうして。古代神にハッピーターンを食わせたり烙印を刻まれたりしながらもマナはゴキゲンな様子で「バイバーイ」とドラゴンに別れを告げる。シホまでも「今度はウニセン持って来るねー!」と笑顔で手を振っていた。


 そうして立ち去ろうとした私達だったけど、突然マナが「あ」と言ってトタトタとドラゴンの元へ戻っていった。なんだ?


「お名前。あたし、大きいひとのお名前聞いてない」


 爪先立ちしながら遥か上にある大きな顔に向けて一生懸命尋ねるマナに、ドラゴンは首をグ、グーっと下げて巨大な口を耳に近づけると


『・・・・・・』


マナにしか聞こえない声で、何かを告げた。


 ……まさか。もしかしてこれって。


「……へーさん?」


『それでいい。誰にも言うな』


 ……恐らく、信じられない事に、ドラゴンは自分の真名をマナに教えたらしい。教えられた本人はそれがどんな凄い事か分かっていないけれど。


 再会の烙印を刻まれたマナと、真名を教えたドラゴン。これはもう契約なんてものじゃない。下手したら婚姻の契りに等しい。


 うちの学校で、いや、葛飾全体の高校生の中でもきっとダントツにポンコツであろう一般人の女子高生が……世界を容易く焼き尽くせる古代神を掌握してしまったのだ。


 こんなの、誰かに知れたら大変な事になる。古代神との契約者は1200年前を最後に見つかっていないと云う。世界中を揺るがすニュースになると共に、マナは世界最高の危険人物として間違いなく国の機関に捕らえられてしまうだろう。


「し、しししししシホ。今見たこと絶対に誰にも言っちゃダメだからね……!!」


「え? 何が??」


 ああやっぱりシホも分かってない。やばい。あとで記憶消しておかないと。


「じゃーね、へーさん。バイバイ」


 ドラゴンに手を振ってテタテタとこちらへ掛け戻ってくるマナ。1回コケて恥ずかしそうに笑いながらようやく私たちの隣に並ぶ。ドラゴンは遠くからそれを眺めると、もたげてた首を再び地面に伏せて静かに目を閉じていた。


***


 その後。なんとか森を戻っていった私達は無事に先生達に発見され、幽界から帰還することが出来た。もちろん、行方不明の間、ドラゴンに遭遇しておやつタイムを過ごした事は秘密だ。


 帰りのバスで青白く光る烙印を不思議そうに眺めているマナに、私は魔法を掛けてそれを見えなくしてやった。


「隠しちゃうの?」


「他の人に見えるとやっかいだからね。約束はちゃんとアンタが覚えてるから大丈夫でしょ」


「うん。あたし忘れないよ。冬休みになったらお菓子持ってへーさんとこ行く。ララちゃんもシホちゃんも一緒に行こうね」


 本当に呑気だこと。いつもと変わらずポワポワと平和なオーラを出しているマナは、自分の身に起きている大変な事を分かっていない。


 ……どうしてドラゴンは真名をマナに教えたんだろうか。昔話では龍に嫁ぐ巫女の話とかもチラホラあるけど。まさかあのドラゴン、マナを嫁にする気じゃないでしょうね?


 疲れていたのか、ヨダレを垂らしてグーグー寝始めたマナのアホっぽい寝顔を見ながら私は思う。


…………マナがあのドラゴンに気に入られた功績って、もしかしてハッピーターンのおかげ……?


 そう考えると気に入られたのは亀田製菓のような気もするけど。まあいい。


 とりあえず、長期休みに幽界へおやつを持っていくのはこの3人の定期的なレジャーになりそうだなと考えながら、私はこちらへ持たれかかってクークー寝息をたてているマナの手の甲をそっと撫でた。



【つづく】



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