先生、ゴーレムが動きません!3
「ララちゃん。あたしお役にたってるかなー」
「……うーん」
店の奥でマナのタンコブに冷えピタを貼ってやりながら、私は質問の答えに詰まっていた。頑張ってはいると思うけど、時給に相応しい働きをしているかと言えば答えはノーだ。
お客さんが増え慌しくなってきた店内に目をくばせながら、私は今度はマナの擦り傷に絆創膏を貼ってやる。鼻の上やら頬やらに絆創膏をくっつけたマナはまるで漫画に出てくるワンパク小僧みたいでちょっと笑える。
忙しくなってしまった店内をマナに手伝わせるのはもう無理だな。だとすれば、コイツが出来そうなのは……。
数分後。伯母さんから借りた麦わら帽子をふたりでかぶって、私たちは店の裏手にある駐車場へとやってきた。手にはゴミ袋とトング。つまりはゴミ拾いだ。
「マナは西側からゴミ拾ってって。ちゃんと細かいのもね」
「あいっ!」
伯母さんが管理している海水客用の駐車場。30台分の車が止められる広いスペースには結構タバコの吸殻やら空き缶やらが落ちている。ここを綺麗にするにはなかなか時間が掛かりそうだし、それでいて作業自体はシンプルだ。マナに与えるにはうってつけの仕事だろう。
私に言われ西側の端っこへ走っていったマナは、早速意気揚々とゴミを拾い始める。トングに慣れていないせいか何回もゴミを掴み損なって落としては拾いを繰り返してるけど。まあ、そんぐらいいいでしょ。
とりあえず、ようやくマナでも出来そうな仕事をみつけられ、私も安心してゴミ拾いに取り掛かった。しかし、なんで貴重な15歳の夏休みに私は炎天下でゴミ拾いしてるんだろうか。いや。深く考えないようにしよう。
そうして20分ほど黙々とゴミを拾い続けていたとき。予想以上に多かった空き缶のゴミに、あっという間に袋がいっぱいになってしまった私は振り返ってマナに呼びかけた。
「マナー。私ちょっと新しいゴミ袋取って来るね」
…………あれ? 返事がない。っつか、マナの姿が見えない?
「マナ? どこ行った?」
まさかサボって逃げた? いやいや、あの馬鹿にそんな狡賢い事が思いつく知能なんて存在しないし。首を傾げながら西側のスペースへ歩いて行ってみると。
「マッ!? マナ!? 大丈夫!?」
車の陰で真っ赤な顔でのびてるマナ発見。……熱中症だ。
体力の無いヤツだとは知っていたけど、暑さにも弱かったとはね。
私は店の奥の休憩所で、マナを山盛りの氷で冷やしながらガックリと肩を落とした。幸いマナの熱中症はごく軽かったけれど、ポワポワと湯気が出そうな赤い顔はまだ治まらない。
「あんたさぁ、夏場に働くの向いてないよ」
「困りました」
困ったのはこっちだっての。本当に何をやらせても劣等生。やる気だけはあるけど体力すら着いて行かないなんて。シルバー人材の方がまだ10倍は労働力になる。
「もう今日はあきらめて帰ろう。今度はもっとラクなバイト探してあげるから」
「そんな」
見やった店の中はお客さんでごった返し、従業員がみな慌しく働いている。あきらめたくないマナの気持ちも分かるけど、これ以上ここにいても役に立つどころか迷惑になるだけだ。
「せっかくララちゃんに紹介してもらったのに。いっしょに働いてお役にたちたかった」
ゆでだこみたいな赤い顔に氷嚢を乗っけながらマナが潤んだ丸い目で言う。そんな悲しそうに言うなっての。私だって何とかしてやりたいけどさ。
「アンタはもう充分頑張ったから。ね。海で少し遊んで帰ろう」
わざわざ千葉まで来たんだし、せめて少し遊ばせてやればマナの気も晴れるだろう。波打ち際で砂の城でも作って満足させて帰ろう。
「…………砂の城?」
ふと、自分の中に浮かんだ言葉の中から、私はひとつの提案を見つける。
「そうだ! マナ、あんた砂遊びくらいなら出来るわよね?」
突然何かを思いついた私に、マナは驚いてしばらくポカンとしていたけれど
「砂遊び得意。ツヤツヤの泥のおだんご作れるよー」
と、ヘニャ~とした笑顔を浮かべて大きく頷いた。よし!




