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先生、ゴーレムが動きません!2

***


 夏休み3日目。私とマナは千葉県の海へとやって来ていた。


「海ー! すごいーあーひろいー」


 バスから降り一面に広がる海を見ながら、マナはボキャブラリーの欠片も無い感嘆の声を上げている。さすが現国32点。


 今にも海へ向かって走り出しそうなマナの腕を掴みながら、私は「ほら、こっちだよ」と浜辺沿いの歩道を歩き出した。


 結局。どこで働かせてもマナのポンコツっぷりでは即刻クビだろうと判断した私は、仕方なく身内に頼ることにした。


 千葉県某海水浴場で海の家を経営している伯母にその事を話すと、彼女は


「シーズンは人手が幾らあっても足りないからね、助かるわ。え? ポンコツ? 大丈夫大丈夫、子供でも出来る簡単な仕事だから」


と頼もしく笑ってくれた。ありがたく思いつつも、だがしかし連れて行くヤツは子供以下のポンコツですよ、とまでは言い出せなかったけど。


 とまあ、そんなワケで早速始まったアルバイト初日。私とマナは伯母さんと他の従業員に挨拶をすると早速Tシャツとショートパンツに着替えエプロンを装着する。


「張り切ります。頑張ります」


 鼻息荒く労働意欲満々のマナ。絶対そのやる気、裏目に出るからあんまり張り切らない方がいいと思うけど。そんな私の心配を知る由も無く、最初に彼女に与えられた仕事は。


「じゃあマナちゃんは表でジュース売ってて」


 とってもシンプルな売り子業務。建物の前に置かれたテーブルでクーラーボックスに入れたペットボトルのドリンクを売るだけの仕事だ。値段も一律200円だし、どう考えても難しくは無い。


 まあ、これなら大丈夫かな。まだ混む時間帯でもないし。張り切って表のテーブル前に立ったマナを横目で心配しつつも、私は自分に与えられた店内の開店準備作業を進める事にした。


 ところが15分後。


「すみませーん、コーラくださーい」


「200円です」


「ね、100円にまけてよ」


「えーと」


「いいよね?」


「えーとえーと」


「あはは、ウソだよ。キミ可愛いね。アルバイト? 仕事さぼって俺達と遊ばない?」


「えーとえーとえーと」


「ね、ほら。行こ行こ」


「えーとえーとえーとえーと」


 あーもー! ナンパされてるし! そんぐらいかわせっての! ってマナには無理か。


「はいコーラ200円です! お買い上げありがとうございました!」


 私はテーブルまで掛けて行くとナンパ男の手にコーラを押し付け、いつもの半笑いで困りきっているマナの手を引き店の中へ連れ戻す。


「伯母さんゴメン、この子ナンパかわせないから表は無理だわ」


 早速業務につまづいたマナに伯母さんは「あらあら」と苦笑いして首を傾げると


「じゃあ、物置から資材運んでもらおうかな」


と、今度は裏方の作業を与えてくれた。



「わりばし2袋、白いトレー1袋、パックS1袋、ビニール袋各サイズ3袋……」


 資材の詰め込まれた物置に入って、マナは渡されたメモを読み上げる。ひとりでは持ちきれないだろうと云う事で、今度は私も一緒だ。


「私はビニール袋集めちゃうから、マナはパックとか集めて。ほら、そっちの上の方にあるでしょ」


 キョロキョロとしているマナに指示を出し、こちらは目当てのビニール袋を見つけてはポンポンと持ち運びようの籠に入れていく。


 さっきの売り子に続いて、これまた実に簡単な作業。いや、作業と呼ぶことすらおこがましい。こんなの雑用だ。なのにこのポンコツときたら。


「わーー」


 ドサドサと云う音と共に間の抜けた悲鳴が聞こえて振り返ってみれば。あーあ。棚の上から落ちてきた資材に埋もれているマナの姿が。


「ったくもう。大丈夫?」


 パックやら紙コップやらの資材の山からマナを発掘して助け出してやる。本当に世話がやけるな。「ありがとー」と言って出てきたマナは、よりによって頭にトレーの束が激突したらしく大きなコブを作っていた。


「あらまあ。そんなケガするような仕事だったかしら」


 資材を入れた籠を抱えて戻ってきたマナにタンコブと擦り傷が出来ているのを見て、伯母さんは驚きの表情を浮かべていた。

 

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