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先生、精霊が呼べません!8

***



「火遊びするとオネショする……」


「そんなの迷信よ。でもアンタは念のため寝る前にトイレ行きなね。高校生にもなってオネショとか前代未聞だから」


 アータルの残した一言に緊迫の色を見せるマナの顔を隣で眺めながら、私は少しぬるくなった湯船に肩まで浸かった。



 PM8時45分。寮の入浴許可時間終了まであと15分になってから、私はいつものようにひとりで風呂にやってきた。もちろん人が少ない時間を狙うためだ。


 ほとんど無人の更衣室を見てもう誰もいないかと胸を撫で下ろしたものの、浴場に入るとマナとシホの馬鹿コンビがまだダラダラと身体を洗っていた。


「痒いところ無いですかー?」


「おなか」


 何故だかシホにシャンプーしてもらいながら、マナがアホな事を言っている。呆れた顔で掛け湯をしてる私に気付くと、シホは


「美容院ごっこだよ!」


と笑って、マナにシャンプーをジャブジャブかけていた。どうでもいいけど美容師さんはお腹は掻いてくれないよ。


 ワケ分からん遊びをしてるふたりは放っといて湯船に浸かると、やがて大量の泡を流し終えたマナとシホが隣に入ってきた。寄るな。


「マナちゃん。湯船に浸かっていっぱい汗掻けばオネショ出なくなるんじゃない?」


「シホちゃん頭いい。じゃああと10000秒数えてから出る」


「水分枯渇する前に湯辺りで死ぬよ」


 マナとシホ、仲がいいのはいいんだけど。過ぎた脳筋のシホと何でも鵜呑みにするマナがいっしょに居るのはなかなかどうして危険な気がする。


 そんな心配を私がしてやってると言うのに。


「お風呂出たら牛乳飲みたい……」


「飲んだらまた湯船に浸かりに来れば?」


「出たらまた飲みたくなっちゃう」


「エンドレスだ」


 やっぱりこのふたりは延々とアホな思考を繰り広げてる。


「牛乳は水分少ないからちょっとぐらい平気よ。あれ主成分たんぱく質だからね」


 あまりに馬鹿の会話に埒が明かないのでテキトーな事を言ってやったら、マナとシホは「ほへー」と目を丸くして感心していた。けれど、その発言がいらん話題を呼び起こしてしまう。


「たんぱく質かー! だから牛乳飲むと胸が大きくなるんだね!」


 やめろ! なんでそこで胸の話題になるんだよ!


「そっかー。牛乳はえらいね。歯も丈夫になるし胸も大きくなるね」


 嫌な話になったふたりから、気付かれないようにジリジリと離れていく、が。


「あっ! ごめんララちゃん! 胸の話はダメだよね!」


 逃げて行く私に気付いたシホが大変に余計なフォローを口走った。


「そーだ。ララちゃんの前で胸のお話はしちゃいけないんだった」


「マナちゃん! 胸の話はもうやめよう!」


「うん、シホちゃん。ブラジャーの話もしちゃダメだよ」


「いい加減にしろー!! アンタら私を馬鹿にしてるのかー!!」


 馬鹿のフォローと言うのはどうしてこんなに腹が立つのだろう。再びコンプレックスを直撃された私は、今度は浴槽にリヴァイアサンを召喚してしまった。こんなバスクリンの入ったぬるい湯に呼び出してしまって水竜には悪いことをした。


「うわー。また竜が出たー」


「あー! オケがみんな飲まれちゃったー!」


 こうして浴場をメチャクチャにしてしまった私は、またもやお説教と反省文、それに3時間の正座をさせられる羽目になったのだった。


 もう! プールも風呂も大っ嫌いだ!!




【つづく】

 

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