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先生、精霊が呼べません!7

「ララちゃん、すごいねーすごいねー。精霊さんて便利だねー」


 ようやくヘビ花火に火を着けられたマナが嬉しそうに目を細め、ニョロニョロと伸びていく灰を眺めている。いつ見ても気持ち悪いなヘビ花火は。


「きゃっほー! ロケット花火十連発―!!」


 庭の中央ではシホが大はしゃぎだ。やけにシホの花火の火力がいいのはロキのおかげか? あ。考えてみたらロキに着火役してもらえば良かったのか。


 わざわざアータル呼んで悪かったな、と思いながら振り返ってみれば、ちょうどマナが次のヘビ花火に火をもらってる所だった。


「手に持ったままじゃ危ないでごわすよ。火を着けてあげるから下に置くでごわす」


「はーい」


 ……あれ? 普通に喋れてる? 女の子が半径1メートル以内に近付くと緊張してまともに喋れなくなるアータルが、マナと普通に会話している。


 地面をニョロニョロと這いつくばるヘビ花火にご満悦のマナの横を通り過ぎ、アータルに話しかけた。


「アータル。今、マナと普通に喋ってなかった? もしかして女子寮に呼ばれたショックで女性恐怖症治った?」


「あぅお! ララ殿! いやいや、全然治ってないでごわす! だからあんまり近付かないで下され!」


 なんだ、違うのか。契約者である私に対してさえこれだ。じゃあなんでさっきはマナと? 不思議に思いながら少し下がってやると、落ち着きを取り戻したアータルは咳払いをしてから話し出した。


「そちらの娘さんは不思議とあんまり緊張しないでごわすよ。いや、別に色気がないとか女っぽくないとか、そう云う意味じゃないでごわす。うーん、拙も不思議でごわすわ」


 ……?? どう云う事なんだろう? マナって実は女じゃないとか? いやいや、3ヶ月も同じ部屋で暮らしてるんだからそれはない。いっちょまえに胸だって育ってるし。


「アホの子だからじゃない? 女って言うか犬っぽいとか」


「拙はメス犬もダメでごわすよ」


「マナの女子力が犬以下って事か?」


 なんとも不思議な現象にアータルとふたりで首を捻っていると、噂の張本人がテコテコとやって来て「もう1個火着けてー」とヘビ花火を差し出した。またヘビ花火かよ。もっと派手なのもやんなさいよ。


 アータルはニコニコと頷き、気前良くそれに火を着ける。なんだか親戚のおっちゃんと子供みたいだ。


「精霊さんはみんな優しいねー。あたし今日、チェスリちゃんともお友達になったんだよ」


「ほー、チェスリと。花の精でごわすか。花の娘っ子たちはフレンドリーでごわすからな」


「プリも撮ったの」


「プリとはなんでごわす?」


「プリクラー。仲良しのしるしに撮る写真だよ」


「それは良かでごわすな」


「火の精霊さんも今度一緒に撮ろう?」


「拙が一緒だと写真が燃えてしまうでごわすよ」


 ヘビ花火を眺めるマナと一緒にしゃがみこんで中睦まじく喋ってるアータルは、もはやどう見ても火ダルマな親戚のおじさんだ。シュールな光景。


 やがて、あれだけ大量にあった花火も寮生たちが盛り上がって楽しんだおかげでキレイに無くなった。


「それじゃあ拙はそろそろ」


 マナと一緒にヘビ花火を7個も楽しんだアータルが立ち上がり、魔法陣へ向かおうとすると


「精霊さん帰っちゃうの? 泊まって行けばいいのに。明日いっしょに朝ごはん食べよう?」


まるっきり親戚のおじさんに縋りつくような子供みたいな表情でマナが駄々をこね出した。私の目にはこのふたりはもう優しい叔父と姪っ子にしか見えていない。


「マナ殿、気持ちは嬉しいでごわすが、役目が済んだら帰るのが召喚の契約でごわす。それに女子寮になど泊まったら拙は心臓麻痺を起こしてオダブツでごわすよ」


 精霊に心臓麻痺があるのか。初耳だ。そんな私の馬鹿らしい感心をよそに、マナの目はウルウルとしだしてる。この短時間でずいぶんアータルに懐いたな。


「また会えるでごわすよ。何か困った事があったら、ララ殿に頼んで拙を呼んでくだされ」


「うん。今度はいっしょにごはんも食べようね」


「分かった。約束でごわす」


 火ダルマのアータルは指先だけ炎を消し温度をさげると、半泣きのマナと指切りをしていた。その光景に私はもちろん、その場にいた寮生たちも驚いて固まる。


 精霊と指きりするヤツなんて初めて見た。しかも女恐怖症のアータルと。


 周囲の驚きの視線を気にもせず、ほのぼのとした約束をした後アータルは


「それではララ殿、失敬。マナ殿、オネショしないように気をつけるでごわすよ」


挨拶とおせっかいを残し、火の柱を一瞬燃え上がらせてから魔法陣へと消えていった。


 


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