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先生、ネコがしゃべりません!9

***


 今日1日で一体何年分の寿命が縮んだだろうか。


 たかが学校のレク大会のはずが何度も命の危機に直面し、私は心身ともに疲れ果て帰りのバスでグッタリとしていた。マナとシホもよっぽど疲れているんだろう、涎を垂らして眠りこけてる。私も激しい疲労からの睡魔に襲われウトウトとしかかった時。


「皆さん、お疲れ様でした。それではここで本日の最優秀チームを発表したいと思います」


 突如、バスの車内マイクを通して教師からの通達が始まった。最優秀チーム?そんなのあったのか。馬鹿達の面倒見るのに必死で気にしてなかったな。てか、眠いから小さい声でやって欲しい……

 眠気の充満した頭でそんな事を思いながら再び眠り落ちようとすると。


「長谷川ララ、如月シホ、高浜マナ、それから各パートナーのキョウ、ロキ、ビビ。おめでとう、あなた達が第76回魔法学科レクリエーション大会の最優秀チームです」


 まさか、いきなり名前を呼ばれて驚きのあまり私はバチッと目を覚ます。それはふたりも同じだったようで、マナは「は、はひっ!?」と思い切り寝ぼけながら勢い良く立ち上がり、そのままカーブを曲がった揺れに翻弄されコロリと床にすっ転んだ。


 コロコロと転がってきたマナを両手で優しく受け留めると、マイクを持っていたキャサリン先生は


「皆さんの様子は全て水晶を通し見ていました。中でも高浜さん達のチームはアンバランスな能力を持ちながらも、それぞれが自分に出来る役割を発揮し協力しあって困難を乗り越えてきましたね。タイムはドベですし特例のワープも使いましたが、本来の目的である仲間やパートナーとの絆を深め知恵を駆使し魔法力を発揮できたと云う点では満点だと思います。よく頑張りましたね、おめでとう」


 暖かな笑顔でそう述べ、最後に賞賛と労いの拍手を贈ってくれた。


 その拍手に同調し、バスの中の生徒達も大きな拍手を贈ってくれる。私とマナとシホ、それにパートナー達もただただ驚いてポカンとしてしまった。けれど。


「うわ、うわ。やったねララちゃんシホちゃん。さいしゅーゆーしょーだって」


 マナがキラキラした瞳で私達の席に駆け戻りながら言う。噛みまくってるけど。でも、その嬉しそうな様子にようやく私やシホにも最優秀賞の実感が込み上がってきた。


「やった!! やったね! 頑張った甲斐があったね!」


「はは、あはははは。あんなメチャクチャだったのに最優秀だなんて。いいのかな。なんか可笑しい。あははは」


 落とし穴おっこちたりキャラメルで死に掛けたり。川に流されたり挙句の果てにはクマに襲われたりもしたけど。でもなんとかこうして無事で、それが最優秀賞になっちゃったなんて。なんだか可笑しくなっちゃって笑いが止まらない。


「さすがシホの姉御でやんすー! 俺っちは姉御みたいな優秀な魔女にお仕えする事が出来て幸せでやんすー!」


「同感だな。いい魔女があってこそのパートナーだ。俺はララが主人である事を誇らしく思うよ」


 パートナー達までなんだか嬉しそうに声を弾ませる。ただし、1名を除いて。


「ビビさん、良かったね。さいすーゆーしょーだって」


 マナの黒猫だけは椅子の隅っこで丸くなったまま反応を示さない。まったく、へそ曲がりな子だね。


 けれど、フワフワとマナが頭を撫でてやるとビビはのっそり起き上がり、座ってるマナの膝の上へと移動してきた。


「……ここの椅子は寝心地わりいな。ポンコツの膝の上の方がマシだぜ」


 誰も聞いてないのにそんな事をボソリと呟く黒猫。なんだ、可愛い所あるじゃん、素直じゃないけど。膝の上で丸くなったビビに目を細め、小さな背中を撫でてやるマナ。一時はどうなるかと思ったけど、このふたり大丈夫かもね。


 どこか安堵したけれど、最後にひとつだけ私はおせっかいを焼いてやる。


「マナ、指出してごらん」


「??」


 不思議そうな顔をして差し出してきたマナの小指に、私は細く編みこんだ紐を巻きつける。バスに乗ってからマナとビビの毛を拝借して魔法を籠めて紐と編みこんだもの。それをマナの小指に巻きつけて小さく呪文を唱えた。


「ララちゃん、なあに? これ?」


 マジマジと小指を見てるマナを見て、それに気付いたビビが私に迷惑そうな顔を向ける。


「おい、余計な事すんなよ」


「!!!! ビビさんが喋った!!」


 私に文句を垂れたビビの声を聞いて、マナが全身の毛が逆立ちそうなほど驚いている。


「アンタとビビの通信機みたいなもの。あんまり丈夫なモンじゃないから早く自力でビビと喋れるようになんなさいよ」


 そう説明してやると、マナは目に涙の膜を貼ったまま大きく見開いてハワハワと感激していた。そして、膝のビビを力いっぱい抱きしめて


「ビビさん! 嬉しい、これでビビさんとお話できるよ! ララちゃんどうもありがとう!!」


嫌がるビビにグリグリと頬ずりをした。あーあー。そういう事するからビビに舐められるんだってば。


 まあでも。会話が出来る様になればコイツらが契約を結ぶ日も近いでしょ。と思った私の勘は、その3日後に当たる事になる。



 無事……とは言い難いけど、ようやく正式なパートナーになったマナとビビ。ビビは契約の理由を


「主人とは認めないけど、アイツの抱っこは心地いいからな。抱っこの独占契約だ」


なんてツンデレ感ハンパなく言ってたけれど。本当、素直じゃないね。でも。


「それから。アイツは超ド級のポンコツだけど……間違いなく“魔女”だ。ララも見ただろう、クマと対峙した時の様子を」


 ビビがちょっと神妙な顔をして言ったその台詞には私も驚かされた。


「あれってやっぱり魔法なの?」


 私の質問にビビは「ああ」としか答えなかったけど、黒猫には何か分かってるのかも知れない。


 クマと対峙して動きを止めるって、そんな魔法聞いた事も無いから半信半疑ではあるけど。


 とにもかくにも。よく分からない理由でパートナーを魅了したマナは今日も相変わらず私の目には劣等性に映る。


「ララちゃーん。薬草の煎じ方おしえてー」


「それ昨日も教えたよね? アンタ本っ当物覚え悪いな」


「都コンブあげます」


 しょーもないと思いつつも、私とマナ、それに個性的な仲間達のこんな日常はまだまだ続くのだった。




【つづく】

 


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