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先生、ネコがしゃべりません!7

***


 トラップ解除と云う特別待遇をしてもらったのだから第2チェックポイントまでは余裕の筈だった。筈なんだけどな。


「ララちゃん、あそこにお花が咲いてるよ。見に行こう」


「行かない」


「ララちゃん、今リスがいた気がする。追いかけよう」


「行かない」


 3歩進むごとに何かに気を惹かれるマナは繋がれてる手を駄々っ子のように引っぱる。いちいち鬱陶しいし油断できない。手を離した瞬間こやつは絶対いなくなる。ただ山道を歩いてるだけなのにこんなに気が抜けないって何なんだ。


 一方のシホは微妙に空腹なせいか大人しいので助かっている。そうか、シホには餌を与え過ぎなければいいのか、などと納得して油断し手を離していた私が馬鹿だった。


「あ、川だ! お魚獲れるかな!」


 茂みの影に小さな川を見つけたシホは、食料を求めて一目散に走って行ってしまった。


「コラ! シホ待て!」


「あーあたしも行くー」


 シホに気を取られた一瞬の隙に、マナはスルリと私の手をすり抜け川に向かって走り出した。うわ!これ絶対イヤな予感する!


「シホちゃーん、あたしもお魚獲るー」


「あ、マナちゃん危ない!」


 案の定。ノタノタと走って行ったマナは水際でバランスを崩すとジャッボーンと云う音と共に川に落っこちてしまった。もう本当にヤダこの子。


「うわーーあーーあーぁーー」


「わー!! マナちゃんが!!」


 目の前でみるみる流されていくマナ。ヤバいヤバい。マナ本日2度めの命の危機。だから新聞に載りたくないってば。


 私は超スピードで呪文の詠唱をすると


「出て来いウンディーネ!! あの流されてる馬鹿を助けろ!」


契約を結んでいる水の精霊を召喚した。


 途端に川の水が大きく膨れ上がり、目の前でそれは人の形を成していく。


「ララちゃん久しぶり~。最近呼んでくれなくって寂しかったわぁ」


「挨拶はいいから! 早くあの流されてるのを助けろ!」


「なによ~ツレない態度ね。まあそんなトゲトゲしい所がララちゃんの魅力なんだけど」


「いいから早くしろこのオカマ! あーマナがマナが!!」


 一見麗しく見えてヒゲの生えてるウンディーネは「オカマって言わないでよ!」と喚いたあと、下流に向かってわずかに視線を流した。途端に川の流れがピタリと止まり、巻き上がった水の渦が流されていたマナをペッと地面に吐き出す。


「何よこのちんちくりん。ララちゃんの友達? 変なもの川に流さないでちょうだい」


「流したわけじゃない、勝手に流れて行ったのよ。……でもありがとう」


 マナは目を回していたもののどうやら無事なようだ。息がある事を確かめてウンディーネに礼を言うと、オカマの頬がみるみる赤く染まった。水のくせに。


「やだっ!ララちゃんが『ありがとう』だって!私ララちゃんに素直にお礼言われたの初めて~!」


 うるさいなこのオカマは。精霊なんだからもっと神秘的であるべきじゃないの。


「あーん、これだからツンデレ魔女に尽くすのってやめらんないわぁ」


「いいからアンタもう帰りなさいよ。ご苦労様」


 グネグネと身体を捩って嬉しがる水の精霊をさっさと幽界に送り返し、まだ目を覚まさないマナの様子を窺う。しかしよく気絶するなコイツは。


 けど、何回気絶してもマナの腕にはしっかりビビが抱かれている。決して離そうとはしない。まあ今回に限っては離した方が良かったのかも知れないけど。


「……あやうく俺まで死ぬところだったぜ」


 びしょびしょのビビはマナの腕を抜け出すとブルブルっと身体を振って水を払った。その水滴をピチピチと顔に受けたマナがようやく目を覚ます。良かった、このまま起きなかったら人口呼吸しなくちゃかとヒヤヒヤしたわ。


「うーん。あれ、あたし助かった?」


「マナちゃん! 良かったー!! ララちゃんが水の精霊を呼んで助けてくれたんだよ!」


「すごい! ララちゃんありがとうございます」


 湿って垂れ下がった結んだ前髪をペッチャリさせて、マナは私に深々と頭を下げた。しかしコイツ全身ずぶ濡れだな、どうしよう。


「キョウ、悪いんだけどマントになってもらえる?」


 こんなところに着替えもないし。とりあえず私はマナの服が乾くまでマントを羽織らせておくことにした。


 魔女のパートナーは何時どんな時でも側にいられるように物質に変形出来る魔法を持っている。マントとか帽子とか襟巻きとか。キョウには申し訳ないけど、マナをビショビショのままでもカボパン一丁の状態でもいさせるワケにはいかないので仕方ない。


 キョウも気乗りはしないけれど私の命令ならば仕方ないと溜息を吐き、変形しようと羽を広げた時だった。


「……待て。俺がやってやる。あんたらには世話になりっ放しだからな」


 ビビがマナの肩に飛び乗ってそう言った。


「えっ! ビビさんが!?」


「俺だけ役立たずってのもカッコわりーだろが」


 驚くシホにビビはやっぱり口が悪いながらもそう返して、マナの首にクルリと巻きついた。ビビの声が分からないマナは半笑いのままポカンとしてる。そして「ニャー」と一鳴きするとビビはフワッと大きな黒いマントに変形した。


「うわぁ! ビビさんがマントになったよ!?」


 突然自分をフカフカのマントが覆った事に、マナは目を真ん丸くして驚いた。そして私も正直ちょっと驚く。黒猫の変形はせいぜい襟巻きとか帽子なんだけど、体型的に。マントになれるって、ビビは相当高い魔法力を持っているか、もしくはかなり無理してる。


「ほらマナ。せっかくビビがマントになってくれてるんだから、濡れた服脱いじゃいな。風邪ひくよ」


「うん。パンツも脱いだ方がいい?」


「それは穿いとけ」


 こうして、毛皮のマントの下は下着姿と云う変態みたいな格好のマナと、マナの濡れたジャージを棒に結んで旗みたいに担いでるシホを連れ、私は再び第2チェックポイントを目指して歩いた。

 

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