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13話


 美雪とあの祠で一晩過ごしたあと帰宅するころには結構日が昇っていた、スマホの電池はとっくに切れていたし腕時計は転んだ拍子にぶつけてしまっていたようで動かなくなっていたので時間の確認が出来なかったのだ、太陽の位置的には恐らく9時から10時くらいではないだろうか



 家の戸をガラガラと開けると美夜がドタドタと音を立てて駆けてくる

もしかして寝てなかったのかな、美夜の目の下には深い隈が刻まれていて、目の端には泣いたような痕が見える・・・かなり心配させてしまったみたいだ・・・


 「にーさまっ!どうしたんですかその格好!?」

「あぁ、ただいま・・・」


 それだけ言い終わると僕はぶっ倒れた・・・、よく考えれば当たり前だ、馬鹿みたいに雨に濡れている状態で一晩中過ごせばそんなの病気になるに決まっている・・・


 「おまえさまっ!」

「にーさまっ!」


 あぁ、凄い慌てられてしまっている・・・美夜には心配かけちゃったしなぁ、ちゃんと謝らないと・・・






 「・・・・・・うぅ・・・げほっ、ずずっ」


 目が覚めると布団に寝かされていた・・・服も取り替えられているみたいだ・・・着替えもさせてしまったみたいだな・・・、それに体中が不調を訴えている・・・

完全に風邪引いたかなこれは、こんなに体調が悪いのは子供のとき以来な気がする・・・

頭と体はガンガン痛むし鼻水も出てる、咽喉もガラガラになってるし、これはやらかしたなぁ


「にーさま?起きたみたいですね」

「あぁ・・・美夜・・・かッ!?」


 あれ?おかしいなぁ、美夜の顔は笑顔なのになんだかとっても怖い・・・


 「あれ、もしかして怒ってますか?」

「怒ってると思ってるんですか?」

「あ、いえ、すぐに帰ってくるとかいいながら昼まで帰ってこなかったし、帰ってきて早々倒れたりして心配かけちゃったかなと思いまして・・・」

「そうですね、帰れないのがわかっていたならせめて連絡くらいして欲しかったです」

「大変申し訳ない・・・」

「まぁ、怒ってはいますけど、本当にっ心配っしたんっですからね?・・・うぅっ」


 それだけいうと美夜は寝ている僕に抱きつくようにして泣き始めてしまった・・・


「帰ってぐるって・・・言っだのにっ! すぐ帰って来るっで! にーさまっ、今度はっ!本当に戻ってこないんじゃないかって!」


 あー、これはまずかったな、朝起きて傍にいなかっただけであんなに泣いてしまうほどだったんだ、それ以降は殆どくっついて過ごしていたから忘れてしまっていたが・・・元は寂しがりやだもんな・・・、せめて連絡くらいするべきだった・・・


 「ごめん、心配かけちゃったね」


 体の痛みを無視して美夜の背中を撫でる、泣いている美夜の背中は震えていて、その弱弱しさは体の痛みや調子の悪さなんかより余程僕を打ちのめした・・・


 美夜はひとしきり泣くと疲れてしまったのかそのまま寝てしまった・・・

そういえば美雪はどうしただろうか・・・美夜の向こう側に目を向けるとそこには同じように布団に寝かせられている美雪の姿が見える、どうやらあのあと美雪も仲良く風邪を引いたようだ・・・顔が赤く、頭には濡れたタオルがかけられている・・・


 ふたりの姿をみて安心した途端、僕はまた、急な眠気に襲われて意識を手放した・・・






 気がつくと僕は真っ白な空間に立っていた、意識を失う前に感じていた不調や体の痛さは無くなっており、あまり現実感を感じない・・・どこだここ、夢か?


 辺りを見回してみると3つほど目に付くものがある


 ひとつは蛇、そこには真っ白な蛇が鎮座している、蛇と僕は金色に光る糸のようなもので繋がっており、なんとなく美雪と僕の事を表しているように感じる


 ひとつは猫、そこには真っ黒な猫がこちらをじっと見据えている、恐らく美夜だと思われるそれと僕とは美雪と同じく金色の糸で繋がっている


 最後のひとつは・・・誰だ? そこにはなんとなく僕に似ているような気がする着流し姿の女?が立っている、腰には二振りの刀を差していて、髪は真っ白く、目が赤い、いわゆるアルビノというのだろうか、こんな姿の人には生まれてこの方あったことはないはずなのだが・・・なんとなく懐かしいような気持ちを感じる、僕と彼女はまるで血液を連想させるような赤黒く脈動する糸で繋がっており、懐かしい気持ちだけでなく、少なくない不安を感じる・・・


 着流しの女は僕の視線に気づくとこちらをみて微笑む


「ようやく、逢えましたね」

「え?」


「今はまだですが・・・必ずまた逢いに行きます、今度はここではなく、あなたの世界で」

「あなたは・・・誰?」


 視界が白く染まり始める・・・



 「黒臣、私の名前は―― 」




 目が覚めるとふたりはまだ眠っているようだ、寝る前に感じていた不調が嘘のように消えていることが先程の夢?がただの夢ではないことを物語っているような気がした

僕は布団に美夜を寝かせると時間を確認する・・・少し遅いが夕食をつくるか・・・キッチンに向かうと夕食の準備を始める、美夜はともかく美雪はおかゆのほうがいいだろうな・・・




 「桜・・・か・・・」




 僕の呟きは誰の耳に入ることもなく消えていった・・・


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