謎の白いあんちくしょう
「眠いんじゃぁぁぁ」
久しぶりの休日、目が覚めたもののもう昼前だった。いくら休みだからと言ってここから二度寝をすれば1日すべてが睡眠で潰れてしまう。さすがにそれははばかられるので布団からのっそりと起き上がり、服を着替える。
休みになる度にいつも思うが、毎日残業5時間もさせるなんて、なんてブラック企業なんだうちの会社は。
今日は久しぶりの休み。なんたって28連勤の後の2連休だ。そもそも28連勤+一日5時間残業させるなんて普通に考えてありえないと思う。ワタ○かよ。
「とはいえさすがにカップめんとか無くなってきてるし、いろいろ買い出しに行くかな。」
何日も連勤していたせいで家の中の食料事情はかなりまずいことになっている。そろそろカップめんのストックも切れるし、久しぶりに料理もしたい。あとはこの前TheyTubeで見たクラックビー玉も作ってみたい。
さっそく買い物用の大きなリュックサックを引っ張り出し近くのスーパーへ向かう
◇
「くっそ重い。買い過ぎた・・・」
10個ほどのカップめんとハムなんかの保存食、牛乳やペットボトルのお茶、クラックビー玉用のビー玉なんかを買い、パンパンに膨れ上がったリュックサックを背負って家へ帰る。
「なんで十七茶の2Lが98円なんだよ。買うしかねぇじゃん。っと、なんだあれ」
愚痴りながらゆっくり家にほど近い川沿いの土手、いつも買い物帰りに通る定番のルートを通っていると、何かがいた。
白く、にょろっとした生き物に見えるが
「こんなところに蛇?いや、なんか毛が生えてるし違うな。なんだろ」
訝しんで近くに行ってみると白い謎の生き物と目が合う。
イタチのような細長い愛らしい顔をしたまっしろな哺乳類。これは・・・
「オコジョ?なにこいつかわいい!」
なんでこんなところにオコジョが。誰かのペットだろうか。
実際にオコジョを見たのは初めてだがしあわせソウのオ○ジョさんで見たことがある。可愛い見た目と口の悪さのギャップが面白くて一時期ハマってた。
白くてふさふさ、ほおずりしたら絶対気持ちいであろう毛並とかわいらしい顔に心惹かれ、ゆっくり近寄っていく。
「おいでおいで、こわくないよ」
巨大なリュックを背負った男がしゃがみこんで笑みを浮かべる。傍から見たら不審人物以外の何物でもないだろうがそんなことはどうでもいい。今はこのオコジョを撫でたい、その一心で笑みを浮かべしゃがみながらオコジョににじり寄っていく。
すると、さっきまで目を合わせてくれていたオコジョが
「チチチッ」
と鳴いて河原に走って行ってしまう。
「あっ!ちょっと待ってオコジョ!」
あわててあとを追いかけていく。すると、河原にある大きな岩の上でオコジョが立ち上がりこちらを見ている。なんだ、かわいい顔しやがって焦らしプレイか。
傍から見れば事案発生でピー○くんからメールが送られるようなニヤケ面をしながらゆっくりオコジョに近寄っていくと
ズボッ!
「へ?」
突然足元の河原が崩れ、おむすびころりんの童話のように崩れた足元にできた穴に転がり落ちていく。
最後にみたオコジョの顔は、してやったりという感じに口元がゆがんでいるように見えた。