エルダートレントより強いメイドさん
今回短いよー
「死ねェ！」
「うお、あぶねぇ！」
メイドさんが放つ凶刃を紙一重で躱し、バックステップで距離をとる。
けっして大振りにならず正確に急所を狙い攻撃する様は、メイドというよりももはや暗殺者と言った方がしっくりくる。
「ちょっと待ってちょっと待ってお姉さん！」
「避けるな！斬れないだろう！」
「誰が自分から斬ってくださいって斬られに行くんだ！いい加減にしろ！」
刀を使ってはリーチの問題で懐に入られた時点で終わる。
刀を大きく後方に投げ、懐から緋炎のナイフを抜いて構える。
「リーリャ！ストップだよ！ナイフしまって！」
「いいえ姫様、この男はきっと姫様にいかがわしいことをしようとしたに決まっています！」
「ひどい言われ様だな！」
お尻を撫でまわしたのは事実だけど。
「覚悟しろ性犯罪者！」
「賊から性犯罪者にクラスチェンジかよ！というかお姫様なのは秘密なんじゃないの？」
あ、メイドさんの動きが止まった。
「……」 (ジト目)
「……姫様、秘密がばれてしまったようです。口封じいたしましょう」
いや、バラしたの君だからな？ (来る前から気づいてたけど)
というかお姫様、君も隠しきれてなかったからね？
「というわけで、大人しく死んでください」
振り向きざま、輝くような笑顔で一言。
言うや否や流麗な動きで距離を詰めナイフを振るう。
振るわれたナイフの腹に緋炎のナイフを当てて軌道をそらす。
赤熱を起動することも考えたが、相手は生身の人間だし、あまり怪我をさせる気もないので却下。
メイドさんは刺突を主に蹴りなどの体術を組み合わせた戦術が得意みたいだ。
ナイフに意識が向けば死角から蹴りが、蹴りに注意すれば刺突から変化した薙ぎや拳打が飛んでくる。
まるで小太刀術だ。
こちらが防御にリソースを振っていないとたちまち攻めきられてしまう。
相手の拳打を躱し、刺突薙ぎを逸らし、蹴りを受け流し続ける。
攻撃の鋭さといい重さといい、森で戦ったエルダートレントより明らかに強い。
とはいえ、俺の天職の自覚とエルダートレントのような不規則な動きがない分、全力で受けに徹すればダメージをもらうことはない。
「おーい、もうやめよう。このままだとお互い疲れるだけだって」
「やかましい！貴様が死ねば事は済むのだ！」
なんて理不尽。俺が何をしたっていうんだ！ (お姫様のお尻を撫でました)
「チッ、『刃よ、炎を纏え』」
どうにも攻めきれない状況で焦れたのか、メイドさんの一息のみの魔術の詠唱。
するとナイフが二倍ほどの長さの炎剣へと姿を変える。
「シネ」
「ふざけんな！」
横薙ぎの一撃を緋炎のナイフで受けようとした瞬間、メイドさんがニヤリと笑う。
横薙ぎの一撃の軌道を得物同士がぶつかり合う瞬間に上へずらし、こちらのナイフを上空に跳ね上げた。
この炎剣、物理的な性質も併せ持ってるようだ。
と、そんなことを考えている余裕はない。問題なのは高々と跳ね上げられた緋炎のナイフ。
刀ははるか後方、ナイフは上空。そしてメイドさんはすでに二撃目を放つ瞬間。
あれ？俺詰んだくね？
刃物相手に素手でどうこう出来るわけ……
ギンッ
「……」
「……」
「……」
首筋に叩き込まれた炎剣は、俺の首に確実に命中した、はずだった。
その結果、当たり負けして砕けたのは炎剣の方だった。
「えっと……」
「……」 (ジト目)
「……」 (ジト目)
正解は簡単。俺の素のステータスと、侍のスキル【空手術】のステータス1.3倍補正だ。
378のVITに1.3倍補正。500弱にまで跳ね上がったVITは、下手な全身鎧など歯牙にもかけないスペックを誇っている。
そんなVITを誇るものに、魔術がかかっているとはいえ、ただのナイフで傷をつけられると考えること自体間違っているのだ。
「なんか、ごめん」
あまりにも理不尽な幕切れに、俺は素直に謝るしかなかった。
どうにも執筆速度が安定しません。誰か助けて。
気付いている方もいるかとは思いますが、地名や人物名に某炎の紋章シリーズのキャラクターやら地名やらを (以下略)
で、この時期執筆速度が遅れてるということは……
CMやってるからわかるよね！ (開き直り)
誤字脱字や感想も随時お待ちしていますので、よろしくお願いします。
さーて、インビジブルキングダムやろ (執筆しろ)
