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鍛冶ギルドと魔導ギルド

ちょっと短いです。


「おうゼン、待ってたぞ」


中央議会に入るや否や、そう言ってオルガが話しかけてくる。

その後ろには髭をたんまり蓄えたドワーフと某魔法学校の校長ダンブルド○先生のような老人が控えていた。


「ごめん、昼の鐘が鳴ってから動いたからちょっと遅くなった」


「いや構わん。昼の鐘とは言ったものの、鳴ったらといって細かく時間を指定しなかったのはこっちだ。っと、まずはほれ、これが冒険者タグだ。首からかけておけ。」


「サンキュー、オッサン。で、そっちの後ろの2人は?」


ドッグタグのような、うすい青色の金属でできたタグとチェーンを受け取り、後ろの2人へ視線を巡らせる。

おそらく昨日言っていた鍛冶ギルドと魔導ギルドのお偉いさんなのだろう。


「ああ、紹介しよう。こっちのドワーフ族が鍛冶ギルドのギルド長、バルドル。そしてこっちの爺さんが魔導ギルドのギルド長、アトスだ」


「バルドルだ。鍛冶ギルドの長として歓迎しよう」


「魔導ギルドのギルド長、アトスじゃ。よろしく頼むぞ」


「冒険者のゼンです。よろしくお願いします」


二人と握手を交わし、冒険者ギルドに併設された酒場のテーブルへ。

少し大きめのテーブルに5人、時計回りに俺とアーニャ、オルガ、バルドル、アトスの並びで座る。


「まずは儂の要件からだ。鍛冶ギルドに所属する人間は鍛冶ギルドの工房を使う権利が発生する。これが鍛冶師タグだ。これを見せれば地下の工房に入れるようになる」


バルドルはそう言って冒険者タグと似たうすい赤色のタグを取り出す。


「ドワーフの鍛冶師は基本的に北の職人街に工房を構えているからあまり使われんがな。これがお前さんのタグだ。登録自体は冒険者ギルドへの登録と同時に済んでいるから、この話し合いが終わった後案内しよう」


赤色のタグをテーブルを滑るように投げると、自分の要件は終わったとでもいうようにアトスに視線を飛ばす。


「次は儂じゃな。ほれ、これは魔導ギルドのタグじゃ」


アトスはバルドルと同じくうすい紫色のタグを取り出し手渡す。


「魔導ギルドも鍛冶ギルドと同じく研究室を使う権利が発生するんじゃ。あとは他の魔術師たちが研究した研究成果のうち、公表してよいとされたものはギルド所属の魔術師は閲覧ができる。他者の研究を見て自己の研鑽の糧とする、お主も公表できる研究結果ができればどんどん広めていってくれ」


アトスは好々爺然とした笑顔をしていた。

日本にいたころは下積みしか経験していなかったせいか、ここまで立場が高い人から期待されるとやる気がわいてくる。


「はい、バルドルさん、アトスさん。これからよろしくお願いします」



その後、鍛冶ギルドの工房と魔導ギルドの研究室と資料室に案内された。

工房は火入れの窯、各種鎚や作業台など一通りそろっていた。

学生時代、社会見学で触らせてもらえた「備前長船祐定」が作られた工房もこんな感じだったと記憶にある。

次に行ったのは魔術ギルドの資料室。そこにはおおよそ大学の図書館並みの本が並んでいた。

ここにある全ての本が、今まで魔導ギルドで研究されてきた研修成果の結晶であるという。



一通り案内が終わったのは、夕の鐘が鳴って1時間ほど経った後のことだった。

豊穣の稲穂亭に戻り食事をとり自室に戻ると、大の字でベッドに寝転がった。

今日一日を振り返り、今後の身の振り方を考える。

バルドルさんとアトスさんと会話しているときから考えていたことだが、俺には冒険者として足りないものが多すぎる。

この世界の常識や金銭、そして何よりも武器が足りない。

ひょんなことから魔術の研究場所と鍛冶師の工房が使えるようになったが、俺自身の職業は駆け出しの冒険者だ。

現状、装備と言えるものは緋炎のナイフただ一つ。

これではモンスターどころか対人戦ですら勝てない可能性がある。

後衛職として魔術師の技能を磨くにしても魔術の知識はほぼない上に、文字も読めないと来た。

となれば、現状自分自身の武器になるものは何か、それを考えなければならない。

真っ先に思いつくものはスキル。

4つのオリジンスキル【知識の泉】【詠唱破棄】【インベントリ】【再現】

【インベントリ】以外のスキルの親和性は非常に高いことが、今日のアーニャとの野兎狩りで証明された。

見た魔術の構造を50%で看破できる賢者のスキル【魔術構造看破】、そしてその詳細を知識としてストックできる【知識の泉】、構造を知っているものを完全に再現できる【再現】、そして必要な詠唱を失くす【詠唱破棄】

このスキルに頼れば、少なくとも並み以上の魔術師として冒険することができる。

しかし、これに頼るとなると問題もある。前衛の不足だ。

一対一の勝負ならまだ良いにしても、魔法に耐性のあるモンスターに囲まれた場合ジリ貧になる可能性が高い。

ならば侍の天職を生かした前衛としてやっていけるかと言えば、魔術師とは逆に物理耐性のあるモンスターに囲まれたら同じくジリ貧だ。

結果として天職の賢者と侍と両立させた、いわゆる魔法剣士のスタイルで戦っていくことになる。

そうすると考えなければならないのが武器だ。

侍の天職を十全に生かすのなら武器は剣、というよりも刀が最適解だろう。

銃はそもそもこの世界に存在しないようだし、槍や弓ではスキル【居合い】と相性が悪い。

となれば刀が居合いに関して最適解だが、冒険者ギルドにいた冒険者の剣は皆両刃の西洋剣だった。

一度調べてみてからだが、無いのであれば代用品を探すか作らなければいけない。

ただ問題は、大まかな日本刀の作り方は知っているが、細かい作り方は知らないということと、日本刀を作るには熟練の技術が必要だということだ。

そもそも実際の日本刀を触ったことがあるのは学生時代の1回だけだ。

と、そこまで考えたところで少しひっかかった。

その引っ掛かりの元を検証すべく、自身の天職の詳細を表示させる。



○●○●○●○●○

【鍛冶師】

-適合武器-

-スキル-

・見極め

 対象にした物質の状態を見極めることができる。

・精密動作

 DEXに1.5倍補正

・創造物構造看破

 触れたことのある創造物に関して、構造、制作手順を看破できる。

・再現【オリジン】

 構造、制作手順を知っているものに関して、同一のものを再現できる。また複数のものを同時に再現することにより要素の複合されたものも作成可能。

○●○●○●○●○



(やっぱりか・・・これなら・・・)


【創造物構造看破】の「触れたことのある創造物に関して」の一文が希望の光になった。

さっそく記憶を探り「備前長船祐定」を触らせてもらった学生時代のことを思いだし【創造物構造看破】を発動させる。

すると予想通り、「備前長船祐定」が作られる行程を知ることができた。

これなら【再現】で同じものが作れる。

そう確信した俺は、翌日から動くべくいそいそとベッドに入り眠りについた。




7年ものの相棒ことノートパソコンVAIOが天に召されました。

おかげで書き溜めていた分がすべて御釈迦です。

PCを買い換えるのに2週間ほどかかり、やっと執筆再開と相成りました。

お待たせしていたみなさん申し訳ありません。

ここからは一応、週一を目処に更新していこうと思います。

とはいえ、3週間もほっぽっていたので実はデータがないだけで原稿は頭の中でそこそこ出来上がっています。

なので今週はちょくちょく更新していきますのでどうぞお楽しみに。


誤字脱字のご指摘や、感想なんかも随時募集してます。

よろしくお願いいたします。

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