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天職のあれこれ

ちょっといつもより長めになっていますが、長い分はステータスなので文章量はいつもと変わりません。

「これが、俺の天職らしいよ」


「」


口を開いて驚いた表情のまま固まるアーニャ。

とはいえ、事実がこうなのだから俺にはどうしようもない。

10秒ほど経っただろうか、アーニャがやっと再起動を終える。


「すごいです!私ペンタなんておとぎ話の勇者しかいないと思っていました!」


再起動を終えたアーニャは、まるでイチ○ーに会った野球少年のように目をキラキラさせていた。


「それにしても、この【侍】っていう天職は何でしょう?私は聞いたことがない天職です」


「そうなんだ。オッサンもエイダさんも聞いたことない天職らしくて、今から鑑定して調べようと思っているんだ。エイダさん、自分のステータスや天職を詳しく鑑定するにはどうすればいいですか?」


例え天職に鑑定士があっても、俺はペーペーもいいところだ。ここは先達のエイダさんに聞くのが間違いないだろう。

するとエイダさんはにっこりとほほ笑みながら教えてくれた。


「詳細を知りたいときは、まず調べたいもののステータスを鑑定で表示します。そして、調べたい項目を見ながら『-詳細鑑定-』を使えば見ることができますよ」


なるほど、ステータス画面の内容をさらに鑑定するのか。イメージとしてはヘルプを参照する感じなんだろうか。

とりあえず、自分の天職を表示させ詳細鑑定を発動する。



○●○●○●○●○

【侍】

-適合武器-

剣・槍・弓・銃

-スキル-

・武器戦闘術

 武装状態で全ステータスに1.2倍補正。また、武器熟練度の大幅上方修正

・居合い

 納刀状態から抜刀動作に連動して攻撃した場合威力に1.3倍、速度に2.0倍補正

・騎乗

 生物に騎乗する場合、熟練度を大幅上方補正

・空手術

 武器を持つ相手に対しての徒手格闘戦闘時、全ステータスに1.3倍補正


○●○●○●○●○


思った通り、前衛の戦闘職だ。

侍というか、これは武士だな。剣以外に槍や弓、さらには銃まであるのは火縄銃の影響だろうか。

現代日本ではモデルガンくらいしか触ったことがないが、武器熟練度の大幅上方修正でどの程度扱えるのか想像ができない。

一度試運転ではないが、試しで森に行くのもいいかもしれない。


「思った通り、前衛職の戦士みたいな感じか。アーニャ、この世界の銃ってどういうものなの?」


さすがに地球のようにオートマチックの拳銃やAK47みたいな銃があるとは思っていないけど、弾の射程なんかを把握しておかないといざ手に入れてから調べるのも手間だ。


「じゅう、ですか?それは武器なんでしょうか。私は聞いたことありませんけど」


「俺も聞いた事ねェな。エイダはどうだ?」


「私も初めて聞く名前ですね。ゼンさん、それはどういったものなのですか?」


異口同音に銃を知らないという。もしかすると世迷人の俺だから適合武器に銃が出てきたのかもしれない。


「銃っていうのは、金属の弾を火薬の爆発によって打ち出す武器のことだよ。」


「ほう、それはどのくらいの威力のあるものなんだ?」


オルガは銃に興味を持ったのか、食いついてきた。

オートマチック拳銃の複雑な内部構造などは俺も知らないが、リボルバーの大まかな構造と弾の構造くらいならわかる。

ここの技術力で再現できるかどうかはわからないが、一部の人に教えるのは問題ないだろう。


「オッサン、アーニャ、エイダさん、銃について説明するけど、他言無用でよろしく」


そういうと三人とも頷きまるで童話の冒険譚を聞く子供のような好奇心に満ちた目を向けてくる。

ざっと威力や取り回しのしやすさ、大まかな内部構造や弾丸の構造などを教える。

するとオルガは渋い顔をして腕を組み、唸り声を発した。


「そんだけ使い勝手のいい武器なら、冒険者稼業どころか国の戦争の仕方まで変えちまう革命的なもんだと思ったが・・・。弾丸の構造なんかを聞くと、相当手練れのドワーフでもそんなもんは作れねェな。」


あまりにも精密さを求められすぎる。火縄銃程度のクオリティなら作れるかもしれないが、そもそも俺に火縄銃の構造の知識がない。


そんな話をしていると、中央議会の上の方から大鐘楼(グランドベル)の音が響いてきた。

その音が鳴りやむと、ギルドにいた冒険者たちは徐々にギルドから出ていき始める。

おそらく時間を知らせものなのだろう。


「ん?もう夕の鐘の時間か。話の続きはまただな。ゼン、明日昼の鐘が鳴ったらまたここに来い。冒険者タグの受け渡しと鍛冶ギルド、魔導ギルドに紹介せんといかん」


鍛冶ギルドと魔導ギルド。俺の天職にある賢者と鍛冶師に関してそれ専門の人を呼んでくれるようだ。

オルガはそういうと、俺の冒険者登録の書類をひとまとめにして麻ひもで括る。


「わかった、じゃあまた明日来るよ。お疲れ様、エイダさん、オッサン」


「はい、お疲れ様ですゼンさん」


「おう、じゃあな」


中央議会から出ると、もう夕日が沈む直前だった。


「それじゃあゼンさん、私の利用してる宿に案内しますね」


「うん、よろしくアーニャ」


そうしてアーニャと共に宿へと歩き出した。



◇◆◇◇◆◇◇◆◇



アーニャに連れられてきた【豊穣の稲穂亭】はギルドから10分ほど歩いた街道沿いにあった。

宿は1階が酒場、2~3階が宿屋になっているらしい。


「いらっしゃい!っとアーニャかい、おかえり。」


宿の扉をくぐると恰幅のいい女性が話しかけてくる。

左手には木でできたジョッキを3つまとめて持ち、右手にはおいしそうな肉料理の盛ってある皿を持っている。


「ただいまアマンダさん。宿の方に新しいお客さん連れてきたんだけど、部屋はあいてる?」


「その後ろの男の子かい?ちょっと待ってな、これ運んだらそっち行くから」


そう言って客席の方へ配膳をしに行くアマンダさんは、ほどなくして戻ってきた。


「さて、自己紹介しようかね。私はアマンダ。この【豊穣の稲穂亭】の主人だ。」


「サエキゼンといいます。アーニャとかはゼンと呼ぶのでアマンダさんもそう呼んでください。」


「ゼンさんは今日冒険者登録をしたばかりなんです」


「ほお、新規の冒険者かい。がんばりなよ!さて、うちに泊まるんだったね。一泊250ギタンで朝夕食つけると一泊300ギタンだ、どうする?」


「とりあえず朝夕食付で十日お願いします」


「はいよ、3000ギタンだ。あと、風呂とトイレは男女別の共同だ。間違っても女湯になんて入るんじゃないよ?」


「もちろんそんなことしませんよ。じゃあ、これで」


挨拶を交わし、銀貨を3枚渡す。


「はい、たしかに。じゃあ部屋は2階の203だ。204はアーニャの部屋だから、何かわからないことがあればあたしかアーニャに聞きな」


「えへへ、おとなりさんですね」


「ああ、改めてよろしくなアーニャ」


「はい!」


「荷物を部屋に置いたらここに降りてきな。夕食を用意するからね」


アマンダさんはそういうと、酒場の方へ行ってしまった。


部屋に荷物を置いて酒場に降りる。

夕食のメニューは野兎肉のソテーと根菜のスープ、そしてパンだ。

豪華な時は大猪やオーク肉が出るらしい。

味付けは少し濃いめながらとてもおいしかった。

アマンダさんによれば、食材になるような動物やモンスターは宿でも買取してくれるらしい。

モノによっては宿泊費も安くなるらしく、良いものが取れれば持って来いとのことだ。


食事中はアーニャから街のことについて教えてもらった。

まず、ギルドで聴いた大鐘楼(グランドベル)は朝・昼・夕と鳴り、夜中に少し小さな音で鳴るという。

つまり、一日を4つに分けてその節目で鳴らすということだ。

ギルドは朝の鐘から夕の鐘まで、商店は大体昼の鐘から夕の鐘までとのこと。

あとは、商人街で道具が売り買いできる店のことなど。

基本的に素材などはギルドで買い取ってくれるが、どれも各専門の店よりも少し安くなるらしい。ギルドは冒険者から買い取った素材を商人や鍛冶屋に販売するが、商人にしてみれば、ギルドから買うよりも冒険者から買う方が安く手に入れられることが多いため、ギルドの買取値よりも高く、ギルドの販売値よりも安い値段で買い取るのだそうだ。


食事を済ませた後、風呂に入り自室に戻る。

ベッドと机と椅子があるだけの4畳くらいの広さの部屋だ。

ギルドで確認したのは侍の詳細だけだったし、この際だから全部の天職の能力の詳細を調べておこう。


「『-天職鑑定-』『-詳細鑑定-』」



○●○●○●○●○

【賢者】

-適合武器-

杖・魔導書

-ベース-

魔術師・僧侶

-スキル-

・並列魔術行使

 同時に複数の魔術を使用できる。2つ以上の魔術を同時に行使した場合、各魔術に0.95倍補正

・術式構造看破

 発動状態の魔術を見ることでその魔術の構造を50%の確率で看破することができる。その魔術に接触していた場合、80%の確率で看破できる。

・知識の泉【オリジン】

 魔術の詳細を記憶することができる。また、一定の魔力を消費することによって記憶にある魔術を魔導書として創造できる。

・詠唱破棄【オリジン】

 詠唱をせず魔術行使が可能。詠唱を破棄した場合、威力に0.9倍補正。

・インベントリ【オリジン】

 一定量のアイテムを収納できる。量は使用者の最大MPに依存する。


【錬金術師】

-適合武器-

なし

-スキル-

・錬成

 魔力を通した物質を操ることができる。

・合成

 異なる2つ以上のモノを合成することができる。


【鍛冶師】

-適合武器-

-スキル-

・見極め

 対象にした物質の状態を見極めることができる。

・精密動作

 DEXに1.5倍補正

・創造物構造看破

 触れたことのある創造物に関して、構造、制作手順を看破できる。

・再現【オリジン】

 構造、制作手順を知っているものに関して、同一のものを再現できる。また複数のものを同時に再現することにより要素の複合されたものも作成可能。


【鑑定士】

-適合武器-

なし

-スキル-

・鑑定

 対象の人物・創造物・物質・事象等の詳細を知ることができる。


【侍】

-適合武器-

剣・槍・弓・銃

-スキル-

・武器戦闘術

 武装状態で全ステータスに1.2倍補正。また、武器熟練度の大幅上方修正

・居合い

 納刀状態から抜刀動作に連動して攻撃した場合威力に1.3倍、速度に2.0倍補正

・騎乗

 生物に騎乗する場合、熟練度を大幅上方補正

・空手術

 武器を持つ相手に対しての徒手格闘戦闘時、全ステータスに1.3倍補正


○●○●○●○●○



目を見張るのはやはり賢者だ。

二種複合の上位職というだけあり、スキルも強力。

【オリジン】の付いているスキルが賢者と鍛冶師にあるが、おそらく俺個人の固有スキルなのだろう。

ただ、やはり自身の能力とはいえ使ってみなければわからない。

明日のギルド訪問の後、街の外に出てスキルのためしをすることにしよう。



◇◆◇◇◆◇◇◆◇


大鐘楼の音で目を覚ます。

慣れない土地だったが、疲れていたこともあってぐっすり寝られたようだ。

酒場に降りると、宿の客なのか数人がぽつぽつとテーブルで朝食を食べていた。

適当な席に座るとアマンダさんが厨房から顔を出す。


「おはよう、昨日はゆっくり休めたかい?」


「はい、もうベッドに寝そべったらそのままぐっすりでした」


「そうかい、そりゃよかった。さあ、朝ご飯にするかい?」


「はい、お願いします」


「はいよ、ちょっと待ってな」


朝の挨拶をし、注文を聞くとアマンダさんは厨房へ戻る。

しばらくすると、少し眠たげなアーニャが酒場へ降りてきた。


「・・・おはようございます、ゼンさん。ふぁ~」


愛らしく小さなあくびをしたアーニャはすとんと俺の向かい側の椅子に腰を下ろす。


「眠そうだね」


「はい、昨日新しい魔術の練習をしていたら遅くなってしまって・・・ふぁ」


「そっか。そうだアーニャ、昼の鐘が鳴るまであいてる?」


「はい、あいてますよ」


「じゃあ、ちょっと魔術とかの練習に付き合ってほしいんだけど、いいかな?」


「いいですよ~アマンダさーん、朝ご飯くださーい」


「はいよ、ちょっと待ってな。ゼン、アーニャと一緒でもいいかい?」


「はい、大丈夫ですよ」


少しして運ばれてきた朝食を平らげ、部屋に戻って準備をする。

装備品と貴重品以外は宿において酒場に降りると、ローブ姿のアーニャがすでに降りてきていた。


「ごめん、待った?」


「ううん、今来たところですよ」


恋人のような会話をして豊穣の稲穂亭を出る。

入ってくるときに会った門番とあいさつを交わし街の外へ。

少し歩いたところで野兎を見つけた。


「じゃあ、まずは試しに【炎鎗】」


目の前に長さ30cmほどの炎鎗を展開する。見た目だけでいうなら槍というより矢だが、術式がビー玉から読み取った炎鎗なので一応炎鎗だ。

それを野兎の頭めがけて飛ばす。イメージは槍投げ。

ゴウッという音とともに野兎が頭から燃え、そのまま全身を焼かれ息絶えた。


「結構威力絞ったつもりだったんだけど」


「全部燃えてしまいましたね。ところでゼンさん、さっきの炎鎗、詠唱してなかったようですけど、またあの魔道具ですか?」


「いや、今回は俺の魔法。賢者のスキルに【詠唱破棄】っていうのがあって、威力は下がるけど詠唱せずに発動できるみたいなんだ。どのくらい威力が下がるのか、それが試したくて出てきたんだけど、あんまり威力は下がらないみたいだな」


「・・・すごいスキルですね。私も賢者に目覚めたらできるようになるんでしょうか」


期待に満ちた声音でそうつぶやくアーニャ。残念ながら、詠唱破棄は俺のオリジンスキルだからおそらくその可能性はない。


「えーと、詠唱破棄はオリジンスキルらしくて、たぶん俺以外は使えないと思う。」


「そう、ですか」


アーニャはちょっとしょんぼりする。


その後数匹の野兎をアーニャと狩り、アーニャの魔法も見せてもらった。

エルダートレント戦で使ったアイススマッシュだけでなく、氷の矢を飛ばすアイスアローと氷で相手の動きを止めるアイスバインドも見せてもらい、術式構造看破と知識の泉のスキルのおかげで難なく使えるようになった。


そうこうしている間に陽は高く上り、街の方から大鐘楼の鐘の音が聞こえてきた。


「そろそろ戻ろうか」


「そうですね、戻りましょう」


お互いに3匹ずつ野兎を持って街へ戻る。

自分の分はインベントリにしまったが、その時にもアーニャは賢者のスキルと聞いて期待したまなざしで見てきたが、事情を説明したら詠唱破棄の時のようにしょんぼりしていた。


今回は3日くらいで投稿できました。よかった。

次回は鍛冶ギルドと魔導ギルドのお偉方とあれこれです。

あと2~3話くらい街での話を続けて生体迷宮に行くことになるかと。

そこで新たなヒロインが・・・!


誤字脱字の指摘や感想などいつでも受け付けています。

では!

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