ドラゴンさんこんにちわ
「は?」
唐突な光景に、俺は大きく動揺した。
目の前には大きなトカゲ。いや、そんな馬鹿な。こんなに大きいトカゲがいるものか。
座り込んでるとはいえ、身長170cm代前半の自分が見上げる程に大きい、赤いうろこと広げればゆうに10mはあるであろう翼を持つ爬虫類。
自分の知識とすり合わせてみれば、それはいわゆる【竜】【ドラゴン】だった。
というか、さっきからそのドラゴンと完全に目があってるんですけど・・・
「は?え?なんで?どこここ!?」
なんでこんなドラゴンが目の前にいるのか、そもそもここどこだ?
キョロキョロと周りを見回してみればここが洞窟の中であるということが分かった。
洞窟の中のくせに淡く光るコケが群生しているせいで、夜明けのちょうど太陽が昇る少し前程度の明るさはあった。
というか、そんなことなんてどうでもいい。今現状で問題なのは俺の前にこの大きなドラゴンがいるということだ。
「Gururu・・・」
ああ、なんか唸ってるよこのドラゴンさん。天国の母さん、天国に行ったとはちょっと信じられない父さん、今あなたたちの息子は同じところに行きます。ああ、できれば家の冷蔵庫に残してあったモ○ゾフのプリンを食べたかった。
そう祈りと反省をささげていると、ドラゴンがゆっくりとその咢を開いた。
「貴様、なぜ我が住処に入り込んだ。返答次第によってはここで焼き殺してやるが。」
「へ?ド、ドラゴンがしゃべった・・・?」
「我が人語を発することがそんなに不思議か人間。そこらの野良竜共と我を一緒にするとは無礼だな。」
なんとこのドラゴンさん、会話で意思疎通ができるらしい。というかこのドラゴンの言うことを真に受けるなら、この世界にはドラゴンが複数いる。しかも目の前のドラゴンはその中でも高位のドラゴンということになる。
「どうした人間、我が問いに答えよ。貴様はなぜ我が住処に入り込んだ。」
そんな下らない分析を無意識のうちにしていると、じれったくなったのかドラゴンがまた俺に問いを投げかけてきた。
とはいえ事と次第によって焼き殺されるということは、事情を説明して納得してもらえれば生きて逃がしてくれるかもしれないということだ。
そう判断した俺は即座に正座をして姿勢を整えた。
「俺、いや、私は佐伯善と申します。この度はあなた様の住まいに入ってしまい申し訳ありません。」
なるべく平静に、なおかつ丁寧に謝罪を口にする。
「ほう、人間にしては礼儀がなっているな。して、なぜ我が住処に入り込んだ。理由を述べよ」
謝罪の効果か、少し声音は穏やかになってくれた。
「はい、実は私にもよくわかっていないのです。支離滅裂な説明となるかもしれませんがそれでもかまいませんか。」
「ふむ、構わん。申してみよ。」
目の前のドラゴンに前置きをしてから、このドラゴンの住処にやってきた経緯を思い出しながら語ったのだった。