表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

3.里奈との放課後

 それから俺は陸上部に入り、放課後は部活に勤しんだ。

 

 中学の時も俺は陸上部で、里奈はマネージャーを務めてくれていた。

 今回もそうしてくれれば里奈と同じ時間を過ごせたのだが、里奈はちゃんと俺の走る姿を教室から見ていてくれている。

 グラウンドから見上げればいつでも里奈と目が合って、俺は練習の度に手を振った。


 そしてその度にコーチからの叱りの言葉が飛んできた。


「くぉら、山本! 練習に集中せんかい!」

「うっせ、ハゲェ。俺と里奈の間に入ってくんな」


 ついつい心中で思っていることを口にすれば、コーチはすかさず俺の頭を殴ってきた。

 体罰だ! と訴えてやろうかと思ったが、この頑固頭のハゲにそんなこと通用しないのは入部一週間で分かったので、我慢することにした。


 そうして部活が終わって一緒に帰る。

 これが俺たちの当たり前だったし自然の摂理ってヤツだ。




 だが、五月になるとそれが狂い始めた。

 里奈が俺を待たずに先に帰ることが多くなった。


「里奈、何で今日先に帰ったんや」


 部活が終わり、家に帰らずまっすぐ隣の里奈の家に行けば、里奈は普通に自分の部屋で雑誌を読んでいた。


「何でって、お母さんが用事言いつけてきたからしゃーないやん」

「……確かにしゃーないけど、やったらちゃんと俺にも言うてや。部活サボったのに」

「あほぅ、聡に部活サボらせるほどの用事ちゃうわ。それにサボったりなんかしたら、大会出れへんなるで」


 そう言われれば、俺も納得せざるを得ない。

 何せ、大会で走る俺を里奈の目に焼き付けておかないといけないのだ。これで大会に出られなくなったらそれすらも出来なくなる。

 だから俺は里奈の言うとおり、きちんと部活に出るようにした。



 しかし、里奈が先に帰るのはその後も続いた。


 それはおばさんの用事だったり友達に誘われたりとか。

 おばさんの用事はまだ納得がいくが、里奈の時間は俺のものなのに、例えそれが女友達であっても、勝手に里奈の時間を使っているのが腑に落ちなかった。


 だが、その度に「大会で走る聡見たいから」なんて言われれば俺も悪い気はしないので、我慢するようにした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ