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13.里奈の秘密

 その日の放課後。

 俺は部活をサボってまっすぐに帰路についた。

 目指すは里奈の家。

 相変わらず家はおばさんの出禁を食らっているので、俺は玄関先で里奈を待ち伏せすることにした。


 ふっふ……愚かな里奈め。

 俺を本気で怒らすとどうなるか、その身でとくと味わわせてやろう。

 里奈もそれがお望みなのだから、手加減してやるものか。

 俺は手に用意してきたムチをしならせ地面を叩く。

 おっとこの調子でやってしまうと、里奈を気絶させかねない。それは流石に可哀想だ。


 そう思いながら俺はその場でムチを打つ練習を始める。

 この恐ろしさに学校帰りのランドセル小僧は怯えた様子で目の前を通り過ぎ、道行く散歩犬が俺に向かってうなり声を上げて去っていく。大人たちも恐れをなしたのか、ちらちら俺の方を見ながら群れている。

 そうなっても致し方あるまい。今の俺は、百獣の王をも操れる猛獣使いになれるのだから。

 おおっと、話が逸れてしまったようだ。


 とにかく、しばらくそうしていると、段々ムチ使いも上手くなってくる。

 これで帰ってきた里奈を捕らえ、俺の部屋の押し入れに閉じこめる。こういう作戦だ。

 本当はこんなことをしたくなかったのだが、里奈の勝手が度を超えてしまったのだから仕方がない。


 しかし、待てども待てども夕日が落ちて外が真っ暗になっても、里奈は帰ってこない。


 おかしい。

 時計の短針は既に9時を過ぎている。

 それなのにこんな時間になっても何故帰ってこないのか。

 誰かに襲われたのか?

 痴漢か?

 狂犬にやられたか?


 そんな不安が頭によぎったその時、遠くから二人の人影が見えた。

 片方は確実に里奈だ。

 俺が里奈のシルエットを分からないはずがない。

 なんなら絵に描いたっていい。


 しかし、問題なのは里奈の隣の背の高い人物だ。間違いなくアレは……。


「クソ木暮うんこヤロー!! 歯ァ食い縛れえぇぇぇぇっっ!!」


 すかさず俺は憎き敵に向かって鞭を振るった。

 だが木暮はそれを片手で受け止めた。

 ぎゅっと鞭の先を木暮は握り俺を見据える。


「山本聡、何を誤解しているのか知らないが、よく話を聞くんだ!」

「ぬかせ! 誰がお前の話なんか聞くっちゅうんや!! つーか何で受け止めるねん、お前は大人しく打たれろ! ほんま腹立つわ、勝手に里奈の彼氏面しよってからに!」

「そんなつもりは一切ないが……しかし君こそ幼馴染みとか言っておきながら、里奈のこと何も理解していないじゃないか!!」

「はぁ!? 何抜かしとんねん、しかも何勝手に呼び捨てしとんねん! ほんまにいてまうぞ、この――」

「――ぅげほっげほぉっ!!」

「何!?」


 突然、里奈が胸元を押さえてその場にしゃがみ込んだ。

 いや、それどころか、里奈は地面に両手をついてひどく咳き込んでいる。

 木暮がぱっと里奈のそばに駆け寄り、里奈の背中をさする。普通ならばその仕草に間違いなく俺は腹を立てるところだったのだが、里奈の容態の異変に、俺はあまりに動揺しすぎていた。


「り……里奈……ど、どういうことや……?」

「山本聡、里奈はずっと君には隠していたようなんだけれど――」

「木暮君……私から言うから」


 里奈は木暮を押しのけてよろよろとその場に立ち上がり、弱々しい表情を俺に向けて言った。


「聡、ずっと言えへんかったんやけど私、実は不治の病にかかっててん」

「何……やと……!?」


 あまりの衝撃に、俺はその場に鞭を落としてしまった。


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