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9.里奈のクラスメイト

 里奈のクラスは1年10組。

 一方、俺のクラスは1年2組であるから、俺と里奈のクラスはかなり離れている。

 きっと俺と里奈の深い関係に先生が嫉妬してこんな嫌がらせみたいなことをしているのだと俺は確信している。全く、教師というのは心が狭い生き物だ。


 しかし、普段なら鬱陶しいくらい長い道のりも、今は全く気にならない。後ろから田村が呼びかけてくるが、無視だ無視。

 とにかく一刻も早く里奈にまとわりつく害虫を排除し、里奈にも得体の知れない男を近付けるなと釘を刺さなくてはいけない。


「おい! 木暮ってヤツはどいつや!」


 俺は勢いよく10組の引き戸を開け放った。瞬間、俺の姿を見たクラスの者どもがざわざわし出す。

 その中には、先ほど俺にわけの分からん文句言ってきた女達や、この前俺を呼び出してきたモサ男とチャラ男が混じっていた。

 陸上部のヤツらが「ひゅーひゅー聡やったれ」と冷やかし始め、俺にぎゃーぎゃー言ってきた女共が「山本君、ほんま最悪や」と俺に聞こえる声でひそひそと陰口を叩く。


 しかし、何故か里奈も木暮とかいうヤツも、その中にはいなかった。


「おい、聡。恥ずかしいからやめや」


 好きでついてきただけの田村が、後ろから耳打ちする。俺は何も恥ずかしくはないのだが、田村がきまずそうに俺を連れ戻そうとする。



 その瞬間、俺の里奈センサーがキラリと光り、俺は反射的に振り向いた。

 そして、俺は固まってしまった。



 俺が感知したとおり、10メートル離れた先にやはり里奈がいた。そして、里奈の隣には、見知らぬ男の姿があった。


「おい、里奈。そいつは誰や?」


 すかさず俺は一歩前に出て、その男を睨み上げる。

 そいつは俺よりも背が高く、いかにも女子がキャーキャー言いそうな爽やかなツラ下げて、俺を見下ろしている。

 身長差のせいか、見下されているようにも見えて気に食わない。


 そいつは里奈の肩に手を置き、里奈を後ろに押しやり一歩前に出る。

 その腹立たしい仕草をしやがるこいつは、この緊迫した空気には場違いな爽やかな笑顔を浮かべた。


「君が噂の山本聡だろ? 里奈からよく噂を聞いているよ。 はじめまして、俺は木暮」


 そう言って差し出された右手を、俺はすかさずはねのけた。


「ちょっと聡! 何すんの!」

「おい聡、いきなりけんか腰かよ」


 里奈と田村が同時に声を上げ、木暮はただただ驚いたかのように目を瞠っている。

 その負抜けた顔に、俺は人差し指を突き立てた。


「何やねんこいつ! キモイ標準語使いやがって。大体何でお前が里奈のことを呼び捨てすんねん!!」

「何でって、別にクラスメート呼び捨てにするくらい普通だろ? 里奈だってそれでいいって言うし――」

「そやから里奈のこと馴れ馴れしく呼び捨てすんなっつっとんのや!!」


 俺は木暮の胸ぐらを掴み、勢いよくそのすました左頬に拳を入れてやった。ヤツはそのまま盛大に床に倒れ込む。


「おい、聡! それはやり過ぎやろ!」

「木暮君、大丈夫!?」


 ほんの少し力を加えただけだというのに大げさに転がりやがるものだから、田村が俺を羽交い締めする。

 しかし、そうしている間に里奈が木暮の様子を見に行こうとするので、俺は田村の顔を肘撃ちする。


「ちょっ待て、聡!」

「木暮君、めっちゃ赤くなってるやん! 早く保健室に――……え?」


 里奈が木暮に触れようとするの寸でのところで俺は里奈の腕を取った。そのまま俺は里奈を引き連れて廊下を走る。


「山本!!」

「聡、待てって!!」


 後ろから田村と木暮が追い掛けてくるが、動きが鈍すぎてもはや俺の敵ではない。

 目下の問題はそう、こいつだ。


「聡! ちょっと放してーや!」

「うっさい、とりあえずお前は黙って付いてきたらええんや!」

「はあ? 意味分からへんし!!」


 ようやく邪魔な野郎二人を撒いたところで、俺は近くに開いていた生物室に里奈を引き入れ、鍵を閉めた。

 ちょうどそこでチャイムが鳴ったが、俺には関係ない。


 今は里奈の意識改革の方が重要事項だ。




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