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重匵(じゅうばこ)の恋文

作者: 讃嘆若人

「貴女への手紙」の現代語版です。

この作品はフィクションです。

登場人物は、近日執筆予定の巨編SF小説で明かす予定です。

樹依莉へ


 君が私から離れてから、幾年が過ぎたであろうか。

 私が、君に惚れこんでから、幾年がたっているであろうか。


 私が貴女に最初に話しかけたのは、いつのことでしょう。

 貴女に私が話しかけたのは、私が狂ったから、としかいいようがありません。それだけ、貴女は、私の望みどおりの美少女だったのです。

 貴女の優しさに、私は惚れ込んだのでしょう。

 惚れ込みすぎて、貴女は私をストーカーと見做したのでしょうか?貴女はそれを否定していますが、周囲はそう受け止めてますね。

 確かに、私は貴女に近づきすぎましたね。

 というよりも、私以外の人間が、貴女に近づくのを許せなかった、というべきでしょうか?

 貴女は、私以外の人間とは、極めて、親しく接していましたからね。

 私をそこまで避ける原因は、なんだったのでしょうか?


 君は、とんでもない、美少女だった。

 はっきり言って、私は君以上の美少女を見たことは、ない。

 それは、一目惚れだった。

 私は、無意識に、君を見つめ続けた。

 可愛かった。

 君よりも可愛い少女を、これまでに見たことは、なかった。

 そして、それからも、なかったのだ。

 現実でも、ネットでも、テレビでも、二次元にさえも、君を超える"可愛さ"というのは、存在しえないのである。


 貴女は、徹底的に、私を避けていますね。

 私のツイッターの非公式垢のフォロワーに、貴女の名前があります。

 しかし、貴女は、私の本垢はフォローしていません。また、そもそも、私の非公式垢をフォローしている、貴女のアカウント自体が、別垢です。

 貴女のそのアカウントには、私へのリプライ以外、存在しません。

 そして、本垢には、鍵がかかっています。

 私には、その鍵を開けることは、できません。

 しかし、多くの方は、鍵穴から、貴女の呟きを覗くことを、許されているようです。


 君に私が出会ったのは、もう、三年も前になるのだろうか?

 その時、私は、中学三年生、君は、小学四年生であった。

 そこは、書写山園教寺である。

 宗教の行事で、私達は出会った。

 私が無意識に君を見つめていたので、君はある少年に対して、私に対し、不快であるとの感情を吐露したらしい。

 その少年が、私の下へやってきた。

「あの子が君の事、嫌いと言っとったで。」

 指さす方を見た。

 まだ幼かった君は、周りの目線を気にせず、ズボンをはきかえていた。

 それとも、周りは見ていない、とでも思っていたのだろうか?

 そういうことがあったかと思うと、君は、その行事の運営委員であった、私に言った。

「トイレはどこ?」

「ああ、ここからは遠いなあ」

 私は、君をトイレの場所まで案内した。少し駆け足だったと思う。

 その時、私は君に名前を聞いた。

「樹依莉」

「そうか」

 私は、君の名前を覚えた。


 貴女は、私相手だけにアカウントを作り、そして、そのアカウントは、事実上、使っていません。

 形だけのフォロー、ありがとう。

 もちろん、これは、打ち上げからも私を排除した貴女への、皮肉です。


 その後、私は君の弟と仲が良くなった。君の弟も、可愛い少年であった。

 君が私の近くにいるようになったのは、それからのことだ。

 夜寝るとき、君は常に豹柄の服を着ていた。

 それを、今でも、懐かしく思い出す。

 樹依莉、今からでも、君に逢いたい。

 私は、あまり、君に話しかけることが、できなかった。

 告白すら、できなかった。

 私の袖をつかんで、ついてくる君と一緒にいるのが、楽しかった。しかし、私は、君に話しかけることが、できなかった。

 樹依莉、また、君に逢えないだろうか?


一樹より

恋愛小説とは、気分の悪くなるものである。

これ自体、気分の悪くなる内容だ。

片思いの純愛ほど、第三者の気分を害するものはない。

しかし、彼はこういうであろう。

「愛には変わらないよ」

彼らに欠けるもの、それが"感覚"である。

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